my way of life   作:桜舞

235 / 408
今回ちょっとグロ注意かもです


235話『生まれてきた事を後悔させてやれ』

父様が瞬時に母様を支える。

親衛隊がベルナール卿の頭を地に伏せさせ、母様から目線を外させた。

 

僕はその目に見覚えがある。

母様を殺した男、シャナの前世である宮塚麻人と同じ目だった。

そして、その目は母様にとってトラウマであるのだと理解する。

 

「シャル!!」

「大…丈夫…だから…あたしの事は、気にしないで…あなた…」

 

母様の呼吸が浅くなり、カタカタと体が震えていた。

そんな母様を放っておく父様ではない。

 

父様は母様を抱きしめ、ベルナール卿に殺意を向ける。

 

「よくもシャルを怯えさせたな…っ!! シャルを害するものは、何人たりとも許さん…っ!! 刑を執行しろ…! 俺が良いと言うまで、絶命する事は許さん!!」

 

親衛隊の何人かが、ベルナール卿が連れて来られた際の扉を開いた。

執行人だろうか、フードを目深に被った人達がベルナール卿の所へ来る。

 

「シャルロットさんっ!! 離せっ!! 彼女は…っ!!」

「彼女は何だと言うんだ、グレゴワール。貴様、お嬢様の様子が見えなかったか? 貴様を目にするのも嫌だと、お嬢様は態度で仰られている。陛下。こいつの処刑、私も参加する。良いな?」

 

カヅキおばさんは父様に許可を願った。

父様は一つ頷く。

 

「カヅキ、王命だ。惨たらしく、生まれてきた事を後悔させてやれ」

「御意」

 

そこからは言葉にするのも憚れる程の凄惨さで、殺しては生き返らせ、何度も拷問をベルナール卿に施し、人の人権とは何なのだろう、と思うぐらいの悲惨さで。

 

ユエが僕の腕に抱きつき、手を握ってきた。

その感覚だけで、僕は立っていたと言っても過言ではない。

 

「グレゴワール・セレンディバイト・ベルナール。何か言い残す事はあるか?」

「…………」

 

父様が問いかけるが、ベルナール卿の精神はもう崩壊していた。

痛いと泣き叫び、殺してくれと懇願し、それでも終わらない責苦に、もう彼は何も言う事が出来なくなったのだろう。

 

「グレゴワール…」

 

母様がベルナール卿の名を呼ぶ。

その声で彼は少し反応し、母様へ言った。

 

「愛しています、シャルロットさん…」

「……カヅキ、殺せ」

 

父様からそう命を下され、カヅキおばさんはベルナール卿の頭に触れ、それを破裂させる。

肉片が飛び散り、大量の血液がその場を濡らした。

 

ユエがフラリと倒れかける。

僕は彼女の体を支えたが、僕自身も力が入らず彼女ごと倒れた。

頭を打たせるわけにはいかないと、自分の体を下にはしたが。

 

「アオ…ごめんなさい…耐えられなかった…」

「僕も…」

 

シンクだけがその場に立っていて。

だけど、弟も辛そうな顔をしてベルナール卿だったものを見ていた。

 

ふと耳に母様が泣く声が聞こえて、そちらに目線を向ける。

躯体の身ではあるが、母様はベルナール卿が亡くなった事を悲しんでいた。

あれだけ、自分に対して気持ち悪い事をされていたのにも関わらず。

 

母様はとても優しく、慈愛のある人だ。

どれだけ苦手だろうが、嫌いだろうが、それでも相手の死を悼む。

 

「シャル…だから来なくても良いと言ったのに…」

「だって、グレゴワールは…ギルドで仲間だったのだもの…!!」

 

泣いている母様を抱きしめ、父様も辛そうに顔を歪めていた。

カヅキおばさんも後処理を拷問部隊の人達に任せ、母様の傍に近寄る。

そんな様子をぼんやり眺めていると、僕の視界にシンクが入ってきた。

 

「大丈夫かよ、グンジョウ」

「……吐きそう…グロテスクなの、覚悟はしてたんだけど…ユエ?」

 

僕の上で大人しくなっていたユエに声をかけるが、反応がない。

シンクが彼女の様子を見て、ため息をついた。

 

「失神してるわ…本当、気が強いなうちの義姉ちゃんは…途中から吐きそうになってたの、我慢してたもんな…グンジョウ、ユエちょっと退かすな」

 

彼女の脇に手を入れ、シンクは僕の上から横に寝かせる。

僕はゆっくりと起き上がり、ユエの頬を撫でた。

彼女の顔面は蒼白で、これは暫く起きないだろうな、と頭の片隅で思う。

 

「シンク、お前平気そうだな…」

「何言ってんだよ、兄ちゃん…吐きそうなの我慢してるだけだっての…後で吐いてくるけど。立花卿、俺らは下がらせて貰っていいですかね」

 

普通に動き回っているシンクに尋ねるが、自分もショックを受けてるんだと返された。

そして弟は、この場から退散して良いかとカヅキおばさんに許可を取る。

 

「お疲れ様でございました、殿下方。うちの娘は…」

「僕が運びます。今宵は僕らもですが、魘されるでしょうから…出来るだけ、傍にいたいのです」

 

ユエを抱き上げ、僕はカヅキおばさんに言う。

おばさんは何も言わず、僕らに背を向けた。

泣きじゃくっている母様を慰めるためだろうな、と思いつつ、父様に一礼して処刑場を後にする。

 

僕の部屋に着くとシンクが扉を開けてくれ、僕らは部屋の中に入った。

 

「グンジョウ…!!」

 

シャナがソファーから立ち上がり、僕らの方に駆けて来る。

その顔はとても心配そうで、僕はぎこちなく笑った。

 

「シャナ、ごめん。ユエを預かってくれないかな。今若干気持ち悪くて…吐きそうなんだよね…」

「…わかった」

 

シャナにユエを預け、僕はすぐさまトイレに行くと、胃の内容物を全て吐く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。