my way of life   作:桜舞

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238話『ロゼおじさん』

穏和な笑みに、そういえば昔はよくここに来て、ヴァリエール卿にシャナ共々可愛がって貰っていたな、と思い出した。

 

「お気遣いありがとうございます」

「堅いなぁ…流石陛下の息子さんだねぇ。王妃殿下はお元気?」

 

気遣いに感謝を言うと、苦笑されてしまう。

ヴァリエール卿にとって、僕らはまだ小さい子供のようだ。

まだ未成年なのでその通りなのだが、あの頃よりは体格も背も大きくなったというのに。

 

「ロゼおじさん、久しぶり!!」

 

僕の横を通り抜け、シャナがヴァリエール卿に抱きつく。

僕以外がギョッとなっていたが、冷静に僕はシャナをヴァリエール卿から引き剥がした。

 

「小さい子みたいな事しないでよ、シャナ。ツルギも驚いてるだろ。いくら僕らの方が身分が上だからって、ヴァリエール卿は親と同世代なんだよ? 礼儀ってもの、お祖母様にもう一度習ったらどう?」

 

懇々と説教すると、まぁまぁ、とヴァリエール卿から止められる。

 

「グンジョウ君も、昔はおじさんって言ってよく僕にしがみついていたじゃないか。陛下や王妃殿下が忙しくしていて、その為に僕達へ預けられ、王宮に帰るってなった時、帰りたくないって泣いていたじゃない。昔みたいにおじさんって呼んでくれても良いんだよ? あんまり見ないうちに大人になっちゃって…子供の成長は早いね、ってこの間シャルとお茶した時も言ったけど」

「ちょ、やめてロゼおじさん! 一体何年前の話してんの?!」

 

僕は慌てて、ヴァリエール卿…もとい、ローゼヴィッヒおじさんにストップをかけた。

ユエが目を輝かせ、もっと聞きたいという顔をする。

 

「ヴァリエール卿、そのお話詳しく聞かせていただけませんか? アオ…グンジョウ殿下のお小さい頃の話、私知らなくて」

「君は確か、立花卿のお嬢さんだね。うん、良いよ。あれはねぇ…」

 

話し始めようとするロゼおじさんの言葉を遮るように、僕は叫んだ。

 

「ロゼおじさん!! 僕らは屋敷の捜索しますんで!! ユエも行くよ!!」

 

彼女の腕を掴んで、僕はそのまま扉を開ける。

挨拶もそこそこだったが、シンクかシャナあたりがフォローしてくれていると信じよう。

 

◆◆◆

 

「ちょっと、アオ! 早いって!!」

 

おじさんがいた部屋から飛び出し、僕はユエを連れて屋敷の中を歩いていた。

だが歩幅がユエと違いすぎるせいで、彼女は若干早足になっていたらしい。

ユエが叫ぶように言った声で、僕は歩くのをやめた。

 

「…も、早すぎ…何、そんなに小さい頃の話、されるの…嫌なの?」

 

息を切らすくらいの歩幅で歩かせていたようだ。

彼女は、少し恨めしげに僕を見上げる。

その目線を避けるように、僕は顔を背けながら言った。

 

「…恥ずかしいだろ、自分の小さい時の話なんて…僕が何をやったか、ロゼおじさんは知ってるわけだし…」

「私は聞きたいけどなぁ。アオの小さい頃なんて、ほんの数日しか私は知らないわけだし。リューネにみんなが帰った後、アオは元気にしてるかな、とか、もう一回遊びに来てくれないかなって、私は思ってたんだよ?」

 

顔を背けていたのだが、ユエは覗き込むように回り込んでくる。

アオが初恋なんだからね、と彼女は笑った。

 

「それは知ってるけど…その…君の前では、格好良い僕でいたいじゃないか。男のプライドってやつだよ、ユエ」

「そこ、夕陽君の時から変わらないねアオ。でもさ、アオが格好悪くても私は貴方が大好きだよ?」

 

まぁ、訓練で情けない姿ばかり晒してはいるけど。

そういう問題じゃないんだよなぁ…。

 

「アオ?」

「…分かったよ。あとで取次してあげるから…本当、過去の僕の話聞いても笑わないでくれよ?」

 

ユエは僕に抱きつき、見上げてくる。

そんな彼女に負け、僕は了承した。

ふと、ユエが僕らが来た方向を見、苦笑いを浮かべる。

一体どうしたのかと思ったら、彼女は一言、

 

「シンクが凄い怒ってる」

 

と言った。

え、なんでと思ったが、ユエがその苦笑いをこちらに向けてきたので、原因は僕かと悟る。

 

「えっと、シンクから言われた事伝えるね。『この阿呆! ヴァリエール卿に挨拶しねぇでどっか行くんじゃねぇよ! おかげで姉ちゃんが慌てたじゃねぇか!! ヴァリエール卿も苦笑い浮かべてたから、後で謝れボケ!!』だって」

「あー…」

 

僕は自分の顔を覆い、天を仰いだ。

幼い頃の話をし始めたものだから、慌ててユエを連れ出してしまったが、もう少し冷静になれば良かったと後悔する。

 

私も謝るから、とユエから言われ、僕は彼女を抱きしめる。

人の家だが、彼女にちょっとだけ癒されたくなったのだ。

 

「シンクが、私達が来た方向寝室エリアだから、そのまま調べろってさ」

「分かってるよ…はぁ…」

 

ため息を吐き、僕は彼女を離す。

そんな僕と手を繋ぎ、ユエは微笑んだ。

 

「アオ、後一年だから頑張ろ? 来年の今頃には、私アオのお嫁さんだもんね?」

「…………そうなれば良いけどね…」

 

魔王を討伐しない限り、ユエとの婚姻なんて夢のまた夢な気がしてくる。

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