my way of life   作:桜舞

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240話『母様になるに決まってる』

いると思ってなかったし、アエラおばさんはいつから僕らの話を聞いていたのだろうか。

 

「あの、いつからお気付きで…?」

「最初からですよ。これでも、ギルドで風楼の称号をいただいておりましたから。あなた達の会話も風に乗って聞こえていました」

 

そうだった。

アエラおばさん、ギルドの称号持ちだったっけ。

おじさんと結婚して引退したけど、風の称号持ちで、炎の称号を持っているロゼおじさんと相性は良かったはず。

だからこそ付き合って結婚したのだろうと、母様が言っていた。

 

「まぁ、喧嘩するほど仲がいいという事で。おいでなさい、グンジョウ君のご婚約者様」

「あの、すみません。挨拶が遅れまして…立花月と申します…」

 

おばさんにお祖母様と同じ雰囲気を感じ取ったのか、ユエがおずおずと頭を下げながら自己紹介し始める。

宜しいでしょう、とおばさんは頷いて僕らを寝室エリアへと案内してくれた。

道中、僕の幼少期の話も交えながら。

 

◆◆◆

 

寝室エリアを探し終わり次は宝物庫という道中で、ユエは驚いた声をあげる。

 

「シャナ姫殿下の格好してたんですか? グンジョウ殿下が?」

「はい。お母上である王妃殿下がお迎えにいらっしゃった際、どちらが姫殿下かと問いかけをなさっておいでで。すぐに言い当てられてはいましたが、とても楽しそうに笑ってらっしゃいましたよ」

 

それ、3歳の時の話じゃないか…。

 

僕は歩きながら、二人から顔を背けた。

 

あの時は性の概念なんて皆無で、シャナが僕の格好を、僕がシャナの格好をして遊んでいたのだ。

シャナの魔法でお互いの髪の色を入れ替えたりして。

それでも母様には入れ替わりが分かってしまうようで、僕らは少し不満だった。

メイドとか、それこそ父様でさえも僕らがどちらかなど分からなかったというのに。

 

「…シャナと同性じゃなくて良かったとは、思ってますよ」

「少し大きくなってから、王妃殿下に禁止されてましたものね」

 

え、なんで? とユエは首を傾げた。

少し考えればわかるだろう、と僕はユエを見つめる。

しかし彼女は本当にわからないようで、僕とアエラおばさんを交互に見た。

クスッと、おばさんは笑う。

 

「性の概念が曖昧な時に、お互いの入れ替わりをし続けたら…」

「僕がシャナ、シャナが僕だという自己が固定されてしまうのを危惧したんだよ、母様は。体が成長して性の概念が出てこようとも、僕はシャナだと信じ続けるし、シャナは僕だと信じて疑わない。だからその場合、記憶の改竄は行われるし、僕の好きな異性は男性という事になる…って、考えすぎの母様はそう思ったんだろうね。そんなわけ無いのにさ。まぁシャナと同性だったら、そうはなっていたと思うよ」

 

それこそ、お互いの境界があの頃は曖昧だったのだから。

もう一人の僕って感じだったし。

 

境界が出来てきたのは、シャナと寮暮らしを始めた辺りだろうか。

その頃から好みの違いとか出てきたわけだし。

 

ユエは少し考えた後、ポンと一つ手を打った。

 

「シャナちゃんにお願いして今のアオを女性にして貰ったら…」

「それだけはやめよう?! どうせ僕が女になったところで、母様そっくりになるだけだからね?!」

 

目の色は違えど、髪色は同じなわけだし。

高身長なのは両親の遺伝だろうし。

僕がマジで女性になったら、母様になるに決まってる。

親子なわけだし。

 

「あ、グンジョウ達じゃん。もうそっちの捜索終わったの?」

 

僕とユエ以外のメンバーが、宝物庫に勢揃いしていた。

結構広い屋敷なのに、もう自分達の捜索範囲が終わったのかと少し驚く。

 

ユエがシャナの姿を認めた瞬間、止める間も無くダッシュで姉に駆け寄った。

そして耳打ちしたかと思えば、シャナがこちらを見ながらユエに尋ねる。

 

「…ユエちゃん、グンジョウに激怒される前提でそれ提案してる…?」

「え、激怒するの? ほんのちょっとだけでもダメかな?」

 

それだけでユエがシャナに何を言ったか分かり、僕は額を押さえて天を仰いだ。

やめろって言ったはずなんだけど、どうしても見たいらしい。

シンクも興味を持ったようで、二人に何事かと聞いている。

 

「一時的にだけど、やってみっか?」

 

事情を聞いたシンクが、僕を見ながらニヤリと笑った。

 

「…シンク、お前な…っ!!」

 

僕はシンクを睨みつけるが、違う違うと首と手を横に振る。

 

「やるのは俺にだよ。外見だけならお前と同じなんだから、よっ!」

 

パチン、と指を鳴らしたシンクの見た目が一瞬で変わった。

長くなった後ろ髪を軽く結いあげ、胸元が開いた黒いドレス、同じ色の黒いヒール。

胸も母様と同じくらい大きくなり、金の装飾品を惜しげも無く所々に身につけている。

黒いドレスは腰辺りまでスリットが入ったもので、僕と同じアンダーリムのスクエア眼鏡をかけ、前髪は片方が隠れるような髪型になっていた。

口にもご丁寧に、赤い紅を差してウル艶感を出す為か、グロスが塗ってある。

 

なんでこんな女性物の化粧品に詳しいかって?

シャナが持ってるし、練習させてやるって言ってやらされた経験があるからだよ!

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