「どーよ、俺様美麗じゃね? 俺にひれ伏せ男ども、ってか! はははっ!!」
胸を強調するかのように腕を組み、ゲラゲラ笑うシンクだったが、僕は白けた目で弟を見つつ言う。
「下品。品性の欠片もない。お前、それユタカにさせたい格好とか言わないよな? だとしたら引くわ」
「あぁ? ユタカは可愛い系が似合うから、こんな格好似合うわけねぇだろ。あと、お前の好みなんざ知らねぇよ。俺は俺が似合う格好しただけだし、俺が似合うならお前も似合うって事だからな? お分かり?」
分かりたくないんだけど。
あと、アエラおばさんもいるんだからやめてくれないだろうか。
ちょっと驚いてるよ、おばさん。
「シンク綺麗、素敵!!」
「だろー?」
ユタカが目を輝かせて言うが、ユエは僕と同じく引いている。
感性の違いってやつだね。
そこは分かるよ、うん。
「まぁ、この格好似合うって言ったら、俺かシャナかくらいだろうけど。初心なグンジョウ君は清楚系がお好きなようですから? このセクシーさが理解出来ないなんて、可哀想ー」
シンクは片腕を上げ、もう片方の手は腰に手を当て、胸を反らせる。
幻想なのは分かっているが、自分と同じ顔…今はシャナに近いけど…そうされると寒気がするので、本当にやめてほしい。
あと、その格好父様に見せたらシンクは殴られるか、首と胴体がおさらばしていると思う。
そういう系、父様大嫌いだから。
何年か前に、そんな格好をした女性が父様と話をしていた時があったが、父様の眉が寄り、一瞬だけだが本当に嫌そうな顔をした事がある。
すぐさま母様がフォローに入ってはいたが。
父様、あぁいう系嫌いなんだ、と少し驚いた。
多分母様があんな格好したらすぐ襲うくせにな、とも思ったが。
「清楚も好きだけど、その人が似合う格好をすればいいとは思ってるよ。た・だ・し! お前のその姿だけは! 絶対!! 僕は認めないからな?!」
ギッ、と睨み合いになるが、シャナの声へ同時に僕らは姉を見た。
「あ、あたし、そんな際どい格好しないからね?! 胸だけじゃなくて背中も開いてんじゃん!! ツ、ツルギ君、想像しないでよ?!」
ぽやー、とシンクを見ていたツルギだったが、シャナの言葉にハッとなる。
そして、彼は顔を真っ赤にし狼狽え始めた。
「いや、その、想像、してない!! してないから!!」
「なんでそんな狼狽えてんの?!」
ぎゃーぎゃーと言い合い、というか、一方的な詰め寄りに、僕とシンクはお互い顔を見合わせる。
「…戻れば?」
「…そうする」
指を鳴らし、シンクの姿が元に戻った。
そんな僕らをアエラおばさんは何も言わずに黙って見ててくれたが、すぐさま我に返ったようで一つ咳払いをする。
その声でシャナも黙った。
「お久しぶりです、シャナ姫殿下」
「ア、アエラおばさん…五月蝿くしてごめんなさいっ!!」
シャナが思い切り頭を下げる。
お祖母様もだが、シャナが母様と同じくらい慕っている相手が、アエラおばさんなのだ。
幼少期の僕らを、忙しい母様の代わりに育ててくれていたので、第二の母様と言っても過言ではない。
「別に気にしていませんよ。大きくなりましたね、シャナちゃん」
「おばさーん!!」
母様が見たら羨ましいと言いそうなくらい、シャナはおばさんに抱きついて甘えまくる。
「シャナ、それ母様にもしてあげなよ? 多分見てるだろうし」
「え、うん。母様が言ったならするけど」
お前…。
母様、結構寂しがりやなの知ってるくせに…。
やっぱり手元でもう少し育てておけばよかった、と言っていた母様が頭をよぎる。
あのラゼッタでさえ、親離れをもうしているのだ。
まぁ、子供全員が早くに離れて行ったら、そう言う気持ちもわからなくはないけど。
だからなのだろうか、両親の仲が睦まじ過ぎるのは。
僕は一つため息をついて、シンクに尋ねる。
「で、見つかったのか?」
「いんや、全く。この屋敷の中にあるのは、シャナがリブロ使って分かってんだけどよ。場所がいまいち良く分かんねぇんだと」
リブロでさえも分からない?
そんな事があるのか?
僕が少し思考していると、そういえばとシャナが言った。
「あたし達が来る前に、知らない男の人がここから出て来るの見たんだけど。あれ誰だろ?」
「知らない男の人?」
ヴァリエール家に来なくなってから数年は経っているし、僕らが知らない人なんてたくさんいるだろう。
でも、僕らが来ているのに宝物庫に入る人なんているのだろうか?
「シャナ、それ使用人?」
「ううん。ヴァリエール家の使用人の服は覚えてるし、変わってないのはさっき見た。普通のスーツ姿の人だったな…ね、ツルギ君」
シャナに話を振られ、ツルギも頷く。
僕はアエラおばさんに尋ねた。
「おばさん、僕ら以外に客人が来ていますか?」
「えぇ、数日前からロゼの従兄弟の方が。名はアレン。アレン・ヴァレリィ。分家の方なのですが…」
おばさんが少し言い淀む。
ユエとユタカ、シンクがおばさんのその様子に、少し怪訝な顔をした。
僕は何故おばさんがそうなったか、事情は理解していたので苦笑いをする。
シンクの服はBBドバイを想像しています