my way of life   作:桜舞

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243話『王妃殿下を貶める発言』

「確定だな」

「何故、家宝を持ち出すのでしょうか…別に、宝石も何も嵌っていない、少し錆びた腕輪ですのに…」

 

おばさんは、本当にわからないという顔をしながら首を傾げる。

僕は弟に尋ねてみた。

 

「シンク、どっちだと思う?」

「お前が言いたい事は分かるが、本人に会って見ない事には何とも、な。シャナ、マーカーは付けてるだろ?」

 

シンクがそう聞くと、姉はにこやかに笑い、ピースをしてくる。

 

「不審者がいたら、とりあえずマーカー付けておけって言われてたから、その通りにしたよ。今は中庭にいるみたい」

 

いつの間にそんな意思疎通やってたんだよ。

僕だけ除け者か?

というか、そういうの報告しろよ。

 

「はいはい、兄ちゃんはうっせぇな」

「何も言ってないし、心読むなって言ってんだろシンク。一度本気の喧嘩でもするか?」

 

良いじゃないか、と笑うシンクをユタカが止め、僕の方もユエが宥めに入ってくる。

 

いや、ただの冗談だから。

本気でシンクと喧嘩をするとしたら、多分両方熱くなって歯止めが聞かなくなる気がする。

 

それをシンクもわかっているから、ただの軽口で済ませているのだろう。

 

「んじゃ、ま。行きますか」

 

シンクの言葉に、僕らは頷いた。

 

◆◆◆

 

アエラおばさんの案内で、僕らは中庭に行く。

そこには鈍色の髪をした男性が立っていた。

 

「お前か。何の用だ」

 

アエラおばさんの顔を見た瞬間、その男性…アレンは不遜な態度を取る。

いくら分家筋だからと、本家の当主の妻であるアエラおばさんにそんな態度を取るとは。

 

〈ヴァレリィ家って、中流の家?〉

 

ユエが念話で聞いてくる。

僕は彼女の手を握りつつ、答えた。

 

〈いいや、下流の家だよ。ヴァリエール家の分家筋も、中流から下流まで結構いるからね。それでも、ちゃんとしてる所はちゃんとしてるんだけど…〉

 

アレンを見つつ思う。

これ、シャナが嫌いなタイプの人間だな、と。

 

「証拠は上がってんだよ、アレン・ヴァレリィ。ヴァリエール家の家宝を返しな」

 

アエラおばさんを庇うようにシンクが前に立ち、手をヒラヒラとアレンへ向けて振る。

しかしアレンは肩を竦めた。

 

「何を仰ってるのか分かりませんな、シンク第三王子殿下。ヴァリエール家の家宝? そんな物、見た事もありません。私は、ヴァリエール家の分家でも下の方の位でしてね。ご当主様が懐の深い方で、こんな身分が下の者でも、尋ねれば快く招いてくれるんですよ」

 

押しかけた、の間違いじゃないのかとは思うけれど黙っておく。

確かにおじさんは気の良い人ではあるけれど、それでもヴァリエール家の当主だ。

侮られるような事はしないはず。

 

「だから、証拠上がってんだって言ってんだよ。それとも何か? その証拠を提示してもしらばっくれるつもりか?」

「いやいや。証拠も何も、家宝なんぞ知らないと言っているのです」

 

シンクとアレンの押し問答が始まり、僕は少しため息をつき、小声でシャナに言った。

 

「シャナ、時を止めろ」

 

それに対して、姉は嫌そうな声をあげる。

 

「うっわ、簡単に言ってくれるよね。あたし、母様程の力ないんだけど。止められても10秒だからね、グンジョウ」

「充分」

 

シャナが指を鳴らす。

瞬間皆の動きが止まり、僕はユエから手を離して地面を蹴り、アレンに近寄った。

あの映像を見ていたが、腕輪を入れたのはスーツの内ポケットの中。

対象に触ったらその対象も動き出してしまうが、動き出す前にその部分だけを切り取ればいい。

 

僕はノワールを出し、左胸ポケットを切り裂いた。

そこから腕輪が転がり出て、カランと音を立てながら地面に落ちる。

瞬間時が動き出し、アレンが驚いた声を上げた。

 

「なっ! なっ、何をするのですか! グンジョウ王太子殿下!!」

「私の弟が言っただろう、証拠は上がっていると。ほら、私が切り裂いた貴殿の胸ポケットから転がり落ちた、それはなんだ? 答えろ、アレン・ヴァレリィ」

 

僕はノワールを鞘にしまいつつ、問う。

冷たい目線を投げかけると、ひぃ、と怯えた声を出し、アレンは地面に座り込んだ。

 

「グ、グンジョウ王太子殿下は、おかしいとは思いませんか?! たかが平民風情が、それも捨て子の身分でヴァリエール家の当主になるなどと…っ!!」

「貴殿は忘れているようだな。私が誰の子かを。ローゼヴィッヒ・ロードナイト・ヴァリエールを当主の座に据えると決めたのは、我が父であるナズナ陛下だ。それに、貴殿のその発言は我が母であるシャルロット・マリアライト・ブリリアント王妃殿下を貶める発言であると心得よ。王妃殿下も、元は平民である。それに対して、否と発言するか貴殿は」

 

滅相もございませんと、アレンは平伏する。

まぁ戦争の英雄である母様を、平民だからという理由で王妃に相応しくない、否だと言える国民など、極少数だろうなとは思う。

 

自軍の三倍はいた敵軍を、母様はたった一人で滅したのだから。

 

僕は腕輪を拾い上げ、後ろのシンクに投げ渡した。

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