my way of life   作:桜舞

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245話『落ち込んでるだけ』

ロゼおじさん達に挨拶をした後、シャナに王立図書館まで飛ばしてもらい、職員用の扉から施設内に入る。

 

「よー、お疲れー」

 

カウンターにいたタイラーさんが、ヒラヒラと手を振りながら僕に声をかけてくれた。

 

「お疲れ様です。連絡ありがとうございました」

「おー。お前の机に置いてあるから、読め読め」

 

ニッ、と笑ったタイラーさんに感謝しつつ、僕は自分に与えられた机に向かう。

そこに鎮座している本のタイトルを見てワクワクが止まらず、僕は椅子を引いて座った後、本にかぶりつくように読み始めた。

 

どれくらい時間が経っただろうか。

カチリ、と机上のライトがつく音がして、僕は本から顔を上げる。

 

「…リリアさん」

「やっほー、グッさん。その新刊面白い? あ、いや、面白いからこんな時間まで読み耽ってるんだもんね。愚問だったわ」

 

たはは、とリリアさんは笑う。

周りを見ればもう人はおらず、図書館内も暗くなっていた。

かなりの時間ここに居座ってしまったようで、僕は立ち上がる。

 

「…すみません、業務の邪魔してたようで…帰りますね」

「あー、良いよ良いよ。新刊いっぱい来ててさ。私他、残業組がいるんだよ。この間グッさんには迷惑かけちゃったし、読み終わるまでいてていーよ。部屋の電気消さなきゃだから、ライト付けただけだしね」

 

ゴメンだけど消すね、とリリアさんは言い、後ろ手に手を振りながら退室して行った。

直後、部屋の電気が消され、光源は僕の机のライトのみとなる。

 

「やべぇ…今何時だ?」

 

携帯を見ると午後8時くらいで、おじさんの家を辞したのが確か昼前だったはず。

約8時間もぶっ通しで読んでて、まだ半分くらいしか読み終わっていない。

 

しかも携帯には、シャナからメッセージが入っていた。

 

【訓練の事忘れてるでしょ。カヅキおばさんと母様呆れてたよ。春休みだから、訓練早めにするって話してたじゃん。後で二人から扱かれろ、馬鹿弟】

「やっちまった…っていうか、なら電話して来いよ馬鹿姉。何のための携帯だと思ってんだ……まぁ、やらかしたもんはしょうがないし…うん。開き直ろう」

 

他にメッセージが入ってないかと、アプリを開く。

まぁ、カヅキおばさんからも入っていたのだが…ちょっと心抉られる内容だったので、そっと閉じておいた。

 

「よーし、読破して明日怒られよう。そうしよう……なんで誰も電話くれなかったんだよ…っ?!」

 

机に突っ伏して、少しだけ嘆く。

これで着信履歴があったなら、それこそ僕が全面的に悪…いや、訓練の事忘れて読書してた僕が悪い。

 

だって仕方ないじゃん。

この新作出たの、5年ぶりなんだからさぁ?!

統合騒乱で作者さん亡くなったかと思ってたら、ちゃんと無事だったけど…続編がなかなか出なくて、やっと今日見れたってわけなんだから…大目に見てくれないかな、おばさん。

 

「いや、無理か。うん、分かってる、分かってますよ希望的観測だってのは…」

「グッさん、独り言多くね? 糖分足りてない系かい?」

 

作業場の方からリリアさんが声をかけてくる。

カフェオレ飲む? と聞かれたので謹んで遠慮させていただいた。

リリアさんが作るカフェオレは激甘で、昔一口飲んで吐いた事があるからだ。

これが頭を回転させるのだ、と言われて、それは僕には必要ないですと答えた記憶がある。

 

「いや、あの、訓練があるのすっかり忘れてて…」

「あー、成程。先生が厳しいから怒られるのが怖い系か。まぁ、本の虫のグッさんには仕方ないねー。と? 誰か来たみたい?」

 

僕の傍でカフェオレを飲みながら、リリアさんが職員用の扉の方を見た。

職員の一人が応対に出ているようだが、僕がいる場所から遠く、誰が来たのかわからない。

 

その内、職員の男性がリリアさんの所に来て彼女に耳打ちする。

それを聞いたリリアさんが、僕の方を見てニヤリと笑った。

 

「何ですか?」

「愛しい彼女さんが会いに来たってさ。あの後全員に、写真見せてグッさんの彼女って触れ回った甲斐があったなぁ」

 

僕はガタッと椅子を鳴らしながら立ち上がり、慌てて職員用の扉に向かう。

そこには、レジ袋を持ったユエが立っていた。

 

「ユエ!!」

「…はい、これ」

 

ユエが僕に袋を差し出してくる。

彼女は少ししょんぼりしているようで、俯いていた。

 

「ユエ、どうしたの? 僕が訓練サボったから、カヅキおばさんから何か言われた?」

 

袋を受け取り、彼女に問いかける。

ユエは首を横に振り、更に俯いた。

 

「ううん…むしろ、ママは笑ってたけどね。普段のメニューの十倍は熟させてやるから覚悟しておけ、って伝えろとは言われた…」

「あー…うん、それは勿論なんだけど。じゃあ、なんで君そんなに落ち込んでるの?」

 

ユエは少し声を落としつつ、言う。

 

「アオが行っちゃったの、全く気付かなくて…気が付いたら寮って…私どんだけ惚けてたんだって、落ち込んでるだけ…」

「うーん…」

 

そこは僕の手に負えなかったから、ユタカに任せてしまったんだけど。

そんなに落ち込む事かなぁ…。

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