袋の中を見ると、近くのコンビニで買ってきたのかお弁当が入っていた。
昼も取らずに本を読んでいた僕へ、ユエが買ってきてくれたものだろう。
僕は後ろを振り返って、少し声を張る。
「リリアさん! ユエ、中に入れてもいいですか?」
「いーよー。作業場のとこはダメだけど、グッさんの机周辺ならオーケー。んじゃ、ごゆっくりー」
そう言って、リリアさんと職員は作業場の中に戻っていった。
僕は彼女の手を引き、さっきまで座っていた椅子に座らせる。
僕自身はと言えば、誰かの椅子を拝借してユエの隣に座った。
「ユエ、ご飯は?」
「シャナちゃん達と一緒に食べたよ。お夕飯取ってあるけど、多分今日帰ってこないからユエちゃんあとお願いって…シャナちゃんが」
うん、シャナの読み通り。
むしろリリアさんから声をかけられるまで、時間が経過している事さえ忘れていた。
とりあえず、ユエが買ってきてくれたご飯を食べ始める。
その間、彼女は大人しく椅子に座っていた。
「…というか、ユエ一人で来たの?」
「途中までシンクに送ってもらった。こういうの、アオは気にするだろうからって。その後はアオと一緒に帰って来いって言ってた」
それ良いのかなぁ…。
前にユーリおじさんにかなり怒られたんだけど。
まぁ、別に二人きりってわけじゃないし。
離れた所に大勢人がいるし。
部屋の中暗いけど、疚しい事が出来るかって言われたら、出来ないし。
「ユエ、暇じゃない?」
ご飯を食べ終わり、ゴミを捨てに行く。
戻る途中で彼女に聞くと、ユエは器用に椅子の上で体育座りをしていた。
「アオが読書好きなのは分かってる事だもん。それに、ママを抑えてあげたんだから感謝してよ。アオが遅刻した瞬間、迎えに行くついでに説教しようとしたママを止めたんだから。アオの娯楽はそれしかないし、最近ショックな事もあったから今日は勘弁してあげてって。シャナちゃんもお願いしてたから、後で謝っておいた方がいいと思うよ」
「わぁ……本っ当ごめん……ありがとう…」
うちの姉と彼女マジ優しい…明日の扱き頑張れそう。
ユエの優しさとシャナに感謝しつつ、僕は読書を再開する。
しばらく経った頃、コツン、と肩に何かが当たり、僕はそちらを見た。
ユエが目を閉じ、寝息を立てていたのだ。
携帯で時刻を確認するともう深夜1時。
また時間を忘れて読書に耽っていたらしい。
暇だったろうに、それでも僕の傍にいてずっと待っててくれていたようだが、それでも眠気に勝てなかったみたいだ。
「本当、うちの奥さん優しいなぁ…」
本も後もう少しで読み終わるしと思い、僕はそれにしおりを挟んで閉じる。
ユエを抱き抱え、仮眠室に連れて行った。
仮眠室も個室になっており、プライベート空間は確保されているから万が一も起こらない。
ベッドにユエを寝かせ、布団をかけた後部屋から出る。
外から鍵をかけ、僕は机に向かった。
本を読み終わったのが午前四時。
今回も結構な大作で、読み終わった僕は満足げなため息をつく。
「面白かったぁ…っ!」
前回からの続編ではあるが、まさかあのような展開になるとは。
これも次の続編が楽しみになるような終わり方で、本当この作者さんの頭の中どうなってるのか、見てみたいものである。
「…やば…眠気が…」
ぶっ通しで21時間起きているのだから当たり前か。
むしろ、途中で眠気が来てもおかしくなかったのに、脳内麻薬すげぇ、と感心してしまった。
本を机から避難させ、僕は突っ伏す。
次はカヅキおばさんに叩き起こされるんだろうな、なんて思いながら意識を飛ばした。
まぁ、寝る前に思った事が現実になり、僕はおばさんに叩き起こされて、訓練場に連れて行かれ、いつものメニューの十倍どころか百倍あるんじゃね? という訓練を課され、昼前にも関わらず瀕死の状態に陥っていた。
はい、僕が悪いので文句を言うつもりは全くありません。
でもキツイです、おばさん…。
「へばっている暇などないぞ、グンジョウ。安心しろ、死んでも生き返らせてやる」
「安心…出来ない…です…」
不死の結界が張ってあるとはいえ、僕何回おばさんに殺された?
首は飛ばされるわ、両腕両足も何回切り落とされたか。
おばさんは槍を振るっただけなのに、防御が間に合わなかった。
あぁ、ユエがここにいなくて本当に良かったと思う。
こんな状態の僕を見たら、彼女は発狂するに違いなかった。
そういえば、図書館の仮眠室に置いてきたまんまだったな。
誰か迎えに行ってくれたのだろうか。
「考え事をしている暇があるのか、グンジョウ」
またスパンっと首が飛ばされる。
本当、容赦ないこの人。
起き上がる暇なく首飛ばされた。
「っ、アオッ!?」
不死の結界を解いて、また張り直そうとしていたおばさんを見上げていると、そんな声が聞こえる。
あ、マズイ。
おばさんも少し嫌そうな顔をしながら、そちらに目を向けていた。
シンクが迎えに行ってくれたようだが、タイミングがほんの少しだけ悪かったようだ。
ユエはおばさんに近寄り、文句を言い始め…親子喧嘩に発展してしまう。
とりあえず休憩できたから良しとしよう、なんて思った。