my way of life   作:桜舞

247 / 408
247話『そこまでのレベルは引く』

ノーム1の月。

最高学年に上がった僕は、ぼんやりと空を見上げていた。

 

「アオ? どうかしたの?」

「いや…春だなぁ、って思って」

 

ユエが顔を覗き込んできて、僕は彼女に笑いかける。

 

入学式が行われている体育館から学園長のスピーチが流れてきており、少し眠そうにしているようで言葉が途切れ途切れだ。

 

そんなBGMを聴きながら、僕はユエに膝枕をしてもらい、誰もいない屋上で二人きりを満喫している。

 

卒業式同様入学式も生徒数が多いので、在校生は新学期が始まるまで休みなわけなのだが。

それを良い事に、僕とユエは屋上デートをしているわけである。

 

誰もいない校舎を二人で歩くのは、少し楽しかった。

音は体育館の方から聞こえてくるのだが、それでも僕らだけしかいないような錯覚を覚えたから。

 

「制服着てきてって…。みんなに内緒、って言うからどうしたのかと思ったんだけど」

「んー…ダメだったかなぁ?」

 

僕は彼女に甘えるように、ユエのお腹に顔を埋めた。

女性特有の柔らかさで、尚且つ彼女の甘い匂いが鼻腔をつく。

安心できる匂いに、僕はユエの腰に手を回し抱きしめた。

彼女はしょうがないなと笑いながら、僕の頭を撫で始める。

 

先月のカヅキおばさんの扱きがキツすぎて、ユエに癒されたかったのだが…迷惑だっただろうか?

ここにいるの、つまらないかな?

 

「ダメじゃないけど…少し驚いただけ。ん、もう…アオ、そんなに顔押し付けないでよ。甘えん坊だなぁ」

「二人きりだし、良いじゃん。こんな事するの、君以外いないんだからさぁ」

 

ふふ、とユエは笑い、優しく頭を撫でてくれる。

僕は心地良くて、目を閉じた。

 

「春の陽気ってさ、眠くなるよねぇ…」

「寝ないでよ? 寝たら、アオを城の寝室に飛ばすからね」

 

それユエも一緒? と尋ねたが、僕一人だと答えられてしまう。

それは勿体無いので、僕は渋々起き上がった。

 

「アオ。私、少しお腹空いてきた」

「うん…キューキュー音してるもんね…」

 

ユエのお腹から顔を離したが、それでも彼女の腹の虫が鳴っているのが聞こえる。

少し頬を染め、ユエはお腹を抱えて蹲った。

 

「…言わないでよ、恥ずかしい…」

「そんな君も可愛いよ」

 

僕がそう言うと、ユエはほんの少しだけジト目になり、睨みつけてくる。

何故?

 

「アオは、私が太っても愛してくれるの? 私がブクブク太ったら嫌でしょ?」

「え? 別に嫌じゃないけど? まぁ、意図的に健康を害するレベルになるのは、ちょっとどうかとは思うけど。別に君が太ろうが、それこそ何処かしら欠損したり、動けなくなっても、僕は君を愛し続ける自信しかないけど?」

 

そこまでのレベルは引く、とユエに言われてしまったが、逆に聞いたら君だって同じ事言うだろうにね?

 

ここに来てから2時間は経過しているし、もう昼前なはずだから仕方がない。

僕は立ち上がり、彼女に手を差し出す。

 

「お昼ご飯食べに行こうか、ユエ」

「うん」

 

ユエは僕の手を取り立ち上がった。

校舎内に入った瞬間、この季節にしては珍しいスコールが降り始め、間一髪だったな、なんて後ろを振り返りながら思う。

 

「うわ…凄い土砂降り…」

「本当だね。着替えがないから、すぐ城に引き返す羽目になってたよ」

 

ユエと手を繋ぎながら外を眺めていると、彼女がぎゅっと握っていた手に力を込めてきた。

 

「ん? どうしたの、ユエ?」

「…私が制服濡れたら、アオ…そういう気分になる?」

 

何聞いてきてんだ、こいつ。

上目遣いでそんな事聞かないでくれ。

襲われたいんだろうけど、そうはいかないからな?

 

「ユエ…あと一年だから我慢しろよ…。それに、今妊娠したら戦力から外されるの理解してる? むしろ僕、魔王関係なしに殺されるんだけど? 君、父親無しで子供育てる気?」

 

片手で彼女の肩を掴み、真剣な顔で問う。

ユエは目を泳がせ、困ったように眉を下げた。

 

「…う…好奇心で聞いただけじゃん…そんなに詰め寄らなくても…」

「煽るなって言ってんだよ。それに正直に言えば興奮はするよ。そういう気分になるに決まってんだろ。好きな人のそんな状態なんて…実行しようとするなよ?」

 

少し動こうとしたユエに釘を刺す。

もうそろそろ雨も止むだろうに、何処に行こうというのか。

 

「しないってば。お腹空いたから学食行こうよ。お休みでも、先生達はいるから開いてるはずだよね?」

「あ、うん。春休みでも、残ってる学生もいるからね。常時開いてるよ」

 

ユエは僕から手を離し、階段を数段降りた所で振り返る。

そして、

 

「アオのえっち」

 

とニヤリと笑って降りていった。

 

「ほぉ…? …煽ったのは何処の誰だ!! 待て、ユエ!!」

 

待たない、と彼女は笑って走っていく。

僕も彼女の後を追うように、階段を駆け足で降りていった。

 

◆◆◆

 

学食には、いつもより人は少ないが昼食を食べにきている人がちらほらいる。

メニューも春休みだからか、あまり多くはなく、僕とユエは別々の物を頼んだ。

それを持って空いているテーブルに置く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。