「アオが食べる量、成人男性並みっていうけどさ…私それ以上に食べてるから…なんか、減らした方が良いのかなって思っちゃうんだけど…」
「うん? いや、普通だと思うけどな。シャナもそれくらい食べるし。さっきからどうしたの、ユエ。今日やたらと体重気にするじゃん」
ユエはパスタを食べながら、少しため息をついた。
僕は定食Bセットというものがあったので、それを食べている。
内容は焼き魚とご飯と味噌汁、それにお漬物といった和という感じの物で、更に大根おろしもついていた。
結構僕好みでテンションが上がったのだが、逆にユエはパスタのみで、若干心配になる。
「…今日、来る前に体重計乗ったら増えてた…」
「何キロくらい?」
2キロというので、誤差の範囲内だと思うけどな、なんて思った。
「訓練してるから、筋力増えただけじゃない? むしろ脂肪ついてるなんて、思えないし。ダイエットしようなんて考えるなよ、ユエ。多分おばさんから止められるよ」
「うー…女の子の2キロって、結構大きいんだよアオ?」
ムッとされてしまうが、僕はチラリと彼女の胸を見る。
そして尋ねた。
「ユエ、こんなとこで聞く質問ではないとは思うんだけどさ……胸のサイズ上がっただろ?」
最後の方は小声で尋ねると、彼女は顔を真っ赤に染め自分の胸を抱きしめながら、僕から背を向ける。
「なっ、なっ…?!」
驚いて僕を見つめるユエだったが、何故それを知っていると表情が物語っていた。
「その分だと思うよ。だから、無理に体重落とそうとするんじゃないぞ。なんで分かるかって…まぁ、抱きしめたりした時の質量とか…後はメイド達が、ユエのドレスのサイズ更新しないとって言ってたの聞いた」
「…アオさ…人のスリーサイズ見ただけで分かったりする?」
それは分からない。
シンクならもしかしたら、ワンチャン出来なくもないかもしれないけど。
ユタカがいる以上、そんな事はしないだろうなとは思う。
「分かるわけないだろ。分かるのはユエのサイズだけ」
「…それはそれで、恥ずかしいんだけど…」
もそもそと、ご飯を食べ始めるユエに苦笑する。
好きな人の事はなんでも知りたいと、そう思うのは間違っているだろうか?
ガヤガヤと、入り口付近が騒がしくなる。
そちらに目を向けると、新入生が先生達に連れられて見学に来たようだった。
「初々しいなぁ…」
「ここ、高等部用の学食だしね。中等部のは、もう少し狭かった気がする」
確かに。
むしろあの頃はもう少し食欲旺盛だった気がした。
給食と言うものがあったけれどそれでも足りなくて、学食行ってパンとかおにぎりとか買って食べてたっけな。
シャナと一緒に。
ユエと同い年だから、話が合って楽しい。
「あの時のアオ、何かしら食べてたよね」
「まぁ…ユエじゃないけど、あれでよく太らなかったなとは思うよ」
ユエより先にご飯を食べ終わってしまったので、僕は足を組んで彼女と話をしながら苦笑する。
「シャナちゃんが何かしてたんじゃないの?」
「いや、むしろクロノス達かな。中等部までは護衛役として一緒に住んでたから」
それを聞いたユエが、次に言いそうな事が頭を過った。
彼女は口を開き、次いで
「筆」
その単語を発しただけで僕はユエの口を塞ぐ。
「ユエさん、ここ学食なんですけど。あとね、女の子がそれを口に出したらもうアウトなんだよ。言いたくないけど、僕童貞なんだよ。お分かり?」
こくこく、とユエが頷いたので彼女の口から手を退けた。
「どこでそういうの覚えてくるの、君…」
「ママが所有してる本」
有害図書に指定しろ、それ!!
思わずテーブルを叩きたくなったが、我慢して突っ伏すだけにする。
こういう状態の僕を見慣れて来たのか、ユエは何も言わず食事をしていた。
「あれ、グンジョウ殿下じゃない?」
「隣にいるの、婚約者の人かな?」
「うわ、美人…」
「グンジョウ殿下、格好良いー…」
「ワンチャン告ったら、愛人としてお付き合いしてくれねぇかなぁ、あの美人さん」
下級生のそんな声が聞こえる。
大半は僕の事だったけど、一部ユエについて言っている声があり、僕は起き上がってそちらを見た。
キャー、と女子生徒から黄色い声が上がり、先生達から注意されている。
「アオ、怒らないで」
食事を終えたのか、ユエが苦笑しながら僕に注意してきた。
下級生から彼女の方へ顔を向け、少しため息をつく。
「怒ってないだろ。ただ…君に告白してくる馬鹿がいそうだなって思っただけさ」
「アオも増えそうだよね? ヤダなぁ…私のアオなのに」
それを言うなら、君だって僕のものなんだけど。
先生方がいる手前、彼女にキスをする事も出来ず、ユエの手を取って手の甲に口付けた。
「アオ…」
「男子生徒に呼ばれたら、すぐ僕に連絡して? 君が僕より強いのは理解しているけれど、それでも相手は君より体格のいい奴らばかりだ。君に危険が及ぶのを未然に防ぎたい」
そう言うと、ユエの目が泳ぐ。
ん? と思ったのも束の間、僕は聞かされていなかった事を知らされた。