「ユエ? 流石にボールは戻せばいいだろうけど、他のはその部活の物だからね? 勝手に使うのは許されないと思うんだけど」
「むぅ…もっと格好良いアオ見たかった…」
何やらせるつもりだったんだ、ユエは。
取り敢えず聞いたら、次は弓道をやって欲しかったらしい。
「あの、した事ないです。無理だよ、ユエ」
バスケは中等部の時に、遊びでエミル君達とやっていたから、出来るだけであって。
弓道なんて、本格的な装備じゃないと出来ないやつだろ。
「アオならいける!」
いや、なんでそんな自信満々に宣言できるの?
僕完璧超人じゃないからね?
そう言ったけど、先程と同じ言葉を返され、うーんと悩む。
僕は仕方なしに、携帯を取り出した。
掛けた先は弓道部にいる友人で、名前はアラスター・ミラー。
大変申し訳ないと思いつつ、電話に出た彼に事情を説明したら電話口で爆笑された。
『グンジョウ、お前…彼女のために頑張るなぁ?! あっはっはっはっはっ!!』
「アラスター…申し訳ないとは思ってるけど、ちょっと装備貸してくんない?」
良いけど道場内鍵閉まってるぞ、と言われてしまう。
よし、ユエに断る口実が出来たと内心ガッツポーズをしていると、アラスターが余計な気を回してくれた。
『5分待て。そっち行って鍵開けてやんよ』
「…無理しなくていいけど」
してねー、とアラスターは笑いながら電話を切る。
僕は少しため息をついて、ユエに弓道場に行こうかと言った。
◆◆◆
「おっまたせー…って、休みなのに制服デートしてたん? 奇特だなー」
弓道場の鍵を振り回しながら、僕らの格好を見たアラスターがニヤニヤと笑っている。
本当、ニヤケ顔が似合う奴だよ君は。
「グンジョウ、ちょっと」
アラスターはユエから僕を引き離して、小声で聞いてくる。
「お前の彼女、氷の花って名高い立花ユエじゃん。何、手折ったわけ?」
「あのさ、アラスター。何、氷の花って。それに、まだ手は出していない」
ユエの異名を聞いた僕は、小声で返した。
聞いた事ないんだけど、氷の花。
何それ。
「告る男共を、その冷たい目線で一刀両断にしているって噂だぜ? 眼は紅いのに、吐く言葉も目も冷たすぎて、いつしか高嶺の花ならぬ氷の花って呼ばれてんのよ」
「じゃあ、彼女の姉はなんて呼ばれてんの?」
ユタカも、シンクの知らない所で告られているらしいと、彼女から聞いたばかりなものだから、少し好奇心に負けた。
「イバラ姫だったかな。妹の方が氷なら、姉が吐く言葉は棘だらけって、誰かから聞いた気が…」
「うわ…」
ユタカの見た目は、シンクが手を加えているからかとても可愛らしい。
だが、身内以外に対しては毒吐くのかユタカ…。
「アオ?」
「いや、何でもない。ユエ、彼はアラスター・ミラー。中等部からの付き合いだけど、結構良い奴だよ。弓道も中等部からだっけ?」
僕の引いた声が聞こえたのか、ユエが首を傾げながら名前を呼んでくる。
アラスターは一つ頷くと、恭しく僕とユエに頭を下げた。
「ご紹介に預かりました、アラスター・ミラーと申します。ご機嫌麗しゅう、立花嬢。グンジョウ殿下とは中等部の頃同じクラスになりまして、そこからのよしみで仲良くさせて頂いております。中流貴族のミラー家で次男坊として生を受けた私ではありますが、グンジョウ殿下と懇意にさせて頂いているばかりか、その婚約者様の立花ユエ嬢ともお知り合いになれるとは。いやはや、本日はとても良い日になりました」
ユエが怪訝そうな顔で僕を見つめる。
なんだこいつ、とでも思っていそうだった。
「アラスター、別に畏まる必要はない。学園外ならともかく、ここは学園内だ。友人として振る舞ってくれ」
「えー。ユエ嬢に対しては、畏まってた方がいいだろー? 家格は立花の家の方が高いんだしさー」
僕はアラスターから、ユエの方を見る。
君はどうしたい? と問いかけた。
「いや、あの、同級生なので…別に普通で良いです…」
「あ、そう? それは助かんよ。いやー、俺こんな顔だからさぁ。いっつもニヤケ顔なわけ。失礼じゃね、って言われる事も多くてさぁ。あー、グンジョウの質問に答えてなかったわ。うん、そう。中等部の時から弓道してるー」
アラスターは弓道場の扉の鍵を開け、僕らを招いてくれる。
シン…としたそこは、厳かな雰囲気を纏っていて、身が引き締まる思いがした。
アラスターは自分が使っている弓と、射出する為の矢を持って僕を手招きで呼ぶ。
「見本見せるから、この後やってみなー」
「軽すぎるだろ、アラスター。有難いけど」
アラスターは矢を射る姿勢になり、ニヤケ顔はそのままだが目は真剣で、弦を引く。
暫くの後、矢が放たれて的の真ん中に刺さった。
「凄い…」
ユエは正座をし、アラスターを見ている。
彼はニヤリと笑い、僕に弓と矢を渡してきた。
「ユエ嬢、俺よりグンジョウはもっとすげーんだぜ? ほらほら、可愛い彼女に見してやれよ」
「急かすなよ…あと、こんなの誰でも出来る事だからな?」
僕はアラスターの動きを思い出す。
アラスターはあのアラスターをイメージしました
アニメ見てないんですけどね…
あと弓道詳しくないので
違うと思っても
スルーしていただければ…