my way of life   作:桜舞

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251話『動画撮っとけば良かった』

彼の姿勢、弦を引く角度、矢を離すタイミング、そしてその呼吸。

集中して、的を見る。

 

僕は矢から手を離した。

矢は一直線に飛び、的の真ん中を射抜く。

ふぅ、と一呼吸をし、僕は後ろを振り返った。

ユエは驚いているようで、口元に手を当て僕を見つめている。

 

「流石グンジョウ。見稽古上手いねぇ」

「ただの劣化コピーだろ、こんなの。見稽古って程でもないよ。元が良かっただけで、僕自体はそんな大した奴じゃない」

 

ありがとう、とアラスターに礼を言いながら弓を返し、場に降りて的に刺さった矢を引き抜いた。

矢を回収して戻ってくると、渡せと言われたので素直に渡す。

 

「道具の手入れ手伝うよ?」

「いーよ、俺のだし。次どこ行くん?」

 

何処行こうかな。

 

少し疲れたからユエといちゃつきたいんだけど。

でも僕の趣味って読書なわけだが、学校内の図書室は閉まってるし、行った所で彼女には退屈だろうしなぁ。

 

時刻は午後3時。

甘いものが好きだったなら、おやつの時間なんて思う所なんだろうけど。

 

「うーん…どうする、ユエ?」

 

取り敢えず彼女の意見も聞こうと思って尋ねたが、ユエは僕を見つめたまま微動だにしなかった。

 

「ユエ? ユエさーん?」

 

僕は彼女の前に行き、目の前で手を振る。

そんな僕にユエは言った。

 

「格好良い…動画撮っとけば良かった…」

「えぇ…。さっきも言ったけど、劣化コピーなんだってば。アラスターの動きが良かっただけ。模倣の動きなんて、格好良いわけないだろ?」

 

ブンブン、とユエは大きく首を横に振る。

ポニーテールもその動きと連動して鞭のように動いた。

 

「アオは格好良いんだよ!」

「グンジョウ、何であだ名青なん? 全身青いから?」

 

アラスターは道具を仕舞ってきたようで、首を傾げながら尋ねてくる。

 

「言うな、アラスター。だいたい私服は青じゃないだろ? 髪と目の色だけで、ユエが僕を青って呼ぶわけないじゃないか。僕の名前、異国だと群れる青って書くんだって。だから、アオって呼んでるんだよ彼女は」

「へー、成程ぉ。いや、ユエ嬢がそーゆー思考の持ち主って決めつけたわけじゃねーからな? 不愉快になんなよぉ」

 

そんな表情してただろうか?

少し困りながら笑うと、アラスターは僕の肩を軽く叩いてきた。

ただの軽口だから気にするな、と彼は言う。

 

「そういや、学園都市内に巨大パフェが…」

「僕が甘味類苦手な事を前提に話してるよな? それに、それはシャナが完食したやつじゃないか…見たくねー…」

 

あれを思い出して、僕は天を仰いだ。

んー、とアラスターは少し考え、一つ手を打つ。

 

「シャナ嬢、あれ完食したん? マジで? あれ普通、五人前から九人前以上あるのに? すげー。じゃあ、お前の趣味も満喫出来て、ユエ嬢も満足できる店教えてやるよ」

「え、そんな店あったっけ?」

 

あるある、と彼は言い、携帯を取り出して地図アプリを開いた。

場所を把握した僕は、自分の携帯でそれを調べ店の内容を見る。

確かにアラスターの言う通り、僕の趣味も楽しめるし、ユエも満足出来るかもしれなかった。

 

「ありがとう、アラスター。休みなのに無理言ってすまない」

「これくらい、いーって事よ。クラス離れたからあんま遊べなくなったけど、暇出来たらエミルとか他の奴らと一緒に遊ぼーぜ。あ、お前の弟のシンク? 運動出来る系?」

 

どうだろう?

山道登った時息上がってたから、無理じゃないかな…。

 

「運動出来ないかもな…」

「マジか? 体力無い系? あー、いや…元々病弱だったんだっけ? そりゃ運動系の遊び誘えねーなー。カードゲームとかは得意?」

 

アラスターは色んな遊びを提案してくる。

本人、ここにいないんだけどな。

 

「今度シンク連れて、君を紹介するよ。その時にでも聞いてくれ。ユエ、足痺れてない?」

 

正座したままのユエに尋ねると、彼女はスッと立った後よろめいた。

よろめくくらいなら立たなきゃ良いのに。

そう思いつつ彼女を抱き止める。

 

「…足、痺れてた…」

「だろうね。アラスター、悪いけど…」

 

いーよー、と彼は笑いながら手を振ってきた。

僕はユエをお姫様抱っこで抱き上げ、もう一度アラスターに礼を言ってから、弓道場から出た。

 

◆◆◆

 

しばらく歩いていたら、ユエから降ろすように言われ、素直に降ろしてあげた。

別にあのままでも良かったが、彼女的に人に見られるのは頂けなかったのだろう。

 

アラスターに紹介された店に行き、僕らは案内された席に座る。

そこは喫茶店だったが、棚一面に色んな本が収納してあった。

メニューも多種多様なものがあり、女性が好きそうな甘いものある。

 

「好きな物頼んでいいよ」

 

僕はユエに笑いかけながら、本棚を見た。

見た事がない本のタイトルが所々にあり、何の本なのだろうと興味が湧く。

 

「見たいのなら、持ってきて見れば良いじゃない」

 

メニューを見つつ、ユエが苦笑した。

僕を思って言ってくれているのは、わかるんだけど…。

 

「んー…別に良いや」

 

ユエとのデートそっちのけで、本にのめり込むのもなぁ、と思ってしまったのだ。

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