my way of life   作:桜舞

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255話『オーリッドへの手向け』

「へぇ、ロスヴィータの家宝ですか…ちょいとアンタ、起きな。家宝の事で、殿下方が話を聞きたいってよ」

 

住居に立て掛けてあった箒を持ってきて、サマンサさんは柄の方でハンフリーさんを殴打し始めた。

あんまりな横暴に、僕は止めに入ろうかと思案した所で、ガッハッハと笑いながらハンフリーさんが起き上がる。

 

「サマンサ…お前、元々人族側で暮らしていたはずなのに、うちの流儀に慣れてきたんだなぁ」

「当たり前だろ。アンタと番って何年になると思ってんだい? あたいは起こす為とはいえ殴打されたくないから、早くは起きるけどねぇ。まったく、人族の嫁貰ってんだから少しは容赦しな、ハンフリー」

 

これ、日常茶飯事なんですか…。

亜人族について少しは勉強していたとはいえ、こういう事があるとは思わなんだ。

父様、母様、もうちょっと詳しく教えてもらえませんでしょうか…。

 

内心そう思っていると住居のカーテンの隙間から、ハンフリーさんに似た半獣人の女の子が僕を見ている事に気付いた。

そちらに目を向けると、目が合ったその子はカーテンの影に隠れてしまう。

 

僕の目線に気付き、サマンサさんは住居に向かって声をかけた。

 

「スノウ、殿下方にご挨拶しな! 全く、なんでアンタはそんなに引っ込み思案なんだい? 別に殿下方はアンタを取って食いやしないよ!」

「うぅ…」

 

スノウと呼ばれたその子は、そっとカーテンから顔を出し、

 

「スノウ・フレイアです…よろしくお願い、します…」

 

そう自己紹介してくれた後、また引っ込んでしまう。

その様子に、サマンサさんは盛大にため息をついた。

 

「誰に似たんだか…すんませんねぇ、殿下方」

「いえいえ。知り合いにも似たような子がいましたし…」

 

ツェリ、元気かなぁ。

 

彼女の事を思い出していると、後ろから服を引っ張られる。

見なくても誰がやっているかなんてお見通しで、僕は後ろを振り向きつつ苦笑した。

 

「ユエ」

「………」

 

少し拗ねたような表情を浮かべ、彼女は僕から目を逸らしていた。

それでも、僕の服を掴む手を離してはいない。

 

本当に、僕の婚約者で恋人の彼女はとても可愛い。

周りに誰もいなかったら、抱きしめて愛でられるのに。

残念で仕方ない。

 

「ア、アオ…」

 

ユエは手を離し、少し頬を染める。

読ませる為に思考したし、本心でそう思っているので読まれても別に構いやしない。

 

本当にユエ可愛い。

 

「もう良いから…っ!」

 

小声で彼女は抗議してくる。

そんなユエを見られて満足なので、話を戻す事にしよう。

 

「それで、ロスヴィータの家宝の事ですが…」

「おう。オーリッドのずーっと前のロスヴィータの奴が、俺達の土地に祭壇を建てさせて欲しいって言うからよ。何でも、禍々し過ぎて家に置けねーってんで、それに対抗出来そうなうちにって寄越して来たらしい。俺のひい、ひい、ひいじいさんの代だったか。オーリッドの家から結構物資とか融通して貰ってたから、まぁうぃんうぃん? ってやつだったんだろ。欲しけりゃ持ってっていーぜ。別に無くても、ロスヴィータは引き継いでいくしな。王妃の嬢ちゃんからもお願いされたってのもあるが、それがオーリッドへの手向けだ」

 

付いてきな、とハンフリーさんは僕らを案内してくれる。

案内された先は洞窟で、全く人の手が入っていない様子から見るに天然なのだろう。

 

「この先は、ロスヴィータの家との契約で入れなくてよ。悪いが、俺の案内はここまでだ」

「いえ、ありがとうございますハンフリーさん。何か困った事があれば、王宮に連絡して下さい。出来得る限り力になります」

 

僕がそう言うと、ハンフリーさんはまたガッハッハと笑った。

 

「坊ちゃんは、やっぱり王妃の嬢ちゃんの息子だなぁ。嬢ちゃんも言ってたよ。『何か困った事があったなら、すぐに連絡してきてください。あたしなり陛下なりがすぐお力になりますから』ってな! 俺と力比べして、俺を打ち負かした後によぉ! あれ言われた瞬間爆笑しちまったぜ!!」

「あー…ははは…まぁ、それが王家の総意だと思っていただければ幸いです。では、失礼します」

 

気を付けろよ、とハンフリーさんに見送られ、僕らは洞窟内に足を踏み入れる。

少し進んでから、シャナが口を開いた。

 

「亜人族って、何種類くらい人がいるんだろ?」

「シャナ…それ授業で習っただろ…」

 

確か中等部あたりの学習のはずなんだけど、忘れたんだろうかこの姉は。

ツルギが挙手し、俺も知らないです、と言ってきたので、僕は少し嘆息しながらも話す。

 

「まず獣人族のフレイア一族。この一族は獅子の体躯を持った屈強な戦士が多く、性格はハンフリーさんみたいに豪快な人が多い。物事を決める時は戦闘で決める事が多いと聞いているよ。フレイア一族はこの土地に長くいて、ロスヴィータの家とも友好関係を築いていた。力も強いから、他の亜人族のまとめ役をしてくれている」

 

シャナが光の魔法を使って僕らを照らしてくれ、足元に注意をしながら進む。

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