my way of life   作:桜舞

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257話『我慢するんじゃない』

「ユエ、ユタカ! 先に進んだら危ないかもよー?」

「ありゃ聞いてねぇな。あー、マジ可愛いわユタカ」

 

シンクがクックッと笑う。

僕はその様子に呆れた目を向けた。

 

揶揄ってやるなよ、可哀想に。

ユタカも、鬼畜ドSのシンクの相手なんて大変だろうな。

 

「喧嘩なら買うぞ」

「読むんじゃねぇよ、愚弟」

 

あ? とお互いに睨み合いになり、次いで掴み合いになった。

そんな僕らの頭に、拳骨が叩き込まれる。

勿論やったのはシャナだ。

 

「良い加減にしなさい、この愚弟共。ここが何処だか分かった上でやっているんなら、本当どうしようもない馬鹿って確定するんだけど、分かってるのかしら? 返事は?」

「「はい、姉君…」」

 

僕らは頭を押さえて蹲る。

 

シャナ、頭殴る時魔力込めやがった…めっちゃ痛ぇ…。

 

「シャナ…」

「何?」

 

不機嫌そうな声が返ってきて、姉の名前を呼んだシンクは押し黙った。

文句でも言おうと思ったのだろうが、この状態の姉に逆らおうとかよく考えるもんだ。

素直に謝っておけ。

 

「何って聞いてるんだけど」

「いや…すんませんでした…」

 

シャナの威圧に、シンクは謝罪の言葉を口にする。

そんな中、ユエ達が進んだ方向から戦闘音が聞こえ始めた。

 

「え? 誰が戦闘してるの?」

「んなもん決まってるだろ!! ユタカ!!」

 

シャナの疑問にシンクは怒鳴りながら立ち上がり、浮遊魔法で高速移動し始め、姿がすぐに見えなくなる。

 

「グンジョウ…」

「シャナ、ツルギ。急いだ方が良いかもしれない。シンクの魔力追えるな? シャナ、飛ばせ」

 

僕がそう言うと、シャナは一つ頷いて魔法陣を展開し、自分ごとその音の所へ飛ばしてくれたのだった。

 

◆◆◆

 

シャナ達と共に飛んだ先、見えたその光景は桃華とユエ達が戦闘をしている光景だった。

 

「ユエっ!!」

「ぐ、う…っ!!」

 

桃華は硬質化した爪でユエに斬り掛かっており、それを彼女は魔武器で防御しながらも、体の所々に切り傷が付いている。

それを見た僕は、瞬間的に頭に血が上った。

 

「桃華……てめぇっ!!」

「グンジョウ、待って!!」

 

シャナの制止の声が聞こえるが、無視をして桃華に突っ込む。

ユエへ攻撃を仕掛ける瞬間に割って入り、ノワールで受け止めた。

 

「あはっ!! お兄ちゃん!!」

「うるせぇ!! ユエに傷を付けやがったな!! 死ね!!」

 

桃華と切り結ぶが、僕の方が力量は上だ。

楽に殺してやるものかと、手首、足首と切り落としていく。

 

雷撃(サンダーボルト)!!」

 

ユエの声が響き、桃華に雷撃を纏った弾丸が叩き込まれた。

それと同時に、僕は桃華の首を飛ばす。

 

太古の炎(エンシェント・ノヴァ)!!」

 

シンクが炎魔法最大火力を桃華にぶつけ、彼女は蒸発した。

ものの数分で戦闘が終了し、僕はユエに駆け寄る。

 

「ユエ、大丈夫?! 怪我して…っ!!」

「これくらい大丈夫。かすり傷だよ、アオ。そんなに心配そうな顔しないで、私は無事だから」

 

僕の頬に手を添え、ユエはニコリと笑った。

安堵のため息をついた瞬間、僕は目眩を覚えてその場に座り込む。

今度はユエが心配というか、悲鳴にも似た声をあげた。

 

「アオ?! 何処か怪我したの?! ちょっ…大丈夫?!」

「あー…だから待てって言ったのに…」

 

シャナが僕の傍に来たようで、額に手を当ててくる。

その手が冷たく感じて、僕は目を閉じた。

 

「…シャナ、手…冷たい…」

「あたしの手が冷たいんじゃなくて、あんたの体が熱くなってんの。というか、誤魔化しが上手くなったねグンジョウ。さっき気付いたよ。いつから体調悪くなってたの」

 

え、とユエが驚いた声をあげる。

僕は、いつからだろうと考えた。

 

「……わかんない」

「自分にも嘘ついて、誤魔化すんじゃない。それで悪化させて、肺炎手前までいったの忘れたの? シンク、ユタカちゃん。魔王の遺物回収してきて。ツルギ君、グンジョウ運んで。ここ、湿気もあるけど気温が低すぎる。風邪だろうから、治癒魔法効かないの。早く地上に連れて行って」

 

ツルギは頷いたようで、僕を抱え上げる。

大丈夫だと言いたかったのだけど、熱で意識が朦朧としてきており、言葉を発するのも億劫になってきていた。

 

「アオ…」

 

ツルギの他に足音がするので、多分ユエが付いてきているのだろう。

というか、この状態になったの久々過ぎる。

あれ、中等部手前だったっけ。

確かに肺炎手前までいって、治った後母様に物凄く怒られたんだったな。

 

我慢するんじゃない、体調が悪くなったらすぐに言いなさい、って。

 

「ユ、エ…ごめ…眼鏡、預かっ…て…」

 

僕がそう言うと、目元からスルリと眼鏡が外れた。

何も目元から無くなったので、僕は安心して意識を落とす。

 

次に目を開けた時、視界は当然ながらボヤけており、まだ熱に浮かされていると自分の事ながら何処か他人事のように思えてしまった。

 

〈この状態になるのは久しぶりね、グンジョウ〉

〈なんでお前の体調回復の為に、俺達が引っ張り出されなければならん〉

 

頭の中に二人の声が聞こえ、僕は苦笑する。

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