my way of life   作:桜舞

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259話『シャナの好物』

ノーム3の月。

先月風邪でぶっ倒れた僕に代わり、魔王の遺物とかの回収を指示したり、僕を城に連れ帰ってくれた姉に礼をする為に、僕は休みの日の朝からシナモンクッキーを焼いていた。

料理は作れないけど、唯一これだけは作れるのだ。

 

なんて言ったって、シャナの大好物だから。

作り方なんて、姉に叩き込まれたに決まっているじゃないか。

 

「そう言えば、ユエの好きな物聞いた事ないな…」

 

クッキーが焼き上がる間、第一陣の洗い物をしながら僕はふと呟く。

教えてくれたら、作り方とか覚えて振る舞うんだけど。

 

まぁ、あの立花の娘だからな。

好き嫌いなんて許さないんじゃないだろうか、と想像する。

アレルギーとかじゃない限りは何でもかんでも食え、とおばさんは言いそうではあった。

 

ゲテモノ除く。

 

「んー…良い匂いする…」

 

シャナが瞼を擦りながら部屋から出てくる。

大きな欠伸をしているが、僕は気にしない。

長年一緒にいるし、別に取り繕う必要はお互いにないのだから。

 

だって姉弟だし。

 

「おはよ、シャナ。顔洗ってきたら?」

「そうするー…シナモンクッキー焼いてるの? なんで?」

 

やっと頭が覚醒してきたのか、シャナが疑問に満ちた目を僕へ向けた。

僕はチョコチップ入りのシナモンクッキーの元を、クッキングシートを引いたまな板の上に出し、平たくしてから型を抜いていく。

 

「先月迷惑かけたお詫び」

「気にしなくて良いのに…本当にうちの弟は優しいなぁ」

 

これを朝ご飯にするなよ、と釘を刺したが、しないと笑っているあたり、一瞬考えたなと察した。

第一陣が焼けたので、粗熱を取りつつ第二陣をオーブンに入れて時間指定し、スイッチを押す。

 

「それユエちゃんにもあげたら? 今二回目焼いてるんでしょ?」

「日持ちするし、あげるなら別に焼くよ。これは姉君用に焼いたやつだからさ」

 

グンジョウ優しいー。

なんてシャナは言いつつ、洗面所に向かった。

シャナにも迷惑をかけられている時はあるが、それ以上に姉の方に負担をかけている気がして、ちょっと罪悪感を覚えた結果である。

 

あと、熱に浮かされ母様に甘えてしまった記憶が、起きた直後に浮かび上がってきて…その恥ずかしさもあり、無心で何か作ろうと思い至ったのがこれだっただけだ。

 

「でも、作りすぎた感否めないんだよなぁ…」

「だから、他にお裾分けしてきなよ。いくら日持ちするって言ったって、二、三日じゃん。あたしこのくらいの量でいいし」

 

洗面所から出てきたシャナは、調理器具を収めてる棚から、直径15センチ深さ5センチくらいのボウルを取り出し、僕に差し出してくる。

 

それでもそれ、300グラムくらい入るやつじゃん…。

 

「本当太らない体質で良かったね、シャナ。これくらいのカロリー毎日取ってたら今頃…」

「うっさい。まだカートリッジのやつ作ってんだから、カロリーは全部そっちいってんの。良いのかー? お姉ちゃんがあんまご飯食べなくなって倒れてもー?」

 

それは困る。

シャナを介抱するのもだけど、魔力足らなくてまたあれをやるのだけは、ごめん被る。

 

「…ごめん、姉君」

「分かればよろしい」

 

第二陣も焼けたので、それも粗熱を取ってシャナが差し出してきたボウルに第一陣と共に、半々に盛った。

残りは適当な紙袋に分けてから、封を閉じる。

 

「シンクはいいけど、ツルギ甘いの食えるか…?」

 

二つに分けたものの、シャナの恋人であるツルギが頭を過った。

僕らと食事をしている時、甘いものを食べていたという記憶がない。

 

これ持ってって、シンク一人だけに消費させるのもな、と思ったのだ。

 

「デートした時、甘さ控えめなのは食べてたけど。あとグンジョウと一緒で、コーヒー好きみたい」

 

別に僕、コーヒーが好物なわけではないんだけど。

甘い飲み物や食べ物が苦手なだけで、普通に紅茶とかも飲むんだけどな。

 

まぁ良いかと、僕は自室に戻り着替えてから紙袋を持つ。

 

「シャナ、鍵かけてくけど誰か来ても絶対開けるなよ」

「そんな子供じゃあるまいし、さっさと行きなよ…あー、そんな目で見るな。分かったから早く行きなさい」

 

しっしっ、と手を振られたので、僕は少しため息をついて部屋から出た。

 

◆◆◆

 

まず最初にシンクの所からと思い、シンクとツルギの部屋に行き、何故かあるインターホンを押す。

ピンポーン、とチャイムの音がして、次いでパタパタとスリッパの音が聞こえた。

 

ガチャリと開けられた扉から出てきたのはツルギで、僕をキョトンと見ている。

 

「殿下…どうか、なさいましたか…?」

「あー…ちょっと手遊びで作ったシナモンクッキーが余っちゃって。ごめん、消費手伝ってくれない?」

 

紙袋を差し出すと、ツルギはそれを素直に受け取ってくれた。

奥からシンクが顔を出し、話を聞いていたようで紙袋と僕を交互に見る。

 

「おま、菓子作り出来たん?」

「これシャナの好物なんだよ。小さい頃は母様が作ってくれてたんだけど、寮暮らしになってから食べたいって強請られてね。自分で作れば良いのに、あたしがやると大雑把になって量も滅茶苦茶になるから、グンジョウ作ってって…強制的に作らされてきたもんだから。これだけだよ、作れるの」

 

シャナの好物と聞いたツルギは、携帯を取り出して僕に作り方を聞いてきた。

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