my way of life   作:桜舞

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260話『サンテブルク』

これからはツルギが作ってくれるみたいだぞ、良かったなシャナ。

 

取り敢えず、クッキーの作り方をツルギに教え、僕は二人の部屋を後にする。

次に訪れたのはユエとユタカの部屋で、シンク達の所と同様にインターホンを押した。

 

少し扉を開く時間が遅かったが、ドアスコープで来訪者を確認してからだろうから、防犯意識はしっかりしているようで安心する。

 

「グンちゃん、いらっしゃい。どうしたの?」

 

いつもの可愛らしい服装に、フリルがついたエプロンをつけている所を見るに、家事をしている途中だったのだろう。

邪魔したようで申し訳ないと思いつつ、僕は彼女に紙袋を差し出した。

 

「これ僕が作ったんだけど、作りすぎちゃって。消費手伝ってくれないかな。あ、味の方はシャナのお墨付きだから大丈夫だよ。中身シナモンクッキーなんだけどね」

「え、本当? ありがとう。お茶の時間に頂くね」

 

ユタカはそう言って受け取る。

中身の説明をしていると、奥からバタバタと走ってくる音が聞こえ、リビングから玄関に続く扉が開け放たれた。

 

「アオの手作り?! はぁ?!」

 

掃除機片手に走ってきたのだろうか。

ホースの柄を固く握り締め、驚いた顔で僕を見つめている。

 

「ユエ、声大きい。あと掃除機壊れるから、引きずって来ないで。グンちゃんだって、お菓子の一つや二つくらい作れるよ。物覚えが早い子なんだから」

「あの、ユタカさん。僕小さい子供じゃないんですが…せめて、手先が器用とか言って…」

 

あら失敬、とユタカは笑った。

そんな僕らを見て、ユエは手を差し出してきた。

 

「ユタカ、それ全部私が消費するから渡して」

「えー。私だってグンちゃんのクッキー食べたいんだけど? そんな嫉妬しないの。おねだりしたら、グンちゃんきっと作ってくれるよ? それにユエの好物だって…」

 

ユエの好物?

 

僕はその情報をユタカに聞こうとしたが、慌てたユエが彼女の口を塞いでしまう。

 

「ダメッ!! 絶対言っちゃダメ!!」

「隠し事か、ユエ?」

 

ニコリと笑うと、ブンブンと音がつくほどユエは首を横に振った。

隠し事では無いけれど、言いたくないって事か。

 

僕はチラリとユタカを見る。

ユタカも僕を見ていたようで、困ったように眉を下げた。

 

〈喋らなくても念話って方法があるんだけどね〉

〈頭に血が上ってる今のユエからしたら、そこは頭から抜け落ちてるんだろうなとは思うけど。グンちゃん、ユエの好物知りたいのってなんで? 作ってあげたいの?〉

 

僕は彼女の言葉に、うん、と返す。

 

〈好きな人に喜んでもらえるの、素直に嬉しいから〉

〈だよねぇ。ユエも恥ずかしがらずに教えてあげたら良いのに〉

 

僕らが黙ってユエを眺めているのに、彼女は不審感を覚えたらしい。

まさかと、ユエはユタカを揺さぶった。

 

「ちょっと、ユタカ! まさかアオに教えてないわよね?!」

「まだだけど、揺らすのやめてよ。グンちゃん、好きな物知ったところで笑わないし、むしろ嬉しいって思ってくれるって」

 

ユタカがそう言うと、彼女は自分の姉を揺らすのを止める。

そして、僕の方を見た。

 

「…笑わない?」

「絶対笑わない」

 

僕は頷きながら断言する。

ユエはユタカから手を離し、僕に耳打ちしてきた。

 

「…小さい子供が好きなメニューが好きなの。ハンバーグとか、唐揚げとか、卵焼きとか…」

「それ雪那もそうだったじゃん。何処に笑う要素があるって言うの、ユエ」

 

ほらね、なんてユタカは苦笑いを浮かべながら、ユエに言う。

 

「だって、子供っぽい…」

「普通。難しいものばかりじゃなくて良かった。むしろ練習すれば作れるやつばっかで、助かったよ。今度シャナに習って作ってみるから、楽しみにしてて」

 

僕も苦笑しながら、ユエの頭を撫でた。

彼女は少し照れたようで、軽く俯いてしまう。

可愛い。

 

「じゃ、僕の用件これだけだから」

 

そう言って立ち去ろうとした時、僕の携帯が鳴る。

誰だと思って見てみたら、母様からだった。

 

「はい、もしもし?」

『グンジョウ、ユエちゃんとイチャイチャしている所悪いのだけど、みんなで城に来てもらえないかしら? 次の魔王の遺物が見つかったのよ』

 

イチャついてはいないけど、見てたんだろうなぁ。

まぁ、それは良いや。

 

「分かったけど…なんで城? ここからじゃダメなの?」

 

城から向かったら近い領なのだろうか?

近場の領って、ロスヴィータとかヴァリエールとか、ベルナールとかだったはずなんだけど…全部行ったしなぁ。

 

『ベルゼビュートが来てね、サンテブルクに魔王の遺物があるから回収して欲しいって、あの無能が言ってたって言うから』

「サンテブルク……サンテブルク?! 待って母様!! それじゃあ…っ!?」

 

僕が突然大声を出したからかユエが驚き、ユタカはといえば僕を部屋に押し込め、扉を閉めた。

うん、近所迷惑だもんね。

ごめんユタカ。

 

『うちの膝下に、ずっと魔王の遺物があったって事よ。あそこの管轄はジルベルト家。てっきり家にあると思っていたのだけど…』

 

頭が痛そうな声を出す母様に、労わるような女性の声が聞こえた。

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