my way of life   作:桜舞

261 / 408
261話『聖女の称号を戴いてる方』

『私も、初めてヴェスタ神にお聞きしました。申し訳ありません、シャルさん。父にも確認を取ってみたのですが、うちに家宝と呼べるものはないと仰っておりましたので…』

 

穏やかな声が電話の向こう側から聞こえ、僕はカヅキおばさんの他に、母様の執務室に人がいる事を悟る。

 

「母様? 誰か来てるの?」

『エルよ。貴方も二回くらい会ってるでしょ?』

 

覚えてるはずよ、と言われて、あの人かと思い出す。

 

水色の髪の穏やかな表情を浮かべた女性。

初めて会ったのは、僕らが学園に行く前だったか。

 

あれに祈るのは癪だけど、子供達の無事を祈る為だとか何とか言って、サンテブルク教会に僕らを連れて行った。

そこで聖女をしている、エルさんに会ったのだ。

 

次に会ったのは、僕が王太子として立太子する時の式典だったか。

教会で行われるから、そこでだったはず。

 

確か名前は…。

 

「エレオノールさん、だったっけ」

『そうよ。出来れば早くいらっしゃい? あまりエルを待たせるのも、申し訳ないもの』

 

大丈夫ですよ、と声が聞こえた辺りで電話を切られる。

携帯をポケットにしまっていると、疑問に満ちた二人の顔が目に映った。

 

「アオ、王妃様何だって?」

「すっごい大声でサンテブルク教会の名前言ってたけど…どうかしたの?」

 

あー…と僕は声を出し、頭を軽く掻く。

 

「ごめん。ユエ、ユタカ。シンク達を僕達の部屋に連れて来て。みんな集まったら説明するから」

 

そう言うと、二人は真面目な顔をして頷いてくれた。

僕も頷きを返し、二人の部屋から出る。

まずは姉に説明しないとと、足早に自分の部屋へ向かった。

 

◆◆◆

 

シャナとシンクの転移術で城に着くと、母様と共に妙齢の女性が僕らを出迎えてくれる。

 

「お久しぶりです、グンジョウ殿下」

「お久しぶりでございます、聖女エレオノール様」

 

彼女に一礼すると母様以外、皆も頭を下げた。

クスクスと、エレオノールさんは笑う。

 

「そんなに畏まらないでください、殿下。私の方が身分は下なのですから」

「そういうわけにもいかないでしょ、エル。一応貴女、聖女なんだから」

 

その聖女様と対等に話出来てる母様、凄いんですけど。

流石、近代史の教科書にも載るくらいの英雄。

怒ると怖いが、普段は穏やかな僕らの母親なんだけどね。

 

「アオ、エレオノール様って…」

「リューネ国で唯一、聖女の称号を戴いてる方だよ。ヴェスタ神の声を聞ける方でね。神託があると、それを僕らに伝えてくれる役目を持っているんだ」

 

今回神託を持ってきたのはベルゼビュートって話だったけど、同じくヴェスタ神から話を聞いたエレオノールさんも、母様にそれを伝える為に来たのだろう。

なんで母様なのかといえば、二人が友達同士だからだ。

 

陛下である父様にも話は行っているだろうが、エレオノールさんは女性の方なので…護衛がいると言っても二人きりになってしまうと、危惧したのだろうか?

母様が嫉妬で怒り、テスタロッサに帰るとでも?

こんなにポンポン子供作っておいて、今更嫉妬するかな母様?

そこまで気を使わなくても良い気がするけど。

 

「はいはい、嫉妬はするわよ。あたしが彼にとって唯一の女ではあるけど、ナズナに色目使う馬鹿は後を絶たないのだから」

「心読まないでよ…」

 

僕らの様子に、エレオノールさんはクスクス笑う。

仲良いな、と思われてるんだろう。

実際仲は良いけど。

親子だから。

 

「陛下からお達しがあった後、私共も領内を捜索いたしましたが、家宝と呼べる物もシャルさんが言う魔王の遺物? らしきものも発見出来ませんでした。ですが、一つ気がかりな事がありまして…」

「気がかり?」

 

シャナが首を傾げると、エレオノールさんは頷いた。

 

「領内にはなく、しかしお話を聞く限り私共21貴族に、その魔王の遺物が渡っている。ならば、その遺物は何処へ行ってしまったのかと、父と共に文献を調べたのです。ですが…」

「見つからなかったわけだ」

 

シンクの言葉に、彼女はまた頷く。

確かに、領内になければ何処へ行ったというのかと調べはするだろう。

文献を調べるのも妥当だ。

だけど、その記述すらも見つからなかった。

 

「だからこそ、教会だと貴女は判断したわけですね。 王都にあるサンテブルク教会は、ジルベルト家が代々受け継いでいる場所だったはずですし」

「成程。危険な物だと判断したからこそ、封印する為に教会に安置したって事なんだね。あれ? でも、そしたらすぐに見当つかない? グンちゃん」

 

僕の言葉へ重なるように、ユタカが疑問を提示してくる。

 

「その通りでございます。教会内も調べましたが、そのような物は見つからず。途方に暮れてしまいまして…ヴェスタ神にお尋ねしようと思い、祈りを捧げておりました所…」

「神託が降りてきた、と?」

 

ツルギが尋ねると、エレオノールさんは頷いた。

だからこそ、彼女は母様を尋ねてきたのだろう。

 

「というわけだ、お前達」

 

母様の傍に控え、今まで僕らの会話を傍観していたカヅキおばさんがパンパン、と手を叩き、自身に注目させた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。