「エレオノール嬢と共に教会内を探索、遺物を発見次第回収、もしくは破壊しろ」
「了解しました」
僕らはカヅキおばさんに頭を下げる。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「朗報を期待している」
いつもながら二人に見送られ、僕らはエレオノールさんを伴い、王都内にある教会へと向かった。
◆◆◆
「ここがサンテブルク教会かぁ…」
徒歩でも結構な距離なので車で教会に向かい、降り立つ。
車から降りたシンクは、物珍しそうに教会を見上げていた。
「あれ、シンク来た事ないの?」
「そりゃ、16年間も病気がちだったらな。勉強と魔法の練習しか、する事なかったよ」
肩を竦める弟に、尋ねたシャナが気まずそうな顔をする。
エレオノールさんがいる手前、弟はそう言ったが…正確に言えば16年間も幽閉されていた、だろう。
しかもシンクの家庭環境から言えば、味方だったのは一番上のソルフィアナという姉だけで、シャナは虐めてくる方の姉だったはずだ。
両親には会った事もないと言っていたぐらいだし、シンクの心の支えは、その姉君だけだっただろう。
申し訳ないという思いからか、俯いてしまったシャナの頭をシンクは撫でる。
「そんなに気にすんなよ。別に嫌味で言ったわけじゃねぇし」
「う、うん…」
少し乱暴に撫でる弟に、シャナは髪が乱れるからやめろと叫んだ。
初めて会った時よりも仲が良くて、僕は少し笑う。
流石僕。
シャナが落ち込んでたら、どうすれば復活するかよく分かってるじゃないか。
教会内に入ると厳かな雰囲気で、僕は少し背筋を伸ばす。
外観もだったが、このサンテブルク教会は一体いつ建てられたのだろうか、と疑問に思う。
年代を感じさせないくらい、とても綺麗だ。
立太子の式典をやった時をほんの少しばかり思い出してしまう。
あの時の僕、滅茶苦茶緊張していたっけな。
父様と母様から教えられていた通りに出来ていた自信がない。
というか、記憶も曖昧だ。
ほんの7年前の話なのに。
どれだけ緊張していたのだろうか、僕は。
父様や母様、シャナからはちゃんと出来ていたと褒められたけれど。
「ここ、サンテブルク教会は、王族の方々の御婚姻や行事、一般の方の成婚や祈りを捧げる場など、多様に使われてきた場所です」
僕らの前を歩いていたエレオノールさんが立ち止まり、ステンドグラスを見上げる。
何かのモチーフなのだろうが、その光が教会内に降り注いでとても幻想的だ。
父様や母様も、ここで式を挙げたと聞いている。
いずれ、僕とユエもここで結婚式をするのだろう。
ユエ、ドレス姿綺麗なんだろうな…。
僕、惚けないか心配になってくるんだけど。
「ヴェスタ神を祀り、神に祈る…私達ジルベルト家は、そうやって生きてまいりましたの」
振り向いたエレオノールさんは、シンクを見つつニコリと笑った。
多分、弟の為に説明してくれているのだろう。
「へー…」
成程、といった感じでシンクが頷くけれど、珍しくユタカが少しムッとした顔で、弟を見つめている。
エレオノールさんが美人だから、嫉妬でもしているのだろうか?
〈アオ?〉
〈だから、人の心読むなって言ってるだろ。それに、エレオノール様は父様と同い年だぞ。一般の三十代の人よりは確かに美人ではあるけど、親と同年代の人に惚れるわけないだろ〉
だから嫉妬するな、とユエに念話で言う。
嫉妬してない、と彼女からは返ってくるが。
多分、シンクの方も同じ感じなのだろう。
若干弟が慌てていた。
と、キョロキョロと辺りを見渡しているツルギが目に入る。
「どうした、ツルギ?」
「あ、いえ…入り口以外に、風を感じまして…」
風?
ツルギの言葉に、皆一様に首を傾げた。
確かに今日は少し風が強くて、入り口から入り込んでは来ているけど…入口以外?
「シャナ」
シンクが姉を呼ぶ。
シャナがリブロを出し、
バラララッ! とリブロのページが捲られていき、あるページで止まる。
何のページだろうと、僕は姉の隣に行きリブロを覗き込んだ。
そこには魔王の遺物の名称やら、形状、どういう能力なのかが書いてあり、僕はシャナを見る。
え、リブロあったら探すの楽じゃん。
よく押収されなかったな、これ。
シャナがマスターだから、しようと思っても出来なかった、が正しいのだろうか?
「見つかりそうか?」
「多分あそこ」
シンクの問いかけにシャナが指を差したのは主祭壇で、それを見たエレオノールさんは首を傾げた。
「そこには何も無いはずですが…」
困惑気味に言う彼女の横を通り、僕は主祭壇を調べ始める。
重厚感のある祭壇は年代物で、見る人が見たら素晴らしいものだと感じる事だろう。
僕はそこら辺の感覚を養ってはいないから、ただの机としか感じはしないのだけど。
祭壇を隅々まで調べたが、リブロのページで見たようなものは見つからず、僕は立ち上がった。
「シャナ、無いよ」
「んー…祭壇自体じゃなくて、その周辺にあるとか? ごめん、リブロが反応してるから確かにあるはずなんだけど、正確な位置までわかるわけじゃないんだ」
リブロの正確性って、確かなんだろうか?