my way of life   作:桜舞

263 / 408
263話『下手したら処刑』

いや、ヴァリエールの家でも反応していたと言っていたから、ある事にはあるんだろう。

 

僕はツルギの方を見る。

もしかしたら、と思ったというのもあるが。

 

「ツルギ、その風って何処から来てるかわかるか?」

「多分この辺りかと…」

 

彼は祭壇に近寄ってその足元へ屈むと、ペタペタとそれを触り始めた。

あんまり触りすぎるのもなぁ、なんてツルギの様子を見ていたら、主祭壇がギッ、と音を立てて動いてしまう。

 

「えっ」

 

僕は驚いた声を上げた。

ツルギもまさか動くとは思っていなかったようで、動いてしまった主祭壇を唖然と見ている。

 

いや、机なんだから動くだろうけど…こんな重そうな祭壇が普通動くか?

それに、ツルギが身体強化を使ってもし動かしたのだとしたら、祭壇よりも傷ついているのは床の方だろう。

 

普通の床ではあるだろうが、それでも教会。

年季が入っているはずだし、この一部だけ傷つけたとあっては、全ての床材を剥がして総取り替えになるだろう。

 

「あの…殿下…これ、破損したら…一体いくらくらいになりますかね…」

 

ツルギもそこら辺に考えが至ったようで、少し顔を青ざめさせながら僕を見上げつつ聞いてくる。

 

「……日本円で数百万は下らないと思うよ…」

 

そう答えると、ヒェ、とツルギにしては珍しくか細い悲鳴を上げた。

そんな彼の声が聞こえたシャナが、ツルギに言う。

 

「大丈夫だよ、ツルギ君。そんな事になったら、あたしが返済するから」

 

グッ、と拳を握り締める姉の肩に手を置きつつ、ユエとユタカがないないと首を横に振っていた。

 

「いや、シャナちゃん。彼女に返済させるって、それどんだけクズ男なんだって話だと思うよ…」

「そもそも、そんな国宝級の祭壇破壊したとかなったら、陛下達に怒られるだけじゃ済まないでしょ。下手したら処刑なんじゃないの?」

 

ツルギと同様か細い悲鳴を上げた姉は彼に、逃げよう駆け落ちしよう、とか馬鹿な事を言い始める。

 

「飛躍し過ぎ。これ、元々動くようになってたみたいだよ」

 

僕も祭壇を軽く押してみた。

今度は音も立てず祭壇がスーッと動き、地下への階段が現れる。

 

「固定されてたっぽいけど、ツルギが軽く触っただけで動くなんて、その固定具老朽化してたんだろうね。壊してないからそんな青ざめるな、ツルギ」

 

それにこれの返済が出来るくらい、ツルギは城から給料を貰っているはずだ。

なんて言ったって、王太子の姉であるシャナの専属護衛なのだから。

無駄遣いしてなければの話だけど。

 

「ちなみにお前…貯金いくら持ってるんだ?」

 

こっそりツルギに聞いてみる。

彼はシャナの方をチラリと見つつ、小声で

 

「銀行に預けてある金額が、この間2300万になりました…」

 

そう言った。

 

「うぇ、エグ…どんだけ高給なんだよ、うちの給料…」

 

祭壇の様子を見ようと思ったのか、シンクが僕らに近寄り、会話が聞こえたようで引いた表情をする。

 

ツルギがシャナの専属護衛になったのは、僕らが高等部一年のイフリート1の月。

それから大体2年くらいだから…。

 

「月100万給料貰ってるのか、ツルギ」

「みたいです。それに、危険手当っぽいのが、付いてまして…一応、そういうアプリが、携帯で見れます」

 

自分の携帯を取り出し、少し微妙そうな顔をするツルギ。

何だろうと思ったのだけど、ツルギの携帯を覗き込んだシンクが唖然とした顔で彼を見た。

 

「どうしたんだよ」

「いや、これ見てみろよ」

 

人の携帯覗くとかどんだけだよ、と思ったのだが、シンクが良いからと僕の腕を引っ張る。

 

「良いからって…これツルギの携帯…」

 

チラリと見た僕も、シンク同様唖然とした。

給料明細が見れるアプリをツルギは開いていたようだが…基本給何千万、諸々の税金やらを引かれ、城を破壊した時の金額も引かれて100万、らしい。

 

「何これ…」

「多分、王妃殿下か、陛下の温情かと…普通はこんなに貰えないと、カナリアさんが仰っていたので…」

 

自分の給料の話、カナリアにしたのかツルギ…。

まぁ、彼女は結構そこら辺気にしないタイプなので、話したところでカラカラ笑うだけだろうが。

 

「聞いた話、お前城の天井破壊したんだってな?」

「…本当にその節は大変申し訳なく…むしろタダ働きも覚悟していたのに…陛下達優しすぎませんか…?」

 

その分、シャナの護衛で命張れよって事なんだろうけど。

それでも、彼の基本給おかしくない?

どういう事なのか、後で母様辺りに聞いた方が良いだろうか?

 

「地下への階段があるなんて…知りませんでしたわ」

 

エレオノールさんはとても驚いているようで、階段を見つつ呟いた。

 

「そういう伝記とか、残ってはいなかったのですか?」

「いいえ、全く。中の構造も把握しておりません…私が参りますので、殿下方はこちらでお待ちになっていて下さい」

 

何かを決意したのか、彼女は僕らの横を通り過ぎ地下へ行こうとする。

しかし、シンクが腕を掴む事でその行動を止めた。

 

「いやいや、待ってくださいよ。どうしたって言うんです?」

 

鬼気迫る様子のエレオノールさんに、弟は疑問を覚えたようだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。