〈全くもう…驚いたけど嫌じゃないよ。私ね、貴方の憂いを取り除きたいし、支えたいの。貴方の行く道に、何も障害がないようにしたい。あるなら私が排除する。ね、アオ。私も大好きだよ。でも、もうそろそろ離してほしいかな。シャナちゃんが殴る準備してる〉
それを聞き、僕はユエから手を離した。
確かに、背後で魔力が練られる気配がしていたからそうかなとは思っていたけど。
「ちっ、気付いたか」
背後を振り向くと、シャナが拳に魔力を纏わせて殴ろうとしていた時だったらしく、僕と目が合い盛大に舌打ちした。
「姫が舌打ちしない。全く…あ。そうだ、シャナも教えて貰えばいいじゃん。ユエ達よりは、魔法の扱い上手いんだから」
「お前…」
何となく言った言葉に、シンクが呆れた目を向けてくる。
悪い事でも言っただろうかと、僕は弟へ首を傾げた。
「グンジョウ、流石にお姉ちゃんもどうかと思う」
「…え? ん? ごめん?」
自分じゃなくてユエちゃんに謝りなさい、と言われたので彼女の方を振り向くと、多少拗ねた顔をしたユエがいて。
自分が失言をかました事を理解した僕は、手を合わせてユエに頭を下げた。
「本当ごめんユエ!! そういうつもりじゃ…!!」
「いーよ。アオがそういう事言うの、陛下の遺伝だろうし…すみませんね、シャナちゃんより魔法の扱い下手で」
プイッ、と顔を背けて完璧拗ねてしまったユエに、僕は慌てる。
「痴話喧嘩も、陛下達そっくりですのね…」
エレオノールさん、そこで感心しないでもらえないでしょうか…。
シャナからも、ツルギ君を見習えと言われるし。
うん、そうだね…。
ツルギ無駄口叩かないもんね…。
たまに僕みたいに失言するけど。
頻度の違いってやつですかね、姉君。
全面的に僕が悪いので、ユエに謝り続けるしか僕に道はなかったのだった。
◆◆◆
何とかユエに許してもらえ、エレオノールさんが光魔法の結界をどう張るか、女性陣と興味を持ったシンクに教える事小一時間。
僕とツルギはといえば、また湧いてきたスケルトンやゾンビといった魔物を出て来るたびに倒していた。
「ツルギ君、体力大丈夫?」
「平気だ。ありがとう、シャナ。心配してくれて」
途中、撃破している僕ら…というよりも、ツルギに声をかけるシャナに、僕は若干複雑な感情を覚える。
僕には何にもないんですかね、姉君。
なんて言えるわけもなく、黙々と魔物を討伐していった。
「おーい、グンジョウ。終わったぞー」
「…お疲れ」
僕は顔から流れた汗を袖で拭いながら、シンクに労いの言葉をかける。
ユエ怒らせたからあんま喋んないようにしよう、とこっそりため息をついていると、汗を拭ったのとは逆方向の袖を引っ張られた。
そちらを見ると、心配そうな表情を浮かべるユエがいて、僕は苦笑する。
「どうしたの、ユエ?」
「あの、お疲れ様アオ。その…私、そんなに怒ってないから…アオの声聞けなくなるの、嫌…だから…」
そう言って、俯いてしまった彼女の頭を撫でた。
僕は、わかってるよ、とユエに言う。
「それでも、こんな僕を好きでいてくれる君が大好きだよ。こんな屑でごめんね、ユエ」
「アオは屑じゃないよ! 格好良くて優しくて、私を愛してくれる、大好きな王子様のような人なんだから!!」
王子様のような人、ではなく、本当に王子なんだけどな…。
まぁ、良いか。
「じゃあ、先に進みますか」
うん、と一同が頷いたのを見て、エレオノールさんが結界を張ってくれる。
いつものフォーメーションと行きたかったが、背後から奇襲されても敵わないので、僕が一番最後についた。
順番的には、僕の位置にエレオノールさんが来る形になっている。
シンクがマッピングしてくれているようだが、歩くたびにそのマップの範囲が増えていって、どういう原理なんだと弟に尋ねた。
「シンク、これ正確性は?」
「反響定位使って、マッピングしてる。あ、ツルギ。そこ行き止まりだから、右に頼む。つか、広いわここ。グンジョウ」
シンクが僕の名前を呼ぶより先に、背後から現れたスケルトンを炎魔法で消し炭にする。
やるじゃん、とシンクから褒められるが、一応耳を
褒められるような事ではない。
「今、王都だと何処ら辺くらいなのかな?」
ユタカの問いかけに、シンクは王都のマップを出して重ねる。
「今は中心街から少し離れた所だな。貴族の連中のタウンハウスがある場所」
「魔王の遺物は見つかりそうか?」
シンクはそれに対して、首を横に振った。
まぁ、そうだよな。
僕の予測ではあるがこの地下墓地、王都全体に広がっている気がするし。
「エレオノール様、後程ギルドに連絡して調査して頂いた方がよろしいかと思いますが」
「えぇ。私もそう思っておりました。瘴気の原因が魔王の遺物であれば、取り除く事で治まりもしましょうが…それでなかった場合、また別の調査が必要かと思われます。シャルさんの後継の方に調査して頂こうと思っております。ご心配おかけして申し訳ありません、グンジョウ殿下」
ニコリと僕を振り返りつつ笑うエレオノールさんに、僕も笑いかける。