my way of life   作:桜舞

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267話『ワザと?!』

隣にいたユエは、そんな僕らの様子を横目で見つつ周囲を警戒してくれていた。

 

数十分前に言った事を覚えてくれているからか、何も言ってこない。

彼女からの嫉妬は少し困る時もあるけど、でもそれ以上に嬉しいと感じる。

 

僕を想って、僕の事で怒って、僕に群がる女共に嫉妬して。

それで感情を露わにする彼女が、ユエがとても愛おしい。

 

僕は口元に手を当て、ニヤリと笑う。

本当、嗜虐心がたまに顔を出すから、困ったものだ。

 

「グンジョウ…」

「わかってるよ、シャナ。今はそんな事考えてる場合じゃないって」

 

口元から手を外し、ため息をつく。

シンクのマッピングのおかげでスムーズに進めているが、途中から瘴気が出てきて視界が遮られてきた。

 

「瘴気って真っ黒いんだねぇ。何だろ、黒煙みたいな?」

「いくらエレオノール様の結界があるからって、呑気過ぎないユタカ? 結界張ってもらって瘴気は入り込んでこないけど、本当に視界が悪すぎるんだよ?」

 

前方を歩いているユタカが、いつものようにのほほんとした口調で言うのを、ユエが咎める。

そんな妹を振り返り、ユタカは笑った。

 

「だって見た事ないんだもん。触れたら危ないっていうのは、ママやナッちゃんに教えてもらってるから理解してるけど、形状の感想くらい言っても良くない?」

「いつ魔物が出てくるか分かんないのに…って、あぁもう!! 言ってる傍から!!」

 

ユエが魔武器を取り出し、ユタカの背後に現れたゾンビを撃ち殺す。

その弾丸はユタカの頬を掠め、髪の毛を数本持っていき、彼女の頬から少し血が垂れた。

 

「ちょっとユエ?! ワザと?!」

 

ユタカは頬を押さえ、回復魔法をかけながらユエに抗議する。

シンクも少し目つきが鋭くなっており、ユエを睨んでいた。

気持ちはわかるから、僕は何も言わない。

 

「ワザとじゃない!! 射線上にユタカがいるのが悪いんでしょ?! いや、怪我させて悪いとは思ってるよ?! でもそのままだとあんた噛まれてたよ?!」

 

ユエの言い分も尤もで、ユタカは進行方向から背を向けていた。

いくら隣にツルギがいたとしても、警戒を怠ったのはユタカ自身だ。

どっちも悪い、という判断を僕は下す。

 

「グンジョウ、どうすんの」

「どうするも何も…」

 

シャナがこちらを見つつ尋ねてくる。

僕はチラリとシンクの方を見た。

もう一人の僕だからか、僕が至った思考に弟も至ったのだろう。

シンクは僕の視線に気付き、肩を竦めた。

 

「……仕方ない…あまりしたくないんだけど……ユエ、ユタカ!! そこまでにしろ!! 今が非常事態だと分からないか!!」

 

僕の叱責に、二人とも肩を震わせて恐る恐る僕の方を見る。

表情を見て察した二人は、僕に頭を下げてきた。

 

「申し訳ありません、グンジョウ殿下!!」

「仰る通りでございます…申し訳ありません、グンジョウ殿下…」

 

別に萎縮させたいわけではないんだけど、瘴気が充満してる中で喧嘩はやめてもらいたい。

それを伝えると、その通りだとまた謝られた。

 

「さっすが兄君。威厳は充分じゃねぇか」

「後でユタカのフォロー頼む。彼女の精神年齢から言って、そこまでダメージは負ってないかもしれないが、念の為な」

 

小声で返すと、おうよ、と弟は言う。

 

「ユタカ、下がれ。私と位置を交代しろ」

「えっ…あ、はい…」

 

僕は前に行き、彼女は僕と入れ違いになるように後方へ下がった。

シンクの傍なら、彼女も少しは気を張ってくれるだろうと信じて。

 

少し進むと、階下に降りる場所があった。

僕は前を見つつ、シンクに聞く。

 

「シンク、この階のマッピングは?」

「大体80%くらい。100にするまで歩くか?」

 

弟の問いかけに、僕は首を横に振った。

自分の腕につけている時計を見る。

 

昼時か…一回撤退するべきか、これ?

いや、この瘴気だ。

今はここに留まっているが、いつ開口部から噴出するか分からない。

その場合、王都中に瘴気が蔓延する事になる。

 

母様や、カヅキおばさんの手を煩わせる事になりかねない。

 

「シャナ、入り口閉じられないかな。確か開けっぱなしだっただろ?」

「え、ここから? いや、無理だよ」

 

ですよね。

みんなで戻るには時間のロスになるし。

あぁ、クソ…僕に魔力があれば…。

 

「じゃあ、私とアオで一回戻るね。シンク、位置情報の共有しておいて。すぐ戻るから」

 

考えを読んだのか、ユエが僕の手を取って引っ張り、もう片方の手でシンクと手を合わせる。

弟は仕方ないなと苦笑した。

 

「うちの兄ちゃん宜しくな、義姉ちゃん」

「任せて。アオ、行こう」

 

エレオノールさんの結界から出る。

すぐさまユエが結界を張ってくれ、皆から離れた。

 

◆◆◆

 

「ユエ、ごめん。助かったよ」

 

地下への入り口を一旦閉じ、振り返りながら僕は彼女に謝罪と礼を言う。

ユエはフルフルと首を横に振った。

 

「私も、最初にその懸念に気が付けば良かったんだけど。あと、さっきママ達にこの事伝えたから、ジルベルト卿にも話行ってると思うよ……あ、ママから返事きた。今日の礼拝は中止、サンテブルク教会は王妃様が結界張って、誰も入れないようにしてるって。何があっても良いように、だろうね」

 

流石母様。

行動が早い。

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