上がそういう状況なら、安心して戻れる。
ユエに皆の元へ戻ろうと言い、僕らは来た道を帰る。
「ユエ、シンク達は今何処ら辺にいる?」
「地下二階を進んでるみたい。マップも共有してくれてるから、すぐに追いつくよ」
今いる階も最短距離を示してくれているようで、優秀だなと感心した。
僕が魔法を使えた所で、ここまでの気遣いが出来るだろうかと考え、いや出来ないだろうな、と結論付ける。
もう一人の僕なんだけど、もう自分って感じがしなかった。
むしろ兄って感じで、もしシンクを王位継承権第一位にする、と言われても納得するレベルである。
王位に興味はない、と言っている彼だから、僕に王太子という地位を譲ってくれているような錯覚にさえ、陥ってしまう。
「アオ、また馬鹿な事考えてるでしょ」
「…表情に出てた?」
出てない、と言われて、じゃあなんで分かったんだ、思考読んだのかと彼女に尋ねた。
「読んでない。動きが鈍いんだよ、変な事考えてる時。あと目の挙動。いつもはしっかり前を見てるのに、考え事してる時別方向見てるでしょ。いや、見てるつもりで思考に耽ってるだろうから、見てないんだろうけど」
「…うちの彼女は聡明だなぁ。本当、僕には勿体無いよ君は」
へにゃ、といった感じで笑うと、ユエから腕を軽く叩かれる。
「アオ、どうせシンクが王様になったらー、とか考えてたんでしょ。そんな事、シンク自体望んでないじゃん。あれ、責任感はある方だけど結構面倒くさがりだと思うよ。シンクに王様させたら、面倒な仕事部下とか、アオとかに放り出して自分はユタカといちゃつく事しか考えないと思う」
「うーん…それ僕もだとは思うんだけどなぁ」
苦笑していたら、ユエの目つきが鋭くなった。
なんかマズい事言ったかな。
「アオは自分でどうにかしようとして、頭を悩ませて、それでどうにもならなくなったら私達に助けを求めるでしょ? シンクは違うよ。自分で最初からやろうとしない。人を使いまくって、自分は楽するタイプ。仕事を振られたらそれを全うしようとはする。自分で決めた事もやる。だけど、その中でどうやって仕事量を減らすか、って考えると思うよ。全力で取り組まない。アオとは正反対」
「…ユエ、結構人の事見てるんだね」
でも、それが王の正しい在り方だと僕は思う。
最初から自分でやろうとはしない。
人に仕事を割り振って、尚且つ臣下の話を聞き、物事を決める。
だって、父様もそうだから。
「あのさ、陛下は陛下のやり方がある。アオは、自分がやりやすいように仕事すればいいと思うんだ。その為に人を使おうが、自分で仕事を熟そうが、それはアオの自由じゃない? ダメなら私も使ってよ。王妃様からお仕事のやり方は習ってるから、さ!!」
瘴気の中から出てきた魔物を、ユエは魔武器で一掃していく。
なんか励まされてしまったが、それが嬉しくて僕は笑った。
そんな僕の表情を見て、ユエも笑ってくれる。
「君、僕が婚約者で大丈夫? 世の中にはもっと良い男もいると思うよ?」
クックッと笑いながら彼女に問うと、ユエはニヤリと笑いながら答えた。
「私はアオが良いの。アオが私を手放すならともかく、私からは絶対に離れてやんない。いくら雪那の記憶があるからって、私の本質は変わらないんだよ、アオ? 執念深いんだから、覚悟しててよね」
「それは君との付き合いで知ってるよ。あと、君を他の男にやるなんて絶対ごめんだね。君は永遠に僕のものだよ、ユエ」
笑い方を妖艶に変えてやると、ユエの笑いが引き攣ったものに変わる。
何でだよ。
「や…あの…グンジョウ殿下…その顔心臓に悪い、んですが…」
「いや、何でだよ。表情は多少変えたけど僕は僕なんだろ?」
聞くと、そうなんだけど、と言葉を濁される。
本気で分からなくて、僕は首を傾げる他ない。
階下に降りて暫く経った頃、シンク達の背中が見えてきて、僕は弟に声をかけた。
「シンク」
「おー、お帰り。案外早かったな」
お前のおかげだよ、と僕はシンクの肩を軽く叩く。
ユエは僕の横を通り過ぎ、ユタカに抱き付いた。
「わっ! 何何、どうしたのユエ?」
「ユタカぁ…」
え、なんか声泣きそうになってない?
僕何かした?
「グンジョウ、また痴話喧嘩か?」
「いや、何もしてない。彼女に笑いかけたらあんな感じに…」
どんな表情したのとシャナに問われたのでその表情をして見せたら、僕の姉弟はあー、と呆れた顔をしてユエを見た。
「いや、ごめん。鏡ないから、自分がどんな顔してるかわかんないんだけど」
「お前それ、ユエの前以外では絶対するんじゃねぇぞ。他の女共が失神する」
そんなに?!
え、本気で意味が分からないんだけど?!
困惑している僕に、シャナがユエ同様引き攣った笑いを浮かべる。
「いやー…姉弟じゃなかったら、あたしもコロっていっちゃうくらいの笑顔だよ、グンジョウ…。流石、傾国の美女と名高い母様の子だよね…」
「いや、それならシャナもだろ。僕以上に男子に告白されてただろうに」
それに、母様の事を傾国の美女呼ばわりしているのは一部の貴族連中だけで、大体は父様と並び立つ女傑と言われているのに。