my way of life   作:桜舞

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269話『シャナは、俺の』

「多分あたし以上だよ、グンジョウ。そっちの遺伝、グンジョウの方に行ったのか…」

「世が世っていうか、王子じゃなかったらアイドルで食っていけるくらいだぞ、お前」

 

同じ顔のお前が言うか、それ?!

あと僕がアイドル?

ないない。

愛想を振り撒くなんて器用な事、自分が出来るとは思えない。

王太子モードの時だって、愛想振りまいた事…いや、あるけど。

各国の要人に対してだけど。

 

「グンちゃんがアイドルなら、私目一杯推すなぁ」

 

ははは、と先頭を行くユタカが笑う。

腕に引っ付いてるユエの頭を撫でながら。

場所を交換してもらいたかったけど、ユエがあの状態なら無理かもな。

エレオノールさんと、ユエの位置が近いから。

 

「えー、ユタカ俺は?」

「うーん…シンクもアイドルかぁ。どっち、とは決められないかなぁ。両方推しちゃうかも」

 

欲張りだな、ユタカは。

二人同時に推すのか。

アイドルオタクの中には、同担拒否っていう人がいるらしいと聞いた事がある。

ガチ恋勢とか。

僕は全く理解出来ないんだけど。

そもそもアイドルとか見てるよりは、本を見てた方が好きだし。

あとユエ。

 

「あー、やな想像した…」

 

シンクがポツリと呟く。

弟の想像を僕もチラリと考えたから、苦笑する他ない。

もしもユエがアイドルをしていたら、同担拒否のガチ恋勢になっていただろうな、なんて。

 

まぁ、ユエの場合愛想なんて振り撒かず、塩対応をしていた事だろう。

いくら、仕事だからだとしてもだ。

一学年の時の話を、ユエとクラスメートだった友達に少しばかり聞いた事がある。

 

ウェイターの格好をして注文を取っていたユエだったが、タチの悪い客に絡まれた際、冷たい目をしながら言ったそうだ。

 

「なんで私が貴方達にお酌しなきゃいけないわけ? お酒の提供なんてしてないんだけど。こんな所でしか女子に声をかけられないなんて、頭イカれてんじゃないの? それに、そういうサービス受けたいんなら学校外に行ってもらえない? 女子高生にセクハラした客って事で、通報しても良いんだけど?」

 

で、逆ギレした客を叩きのめしたらしい。

僕がユタカとデート擬きをしている間にそんな事があっただなんて、ユエは一言も教えてくれなかった。

僕を心配させたくなかったからなんだろうけど。

 

「ユエに冷たい目を向けられたら死ねる…」

「アオが乗っ取られた時、私は死にそうだったけどね」

 

持ち直したのか、ユエがこちらを見ながらそう言う。

言われた僕は、思わずシャナに抱きついた。

それは僕にもダメージが来るので、やめてもらえないだろうか。

 

「いきなり抱き付かないでよ、グンジョウ。歩き辛い。ユエちゃんも、あの時凄いショック受けてたのは分かってるけど、あれグンジョウじゃなかったんでしょ? もー、痴話喧嘩やめてよ」

 

シャナが呆れた目で僕らを見たので、僕やユエは姉に謝る。

僕は姉から離れる事はしなかったが。

 

「あーるーきーづーらーいー!」

「まぁまぁ、シャナ。弟が甘えてんだから、好きにさせてやれよ。それに、背後から襲われてもグンジョウが対処してんだから、文句言うなって」

 

僕が抱きついている事によって、シャナの動きが制限されて文句を言われてしまうが、シンクが擁護してくれる。

暫くそのままで歩いていたのだが、スタスタと足音が聞こえ、僕の腕に誰かが触れた。

 

顔を上げるとその足音はツルギだったようで、凄く複雑そうな顔をしながら僕に言う。

 

「あの、殿下。姉弟仲が良いのは、その、とても良い事…なんですけど…あの……シャナは、俺のなんで!! あまり、ベタベタしないで貰えないでしょうか!!」

「え…あ、ごめん…」

 

僕はツルギに謝り、シャナから離れた。

 

ツルギも嫉妬するんだ。

それに、そんな声量聞いた事ない。

なんか悪い事したな…。

こんなに引っ付くのなんて、僕らの間じゃ当たり前だったから。

 

だって双子だし。

そういう風に、母様から育てられたし。

愛情表現を示すならハグよ、なんて母様いつも言ってるし。

 

「ツ、ツルギ君…俺のって……ごめん、照れる…!」

 

シャナはシャナで、ツルギからの言葉に顔を真っ赤にし、手で顔を覆ってしまう。

 

「皆様仲が宜しくて、私も胸が暖かくなりますわ。でも、急いだ方が宜しいかと進言致します。こんな状態でなければ、もっと見ていたいのですけれど…水を差してしまってごめんなさい」

「いや、むしろ謝罪しなければならないのはこちらの方です、エレオノール様。お気持ち感謝致します。みんなごめん、僕が言うのもなんだけど気を引き締めて進もうか」

 

クスクス笑いながら注意してくれたエレオノールさんに感謝しつつ、僕は手を叩いて皆に言う。

それに対して、皆は真剣な表情になり頷いてくれた。

 

◆◆◆

 

何回降ったか分からないくらい結構な時間歩き、少し疲労が出てきたかなと思ったその時。

急に開けた場所に出た。

 

そこは礼拝堂の様で、机の上に鎮座している台座の上に開かれた扇のような物が見える。

この瘴気の中で、それだけがはっきり見えていた。

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