my way of life   作:桜舞

27 / 408
27話『気にするなって言われてもするんだよ』

「長くなりそうだし、ここ凄い事になってるから僕の部屋行こうか…」

 

夕飯も食べ損ねたし。

僕の部屋で改めて頂く事にしよう。

 

◆◆◆

 

そういえばシャナに相談したい事があったのに、あの騒動のせいで相談出来ず終いだったな、なんて頭の片隅で考える。

 

目の前には綺麗な所作でご飯を食べているユエがいた。

本当、どれだけお祖母様に鍛えられたのだろうか、彼女は。

 

「ユエ、泊まって行くだろ? 部屋はどうする? 客室使う?」

「隣の部屋でも構いませんよ、殿下。お許しいただけるなら、そこのソファーでも構いませんが」

 

ユエが指差した方向にあるソファーは、確かに女の子一人寝そべれそうなくらいに大きい。

 

「隣の部屋…シャナの部屋だな。僕角部屋だし、勝手にシャナの部屋使うのもどうかと思うし…いや、女の子をソファーに寝かせるのもどうかと思うけど」

「気にしないので、殿下もお気になさらず」

 

気にするなって言われてもするんだよ、ユエ?

 

僕は部屋の入り口に立っているクロノスを見る。

彼女は僕の目線を受けて、首を傾げた。

 

「ご令嬢は…殿下の専属護衛ですので。別に一緒の部屋でも、構わないのでは…?」

「それはそうなんだけど…」

 

父様の護衛だった母様は、父様と一緒の部屋で寝起きしていたという話だったし。

別にやましい気持ちにはならない…はず。

 

「床でもいいですけど」

「ユエ、ちょっと黙っててくれる?」

 

はい、と言ってユエは口を噤んだ。

クロノスが部屋にいるから、ユエも他人行儀になっているのに今更ながらに気づいた僕は、食器を片付けてくれているクロノスに、そのまま下がってもらうようお願いした。

 

クロノスが遠ざかったのを確認して、僕はユエに尋ねる。

 

「本当にどうするつもり? 流石に同衾は…」

「わかってるよ、アオちゃん。私ここにいたら、アオちゃん気を使っちゃうでしょ? 外にいるから、ゆっくり休んで」

 

そう言って、ユエは笑いながら部屋の外に出て行こうとした。

それを腕を掴んで、止めた。

 

「いや、どこ行こうって言うの」

「? 部屋の外で待機するだけだよ? ほら、私転生者同士の娘だから、結構体頑丈なの。この間、ユタカとどれくらいまで起きられるか勝負した時なんて、三日くらい起きてても平気だったし…あの、アオちゃん。手、離してくれない?」

 

困ったように笑うユエに、僕は少しイラつく。

こんな感情、僕らしくもない。

 

同衾とか、視線とか、もう知らない。

 

僕はユエの腕を掴んだまま、ベッドに連行して彼女をそこへ転がす。

軽く悲鳴をあげたユエだったが、僕が覆い被さって抱きしめると体を固くしてしまった。

 

「あの、アオちゃん、これは…!」

「黙ってろ。大人しく抱き枕になって眠れ、ユエ」

 

リモコンを使って、部屋の電気を消す。

少し身動きしていたユエだったが、諦めたかのように僕の背中に手を回してきた。

 

「アオちゃん…明日後悔すると思うんだけど…良いの?」

「明日の僕が考える事だ。それに、イフリートの月とはいえ、夜は冷える。女の子を外に出していたなんて、人として男としてどうかと思うだろ」

 

ユエの甘い匂いが、鼻腔をくすぐる。

柔軟剤の匂いなのか、彼女自身の匂いなのかわからなかったが、心が安らいでいく。

それと同時に眠気も来て、僕は彼女の頭に頬擦りした。

 

「アオちゃん…くすぐったいよ…」

「ごめ…」

 

ユエに謝っている途中で眠気がピークになり、僕は意識を手放した。

 

◆◆◆

 

アオちゃんが眠ったのを確認した私は、彼を起こさないようにゆっくりと彼から離れる。

驚き過ぎて、平静を保つので精一杯だった。

 

「ユタカなら、すぐアオちゃんと既成事実作ろうとするんだろうな…」

 

眼鏡もそのままに寝てしまったアオちゃんから、眼鏡をとってサイドテーブルに置く。

そして、前髪を少し掻き上げた。

 

寝顔は幼くて、いつもの格好良い彼からはあまり想像出来ない。

それは、前もだったっけ。

 

「ねぇ、夕陽君。私、今回も貴方と結ばれなくても、平気だよ。貴方が誰を好きになって、誰と結ばれても、私は笑って送り出すから。だから、長生きしてね…」

 

目の前がぼやける。

本当の気持ちとは逆の事を言ってる自覚はある。

本当なら、私と結ばれてほしい。

前みたいに、一緒にいたい。

 

でも、今回の彼は記憶なんてものは皆無で。

私も黙っていようと決めた。

 

涙が溢れる。

それを服の袖で拭った。

 

「大丈夫。私は大丈夫。アオちゃんが好きなのも、我慢できる。笑える。世界最強の、立花夏月の娘なんだから…」

 

そう自分に言い聞かす。

アオちゃんに布団をかけ、私はソファーに座り目を閉じた。

朝起きたアオちゃんに叱られそうだけど、既成事実なんてものは皆無でしたよ、って示さなければ。

王太子で、次期王である彼の人生の邪魔をしてはならない。

自分は、アオちゃんの専属護衛であって婚約者ではないのだから。

 

「大好き、アオちゃん」

 

私の呟きは、夜の静けさに溶け込んで消えていった。

 

◆◆◆

 

朝の日差しで、目を開ける。

昨日の出来事を思い出し、僕は飛び起きた。




グンジョウの脳内cvは寺島拓篤さんです
(烏滸がましいにも程がある
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。