「長くなりそうだし、ここ凄い事になってるから僕の部屋行こうか…」
夕飯も食べ損ねたし。
僕の部屋で改めて頂く事にしよう。
◆◆◆
そういえばシャナに相談したい事があったのに、あの騒動のせいで相談出来ず終いだったな、なんて頭の片隅で考える。
目の前には綺麗な所作でご飯を食べているユエがいた。
本当、どれだけお祖母様に鍛えられたのだろうか、彼女は。
「ユエ、泊まって行くだろ? 部屋はどうする? 客室使う?」
「隣の部屋でも構いませんよ、殿下。お許しいただけるなら、そこのソファーでも構いませんが」
ユエが指差した方向にあるソファーは、確かに女の子一人寝そべれそうなくらいに大きい。
「隣の部屋…シャナの部屋だな。僕角部屋だし、勝手にシャナの部屋使うのもどうかと思うし…いや、女の子をソファーに寝かせるのもどうかと思うけど」
「気にしないので、殿下もお気になさらず」
気にするなって言われてもするんだよ、ユエ?
僕は部屋の入り口に立っているクロノスを見る。
彼女は僕の目線を受けて、首を傾げた。
「ご令嬢は…殿下の専属護衛ですので。別に一緒の部屋でも、構わないのでは…?」
「それはそうなんだけど…」
父様の護衛だった母様は、父様と一緒の部屋で寝起きしていたという話だったし。
別にやましい気持ちにはならない…はず。
「床でもいいですけど」
「ユエ、ちょっと黙っててくれる?」
はい、と言ってユエは口を噤んだ。
クロノスが部屋にいるから、ユエも他人行儀になっているのに今更ながらに気づいた僕は、食器を片付けてくれているクロノスに、そのまま下がってもらうようお願いした。
クロノスが遠ざかったのを確認して、僕はユエに尋ねる。
「本当にどうするつもり? 流石に同衾は…」
「わかってるよ、アオちゃん。私ここにいたら、アオちゃん気を使っちゃうでしょ? 外にいるから、ゆっくり休んで」
そう言って、ユエは笑いながら部屋の外に出て行こうとした。
それを腕を掴んで、止めた。
「いや、どこ行こうって言うの」
「? 部屋の外で待機するだけだよ? ほら、私転生者同士の娘だから、結構体頑丈なの。この間、ユタカとどれくらいまで起きられるか勝負した時なんて、三日くらい起きてても平気だったし…あの、アオちゃん。手、離してくれない?」
困ったように笑うユエに、僕は少しイラつく。
こんな感情、僕らしくもない。
同衾とか、視線とか、もう知らない。
僕はユエの腕を掴んだまま、ベッドに連行して彼女をそこへ転がす。
軽く悲鳴をあげたユエだったが、僕が覆い被さって抱きしめると体を固くしてしまった。
「あの、アオちゃん、これは…!」
「黙ってろ。大人しく抱き枕になって眠れ、ユエ」
リモコンを使って、部屋の電気を消す。
少し身動きしていたユエだったが、諦めたかのように僕の背中に手を回してきた。
「アオちゃん…明日後悔すると思うんだけど…良いの?」
「明日の僕が考える事だ。それに、イフリートの月とはいえ、夜は冷える。女の子を外に出していたなんて、人として男としてどうかと思うだろ」
ユエの甘い匂いが、鼻腔をくすぐる。
柔軟剤の匂いなのか、彼女自身の匂いなのかわからなかったが、心が安らいでいく。
それと同時に眠気も来て、僕は彼女の頭に頬擦りした。
「アオちゃん…くすぐったいよ…」
「ごめ…」
ユエに謝っている途中で眠気がピークになり、僕は意識を手放した。
◆◆◆
アオちゃんが眠ったのを確認した私は、彼を起こさないようにゆっくりと彼から離れる。
驚き過ぎて、平静を保つので精一杯だった。
「ユタカなら、すぐアオちゃんと既成事実作ろうとするんだろうな…」
眼鏡もそのままに寝てしまったアオちゃんから、眼鏡をとってサイドテーブルに置く。
そして、前髪を少し掻き上げた。
寝顔は幼くて、いつもの格好良い彼からはあまり想像出来ない。
それは、前もだったっけ。
「ねぇ、夕陽君。私、今回も貴方と結ばれなくても、平気だよ。貴方が誰を好きになって、誰と結ばれても、私は笑って送り出すから。だから、長生きしてね…」
目の前がぼやける。
本当の気持ちとは逆の事を言ってる自覚はある。
本当なら、私と結ばれてほしい。
前みたいに、一緒にいたい。
でも、今回の彼は記憶なんてものは皆無で。
私も黙っていようと決めた。
涙が溢れる。
それを服の袖で拭った。
「大丈夫。私は大丈夫。アオちゃんが好きなのも、我慢できる。笑える。世界最強の、立花夏月の娘なんだから…」
そう自分に言い聞かす。
アオちゃんに布団をかけ、私はソファーに座り目を閉じた。
朝起きたアオちゃんに叱られそうだけど、既成事実なんてものは皆無でしたよ、って示さなければ。
王太子で、次期王である彼の人生の邪魔をしてはならない。
自分は、アオちゃんの専属護衛であって婚約者ではないのだから。
「大好き、アオちゃん」
私の呟きは、夜の静けさに溶け込んで消えていった。
◆◆◆
朝の日差しで、目を開ける。
昨日の出来事を思い出し、僕は飛び起きた。
グンジョウの脳内cvは寺島拓篤さんです
(烏滸がましいにも程がある