my way of life   作:桜舞

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270話『母様案件』

「あれだね」

 

シャナがリブロを開き、扇を睨みつける。

禍々しさが離れた所にいても感じ取れ、僕らは警戒を強めた。

 

「あれじゃあ、封印したくもなるよな…」

「確かに。普通に壊せると思う? シンク」

 

弟が冷や汗をかきながら、扇から目を離さず言う。

ユタカも魔武器を構え、シンクに尋ねた。

 

「わかんねぇ。でも、壊さなきゃいけないのは分かるわな…」

「アオ、撃っていい?」

 

ユエが魔武器を遺物に向けながら、僕に判断を仰いでくる。

この中で中遠距離攻撃が出来るのは、ユエしかいない。

僕は頷き、念の為シャナにリンクを繋いでもらう。

 

「やれ、ユエ」

「はい!!」

 

僕の合図でユエが魔武器を撃った。

カーンと甲高い音がして、弾丸が扇に当たる。

だが、ただそれだけだ。

 

扇に当たった音だけで、何も変化は起こらなかった。

 

「防衛装置はなし、か…」

「あるわけないでしょ? だって私がいるんだもの」

 

僕の頭上から声がする。

反射的に剣を振るうのと、ユエが魔武器を撃つのは同時だった。

 

「ひどーい。体がボロボロになってしまったわ」

 

顔を上げると金髪に、赤目の綺麗な女性がいて。

しかし、気配はあの魔王の遺物と同じく禍々しかった。

体が、とか言ってる割には僕らの攻撃は無かった事になっているようで、傷一つなどついておらずニコニコと笑っている。

 

「おいおい…マジかよ…」

「これ母様案件だよグンジョウ!!」

 

シンクが唖然としながら呟き、シャナが悲鳴じみた声を上げる。

母様案件…つまりは、僕らの手に負えないという事だ。

 

「やってみなければ、分からないと…思います、殿下」

「………」

 

ツルギの言い分もわかるが、対峙していて理解出来るものもある。

こいつは、遺物の精みたいなものだ。

昔、母様が対峙したという魔玉にもいたと言う。

 

「シンク、どうする?」

「撤退を推奨したいね。瘴気が濃くなって来やがってるし、そのせいで魔物も発生してる。囲まれたら、

エレオノール様守りながらってのはキツいぞ」

 

僕も同じ考えではある。

しかし、僕らが危険に陥っているのなら、母様が転移なりしてすぐ来るはずだ。

カヅキおばさんを伴って。

 

それだけ、母様は自分と父様の子供達を愛してくれている。

それが無いという事は、僕らだけで対処が可能だと判断を下したという事だ。

 

もしくは、僕らを成長させる為にカヅキおばさんに止められているか。

そのどちらかだろう。

 

「…シンク、可能な限り戦闘を行う。無理だと思ったら、撤退の指示を出してくれ」

「マジかよ兄ちゃん。まぁ、母様が来ない時点でそういう判断になるよな……

お前ら!! 気合い入れろ!! これは魔王への戦闘訓練の一環だと思え!!

ただし、負けたら死ぬ!! 

それは頭に入れとけ!!」

 

シンクの号令に、ユタカとツルギが遺物の精に攻撃を仕掛ける。

僕は脚力強化で扇の所まで駆けようとしたが、体に何かが纏わり付いた。

 

「だーめ。行かせないわよ」

「…ユエ!!」

 

遺物の精がもう一体出てきたようで、二人と戦闘しているのとは別に、僕の体を拘束しているようだ。

僕は遺物を破壊するようユエに声をかける。

 

「ダメっ!! 近付けない!!」

 

瘴気から出てきた魔物を相手にしているようで、ユエもその場から動けないようだった。

シンクやシャナも、エレオノールさんを守りながら戦っているようで、その場に留まっている。

 

「ふふふ。万事休すって、この事を言うのかしらね?」

 

僕に纏わり付きながら、精が笑う。

先程から抗おうと踠いてはいたが、ビクともしない。

昔聞いてた父様状態だな、これ。

 

「随分お喋りだな、お前……シャナ!!」

「良いよ!! 使って!!」

 

シャナの魔力を僕の中に取り入れ、魔力回路をガンガン回す。

ブランシュとノワールを呼び出し、僕ごと精を斬り刻んだ。

 

「アオ?!」

 

僕の状態を見てユエが悲鳴を上げる。

しかし、シャナの魔力を使って僕の体に時魔法を使用していたおかげで、血は吹き出したものの体は無傷だ。

 

「動揺するなユエ!! 集中しろ!!」

「っ! …はいっ!!」

 

魔法も駆使して、魔物を掃討しているユエの横を脚力強化で走り抜け、扇に近付く。

エレオノールさんも参戦してくれているようで、瘴気から魔物が現れても、それ以上増える事はなかった。

 

「っ、やらせない!!」

 

遺物の精が、扇に近付く僕を攻撃しようとする。

しかし僕はそちらを見ず、ただ片腕を上げた。

 

五重元素(フィフス・エレメント)五重奏鎮魂歌(クインテット・レクイエム)発射(フォイア)

 

四大元素と無属性が組み合わさった魔法を、精に放つ。

シャナとリンクを繋いでいるからこそ出来る芸当ではあるが、本当うちの姉君規格外過ぎないか?

僕がこんな魔法使っても、シャナの方にはダメージ一つ残らないんだから。

 

「ぐぅ…っ?!」

 

物凄い爆音が礼拝堂内に響く。

精の苦しむ声が聞こえたが、僕は構わず扇へノワールを叩きつけた。

 

「壊れろぉぉぉぉっ!!!」

 

ピシッ、と扇にヒビが入り、力任せに叩きつけたお陰か粉々に砕け散る。

精の悲鳴と共に、瘴気が徐々に晴れていった。

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