my way of life   作:桜舞

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273話『病んでる』

「ユエ、部屋に帰ろっか。用事は済んだし」

 

手に噛みついている彼女は、僕を睨みながらも一緒に部屋へ帰ってくれる。

部屋に戻り、ソファーへ一緒に座った。

 

甘噛み程度であまり痛くはないけど、正直この体勢は少しキツイなと感じてくる。

 

「ユエ、口離してくれない?」

 

そう言うと、彼女は素直に離してくれた。

あ、そこは離すんだと多少驚く。

腕は相変わらずだけど。

 

暫く無言でいたが、ユエの頭がうつらうつらと揺れ始めた。

眠くなってきてるな、と僕は彼女を眺めつつ思う。

 

「ユエさん、まだ夕ご飯の時間になってませんが」

「……わかってる」

 

それにしては船を漕ぎ始めているようですがね。

 

一応寝るなとは釘を刺してはみるが、もう一度わかってると返答した彼女は、そのままポスンとソファーに突っ伏し、寝息を立て始めた。

 

「あー…寝ちゃった…」

 

僕は彼女を抱き抱え、自分のベッドに横たえる。

そのまま、上掛けをかけてあげた。

僕の匂いがするからか、ユエは無意識で上掛けを抱きしめ、幸せそうに微笑んでいる。

そんな彼女の頬を撫でた。

 

「ユエ、ごめんね。不安にさせて。でも、僕は君を置いて逝ったりはしない。君の望みは出来得る限り叶えてあげたいから。ね、ユエ。愛してるよ」

 

僕はユエに覆い被さり、その唇を奪う。

唇を離して彼女の様子を見るが、熟睡してしまっているようで起きる気配が全くない。

 

まぁ、精神的ショックを受けた後だから仕方ないにしても。

 

「あまり眠り姫だと、襲うぞー…」

 

彼女の耳元で囁いてみる。

や、と一言だけ発し、ユエは僕から背を向けるように寝返りを打った。

 

や、だって。

可愛い…っ!!

僕の彼女超絶可愛い!!

いつも可愛いけど、寝てる時はひたすら可愛い!!

 

眼鏡ごと顔を覆い、仰け反る。

ユエが可愛過ぎて辛い。

何だっけ、ヲタクの友達が言ってた言葉。

尊いだっけ。

 

尊みが凄い…!!

ユエまじ天使、女神!!

最高!!

 

ユエには悪いと思ったが、寝顔の写真を一枚撮らせてもらう。

バレたら怒られるのは確定しているが、待ち受けにさせてもらおうと思った。

 

◆◆◆

 

後日、僕の報告書とエレオノールさんからの報告書を読んでいた父様が、少し眉を寄せてため息を吐く。

とても頭が痛そうにしていて、僕の報告書何か拙い事書いたかな、と少し不安になった。

 

「あの、陛下…」

「別にお前のやつに不備があったわけではないから、不安がるな。自信を持て、グンジョウ。そこは本当シャルに似たな、お前」

 

むしろ、微笑を浮かべたら母様そっくりらしいですよ、父様。

 

なんて言えるはずもなく、僕は苦笑いを浮かべる。

 

「で、どうかしたんですか?」

「エレオノールの方の報告書を読んでいたんだが、あの地下墓地? 建国当時からあったものらしい」

 

建国当時というと、今から526年前か。

結構古かったんだな、あそこ。

 

「その頃の魔王はまだ、魔術師として活躍していた時だったか。当時の王を妬み、王妃を愛し、どうにか王妃の愛を得られないかと、邪神に祈る為にあの場を作ったそうだ。シャルやカヅキ程ではないが、時魔法の使い手がギルドにいるそうでな。そこにあった書物を復元し、古代語の専門家が読み解いたそうだ」

「あそこに魔王の遺物があったのも、その為でしょうか?」

 

父様が手元の報告書をパラパラと捲り、一枚の紙を僕に差し出してくる。

受け取ってその報告書を読むと、あの扇は鉄扇だったらしいのだが、その鉄扇の持ち主が教会関係者だと判明した、と書いてあった。

 

名前はライネクス・アロー。

修道女にも関わらず背信者だったそうで、あの地下の礼拝堂を見つけ、酒池肉林の限りを尽くしたと。

 

一応詳しくは書いてあったけど、ちょっとだけ読んで気分が悪くなり、僕は報告書を父様に返す。

というか、よく書けたなエレオノールさん。

父様達への忠誠心から、詳しく書かねばと思ったのか知らないが、生々し過ぎる。

 

こんな女性が今の時代にいなくて良かったと、本気で思った。

そして、父様があんな顔をしていた理由も理解出来る。

見てて頭痛くなるもんな、これ。

 

「あの場所、どうなさるおつもりで?」

「あそこはジルベルトの管轄だ。王家の出る幕ではない。どうするかは、あの家が決める事だ」

 

まぁ、それはそうかと納得し、僕は父様の執務室から辞させてもらう。

執務室の外に出ると、ユエが窓際に立って僕を待っていた。

 

「お待たせ、ユエ。大丈夫?」

「ん…」

 

ユエが僕へ腕を差し出してくる。

僕は苦笑し、お姫様抱っこで彼女を抱き上げた。

 

あの日以来甘えん坊になってしまったユエは、事あるごとに僕へ自分を抱き上げるよう、要求してくる事が多くなった。

これで彼女の傷が癒えるならと、ユエからの要求は全て飲んでいる。

 

別にイチャつく濃度が上がったくらいだし、前のユエなら人前で抱き上げたら降ろせと慌てていたので、僕はどちらかと言えば今の方が良い。

 

「ユエ。何処か行きたい場所はある?」

「アオと二人きりになりたい。静かな場所で、二人きりで過ごしたい」

 

ちょっと病んでるのは、まぁ…僕のせいなので。

元気になるまでは、こうやってイチャつこうと考えた。

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