my way of life   作:桜舞

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274話『迂闊な発言をするな』

イフリート1の月。

いつも通り学期末テストでの成績順位が張り出され、僕はいつもの如く学年一位になってはいたが、次席がシンクなのに驚く。

隣で同じく順位表を見上げていた弟に、僕は尋ねた。

 

「今回調子悪かったのか?」

「んー? まぁ…ちょっとな。お前の本好きと一緒だよ。ちょっとカヅキおばさんの研究室に出入りしててさ。それを言い訳にするつもりは全くないけど、おばさんが考えた魔導工学の理論とかが面白くてな。論文とか読んでたら、勉強すんの忘れた」

 

それで次席なのも凄いんだけどな。

ちゃんと授業は聞いてて、内容を覚えてたって事なんだろうけど。

本当、僕より王に向いてるよシンクは。

 

「アオ」

 

ユエの声がして、次いで背中に誰かが引っ付く感覚を覚える。

少しだけ振り向くと、黒髪が見えたので僕は苦笑した。

 

「どうしたの、僕のお姫様。教室に僕がいなくて寂しくなった?」

 

そう聞くとユエは少し僕から離れたので、ちゃんと彼女の方に振り向いて、顔を覗き込む。

少し俯いていたユエは、コクリ、と頷いた。

 

今日はポニーテールではなく、普通に髪を下ろしているので少し表情が見えにくい。

先月から、僕のせいで少し元気がなくなってしまったユエに対して、僕はずっと傍にいる事で安心させようと務めてはいたけど…これ、カヅキおばさんのみならず、ユーリおじさんからも殺される案件ではないかと、ここ最近考えるようになってきていた。

 

流石に休みの日はずっと一緒にいられるけど、授業がある日はそうもいかないので、それはユエに申し訳ないと思う。

 

「…シンク、もし僕が立花の二人に粛清されたら…あと頼んだ」

「ばっか、お前! ユエの前でんな事言ったら…!!」

 

シンクが注意がてら僕の肩を叩いてきた。

迂闊な発言をするな、という事なんだろうけど。

 

ユエは僕に抱きつき、小さい声で、やだ、と呟いた。

制服も少し濡れて来ているので、また泣かせてしまったようだ。

 

「あー…ごめんユエ。泣かないで。君がこの状態なのに、僕の事殺…しはしないだろうけど、性格は改変してくるかなぁ…」

 

彼女を抱きしめ、その頭を撫でる。

またシンクから肩を叩かれたので、僕はそれ以上何も言わず天を仰ぎ見た。

 

「あー、ユエここにいたんだ。まぁ、グンちゃんここにいるかもよ、って言ったのは私だけど」

「ユタカ、どうかしたの?」

 

人混みを掻き分けてユタカがこちらに来ているのを見つけ、僕は彼女に尋ねる。

後もうちょっとという所で彼女はシンクに腕を引っ張られ、弟の腕の中に閉じ込められた。

 

「んふふ、ありがとうシンク」

「お前華奢なんだから、あのままだと潰されそうだと思っただけだよ」

 

そのままイチャつき始めたので、僕はもう一度ユタカに同じ質問をする。

そうそう、と彼女は僕を見つつ苦笑いをした。

 

「いつも私達、夏休みになったらトリスタンの別荘に行ってたじゃない? 今回、グンちゃんとユエは城にお留守番だって。残すからって、ユエに手を出すんじゃないぞってママが」

「いや、出さないけど。え、なんで?」

 

シンクとユタカの目線が、ユエに注がれる。

彼女は僕に抱きついたまま微動だにしない。

一ヶ月で何とかしろって事かと、僕は肩を竦めた。

 

「わかった。シンク、シャナ頼んだ」

「頼まれなくても、好き勝手やるだろあいつ」

 

その好き勝手が問題だから、頼んでるんだけどな。

はしゃぎ過ぎて何をやらかすかわからないシャナだからこそ、しっかり姉の手綱を握っててもらわないと。

 

◆◆◆

 

夏季休暇に入り、皆が城から出発したのを見送った僕とユエは、そのまま手を繋ぎ、城の中を散歩する。

リヒト城は結構広いから、城の中を見て回るだけでも三日くらいはかかるだろう。

夏だから暑いはずなのに城の中は温度調整がされており、半袖を着てても涼しいと感じるくらいの適温にされている。

これも全て、母様の事を考えて結界の調整をしたおばさんの労力の賜物だ。

 

悪態を吐く割には、母様の為なら何でもやるんだよなおばさん。

 

「ユエ、今日の服可愛いね。いや、君は何着ても可愛いし、君自身も超絶可愛いんだけど」

 

黒いゴスロリを着て、同じく黒だけどワンポイントでレースがあしらわれているようなブーツは彼女にとても似合ってて、可愛いと思った。

 

「………アオ、こういう系好き?」

 

髪もツインテールにしてて、髪飾りに付けているリボンにあしらわれたイミテーションの石は蒼色だった。

僕の色をつけてくれている彼女が、本当に愛おしい。

 

「んー…前も言ったけど、僕はその人が似合う格好なら何着てもいいとは思ってるよ。ユエが着飾ってくれるのが、僕は本当に嬉しいし、それが僕の為なら尚更嬉しい。ユエ、好きだよ。君を愛してる」

 

ニコリと微笑みながら彼女を口説くと、少しムッとされた。

本心を口にしたんだけど、ユエにはお気に召さなかったらしい。

 

「私を愛してるとか言ってるくせに、自分が死ぬような事ばっかやってるアオの言葉、信じらんない」

「あー……うん。そうだよねぇ……そこに怒ってるんだもんね、君……」

 

手を繋いでるユエの握力が少し強まり、ちょっとだけ痛いと感じる。

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