my way of life   作:桜舞

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275話『信じらんない』

分かっているのなら、何故やるのかと彼女の目は語っていた。

 

最善策だと思ってやった事が、ユエを傷つけているのは知ってる。

それでも、あれ以上の策は出せないと感じたからこそ、僕はあの選択をした。

おばさん達からしたら、愚策だろうとは思うけど。

自分の力量を分かっているから、あんな事をしたのだ。

 

「ユエ。前も言ったけど、同じ状況になったら僕は迷わず同じ事をする。それが最善だと思ったのなら、必ず。だけど、死ぬつもりはない。君を残して逝くなんて事、絶対にしない。約束する」

「…信じらんない」

 

ですよね。

 

でも、言った通り死ぬつもりは全くないし、ユエを置いて逝くなんて真っ平ごめんだ。

それでも、自分を犠牲にしなければ勝てないような状況なら、僕はいくらでも自分の身を傷つけるだろう。

 

それは覚悟しててもらいたいんだけどな。

 

「自分を犠牲にしなくていいと、私は思う。私達は、そんなに頼りない?」

「頼らせてもらってるよ。使える時は君達だって使う。それでも、僕だけでどうにかなるならそうするだけだ。納得出来ない?」

 

そう聞くと、頷かれた。

僕は苦笑しながら、彼女と一緒に城の中をあてもなく歩く。

 

手を振り解かれていないから、僕に対してそれ程怒っているわけではないのは、わかるのだけど。

ユエは僕に傷を負って欲しくはないと、願うのだろうな。

 

彼女の願いは叶えてあげたいけど、こればっかりはなぁ…。

 

自分の技術をもっと磨けばいいのだろうけど、それでも敵わない相手と対峙した場合、皆は僕を逃すと言う。

だが、僕は皆がいない世界…特にユエがいない世界などに興味はない。

生きてさえいたくない。

 

なら多を残し、一が死んだ方が効率がいいのではないかとさえ思ってしまう。

 

「アオ」

 

ユエから厳し目の声が上がる。

僕を睨みつけるように見る彼女へ、微笑んだ。

 

「思考読むなってば。あと、そんな顔しても可愛いだけだぞユエ」

「ふざけないでよ」

 

あー…これ完璧怒らせたな。

魔力波が立ち昇ってるし。

 

「ごめん」

 

僕は両手を上げ、彼女に降参の意を示す。

 

「謝っても許さないから。さっきから何なのアオ。アオを残すのは、ママや王妃様、私達の総意だよ。アオが残ってくれていれば、次に繋げられるから…」

「それはリーゼやアンナ、ラゼッタでも良いはずだ。事の詳細を知りたいと言うのなら、僕でなくとも転移が出来るシャナやシンクでも、君達姉妹でも良いはずなんだ。僕を残す意味なんかない。ユエ。僕は王太子ではある。でも、どうしても僕でなければならないなんて事はないんだ。代わりなんていくらでもいる。それこそ、両親がまだ若いから跡継ぎなんていくらでも産める……あぁ、泣かないでユエ。別に死にたいわけじゃないんだよ。それでもそんな事態になったら、僕は君と一緒に死ぬよ。君を置いてなんて逝かない。むしろ、僕を置いて逝かないでユエ」

 

泣き始めてしまった彼女の頬を両手で包み、額を合わせる。

暫く泣いていたユエだったが、ポツリと呟いた。

 

「アオ、お願いがあるの」

「ん? 何?」

 

ユエが僕の両手を掴んで、真剣な顔で言う。

 

「痛覚共有の呪いかけていい?」

「いや何でだよ?!」

 

しかも呪い?!

そんなの何処で習ったの君?!

 

近くで叫んだものだから、ユエが顔を顰めた。

しかし、そんな事を言った彼女が悪いので、僕は謝るつもりはない。

 

「アオに痛い思いをさせるんじゃなくて、私にアオが感じてる痛みを共有するっていう…」

「ますます駄目なんだけど?! いや何でそんな話になるわけ?! 僕の痛みを君に共有する?! いや、無理、やだ、絶対嫌だ!!」

 

彼女から手を離し、僕は思い切り首を横に振る。

勢いで眼鏡が吹っ飛んだけど、今はそんなものに構っている暇はない。

何とかして諦めさせなければ。

 

「アオ、そうやって制限かけないと自分だけで良いから、って言って死にそうなんだもん。私と痛覚が共有されてるから、無茶しようとは思わないでしょ?」

「だからって…!! それに、死ぬつもりはないって言ってんだろ?!」

 

ユエの肩を掴み、そう大声で怒鳴る。

だが彼女は僕の口に指を添えて、微笑んだようだった。

 

「アオとお揃いを増やすだけだよ。さっき言った事もそうだけど、どうやったらアオが自分を犠牲にしないで戦えるかって、ママに相談したの。そうしたら、この呪いを教えてくれた。普通のよりもとても重いんだって。普通のは確かに痛覚は共有されるけど、死ぬような痛みとかは共有されないんだって。これは、相手が死んだら自分も死ぬようなもの。ね、アオ。私と一緒に死んでくれるんだよね?」

「ユエ…」

 

僕は深いため息をつき、俯く。

 

「君、そんなに病んでたのか…」

「窮余の一策って言ってくんないかな。それに、アオがそんな行動をしなければ、私だって考えもしなかったよ。私がアオのブレーキ役になる。それでも相手が強大すぎて、私達が束になっても敵わなくて…アオが覚悟を決めたのなら、私は貴方と運命を共にする。今世で添い遂げられなくても、来世で添い遂げよう? アオ」

 

多分いつもの笑顔を浮かべているんだろうけど、眼鏡がないせいで見えない。

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