my way of life   作:桜舞

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276話『アオの携帯の待ち受け』

僕はまたため息をつき、眼鏡が吹っ飛んだであろう方向に歩き出す。

 

「アオ、眼鏡こっち」

 

僕が歩き始めたのとは逆方向にユエが駆け、何かを拾い上げる動作をしたかと思えばすぐに僕へ駆け寄ってきた。

僕の手に眼鏡を握らせてきたので、それをかける。

 

「痛覚遮断、シャナに習っといた方が良いかな…」

「あー…毎月大変そうだもんね、シャナちゃん。いやいや、アオ。知ってたら使ってると思うんだけど…」

 

そう言えばそうか。

母様が僕とシャナを産む時以外は、全て痛覚遮断使って産んだとか言ってたから、てっきりシャナも知ってるものだと思ってたんだけど。

 

「シャナの場合、記憶から抜け落ちてる可能性も、なきにしもあらずだけど」

「有りそう…」

 

ユエの呟きに、彼女の方を見る。

お互い顔を見合わせた後、ぷっ、と吹き出した。

そのまま、暫く笑い合う。

 

やっと元気になってくれたようで良かったけど…多分、この後さっきの話をもう一度されるんだろうな、と思った。

 

◆◆◆

 

学生の本分は勉学である。

 

なんて、何処ぞの偉い人が言ったとか言わなかったとか。

 

ユエから痛覚共有の話をもう一度されたので、とりあえず昼食を取ってから夏季休暇の課題を終わらそう、と提案した。

そして僕らは、王宮内にある図書室で向かい合いながら課題をしているわけなのだが。

 

「…ユタカ達、今頃何してるんだろ」

 

窓の外を見ながら、ユエがポツリと呟いた。

そんな彼女を見つつ、僕は苦笑する。

 

「僕達みたいにお昼ご飯食べた後、海で遊んでんじゃない? 何だったらメッセージでも送ってみたら?」

「シンクとイチャついてる、ってきたら腹立つからやらない。ツーショット送られてきたら、携帯叩き割る自信しかない」

 

そんなに?

じゃあ僕らもツーショ撮れば良いじゃん。

 

そう言ったら、ユエは椅子から立ち上がり、僕の膝の上に乗ってくる。

携帯を取り出し、カメラをインにして僕と密着しながらシャッターを押した。

 

「ん、良い。これ良いよアオ」

「僕はともかく、ユエは可愛いからね」

 

写真の中の僕はユエの頭に頬をつけ微笑み、ユエはウィンクしながら、口元で裏ピースしている。

その写真デコるのはどうかとは思うけど。

 

「元の画像頂戴。保存するから」

「いーよー」

 

携帯を取り出し、待機状態を解除した。

その待ち受けを見たユエは、携帯を操作する手を止める。

 

あ、やっべ。

 

そう思った瞬間、胸ぐらを掴まれた。

 

「アオ? これどういう事? なんで私の寝顔が、アオの携帯の待ち受けになってるのかな?」

「…ちょっとした出来心でして…ユエの寝顔可愛いと思ったら、待ち受けにしなければという使命感がですね…」

 

どんな使命感だと、掴まれながら揺さぶられる。

うん、いつものユエだ。

恥ずかしくて暴力に訴えるいつもの彼女で、僕は微笑を浮かべる。

 

「何笑ってんのよ?! だったら私だって、アオの寝顔待ち受けにするからね?!」

「いつ撮った?!」

 

随分前、と言われて、人の事言えねぇじゃんと若干項垂れた。

 

「私はアオみたいに、人の目に入るような事してないから」

「はい、すみません…」

 

それでも、保護シールで正面から以外は見えないよう、ガードしてはいたんだけどね。

 

ユエからの指示で、待ち受けはツーショット写真に差し替えられる。

まぁ、それはそれで別に構わないんだけど。

 

ユエが僕の膝から降りようとしたのを、彼女を抱きしめる事で止める。

 

「アオ?」

 

疑問に思ってこちらを見る彼女の唇を奪った。

暫くキスしていると、ユエから肩を叩かれる。

無視して深いものにしたら、今度は胸を思い切り叩かれた。

 

「いって…! ユエ?」

「アオ? ママから言われた事忘れてないよね?」

 

顔を真っ赤に染め、ユエが睨んでくる。

手を出すな、とは言われたけど、キスをするなとは言われてないんだよな。

 

「忘れてないよ。これくらい、スキンシップのうちだろユエ」

「過度が過ぎる!! あのね、アオ。私ママの娘なの忘れてる?」

 

勿論忘れてはいない。

立花の娘なのは重々理解している。

だからなんだという話なのだが。

 

「襲い受けっていうジャンルがあるの、知ってる?」

「なら、受けは僕じゃん。え、ユエに襲われるの? 僕」

 

そうなりたくないならやるな、とユエから怒鳴られ、頭を叩かれた。

渋々彼女を離すと、ユエは少し怒りながら向かいの席に戻る。

 

また暫く課題を消化していると、ピロンとメッセージが来た事を知らせる着信音が鳴った。

僕かと思ってチラリと机に置いた携帯を見るが、画面は真っ暗なままで、ユエの方かと彼女を見る。

 

ニヤニヤ笑いながら携帯を操作していたので、彼女に尋ねた。

 

「誰から?」

「ユタカ。そっちで寂しく過ごしてんでしょ、シンクとのツーショ送ってやるってメッセ来て、写真も送られてきたから、こっちもラブラブですよーだ、ってメッセ付きでさっきの写真送ってやったの」

 

向こう絶対ドン引きしてるぞ。

城にいるくせに何やってんだって。

 

まぁ、姉妹喧嘩が勃発した所でメッセ上のやり取りだろうから、タップ音が五月蝿いだけだろうなと僕は結論づけて、課題の消化に戻る。

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