my way of life   作:桜舞

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277話『初夜みたい』

案の定、姉妹喧嘩になったようで、課題そっちのけでタップ音が図書室内に響き渡った。

僕は今日分の課題のノルマは終わったので、ユエが飽きるまで本でも読んで待とうと思い、席を立つ。

 

「アオ、何処行くの?」

 

画面を見ながらだったが、音で分かったのだろう。

立ち上がった僕に、ユエが尋ねてくる。

 

「本取ってくるだけ。何処にも行かないよ、僕の姫」

「っ!! あの、口説かないでもらっても良いかなぁ?!」

 

頬を染め怒鳴るユエが可愛くて、僕は苦笑しながら近くの本棚から本を一冊取った。

まぁ、近くにあったの父様と母様の馴れ初め本なんだけど。

 

パラパラと適当に捲る。

別に本なら何でも良かったけど、なんでこの席の近くにあるんだろ、あれ。

 

美談にされているけれど、当時の母様の心境思ったらとんでもないと思うんだよなぁ。

平民で王子と恋に落ちて、魔王討伐まで成し遂げ、貴族の養女として迎えられ。

そして戦争の英雄となり、王妃にまでなるなんて。

母様の半生、怒涛過ぎると思わざるを得ない。

 

「それで篠原財閥のご令嬢だもんなぁ…」

「うん? どうかしたの、アオ?」

 

母様が死んだ時の事を思い出して、ゲンナリしてしまう。

ユタカとの喧嘩が終わったのか、ユエがこちらを見つつ首を傾げた。

 

「いや? この本見てて、ちょっとね」

「あー…王妃様のファンクラブの会長が書いたっていう…それ本当なのかな? よく黙認してるよね、それ」

 

僕もそう思う。

父様が許可を出してるようだから、黙認ではなく公認ではあるのだけど。

 

僕は窓の外を見た。

日が傾きかけてきてて、もうそろそろ夕飯の時間かと思う。

 

「ユエ、少し薄暗くなってきてるし夕飯食べに行こうか」

「そうだね。お腹空いてきちゃった。あっちで食べるご飯も良いけど、今日から1ヶ月アオと二人きりで食べるご飯も嬉しいな」

 

そう言って、図書室の扉に向かうユエを見ながら僕は内心荒ぶった。

 

え、何?

めっちゃ可愛い事言ってんですけど、うちの奥さん。

そんなに動揺させて楽しいのか、僕の姫は。

うん、僕も嬉しいよユエ。

誰にも邪魔されず君とイチャつけるなんて、夢のようだもの。

 

「夢じゃないのかな、これ」

 

頬をつねってみるが、とても痛い。

いや、明晰夢の可能性もあるから、一概に夢ではないとは言えるが。

 

「アオ? 早く行こうよ」

 

扉の所で振り返り、ユエは僕を手招きしながら呼ぶ。

そんな彼女に、僕は言った。

 

「僕の嫁可愛い!!」

「何を大声で言ってるの?!」

 

慌てるユエも可愛いな、なんて思っていたが、近付いてきた彼女から思い切り腕を叩かれ、食堂に連れて行かれる。

 

いやー…これ夢なら覚めないで欲しいなぁ…。

幸せすぎて死にそう。

 

◆◆◆

 

ユエと二人きりで食事をし、自室に帰る。

シンクもシャナもいないから、食堂内がとても静かだった。

母様達がトリスタンに行ってて、早朝と深夜の訓練もないし。

 

もしかしたら、僕ら以外で訓練してるかもだけど。

 

部屋に備え付けの風呂に入りながらそんな思考をしていると、スーッと音も立てず浴室の扉が開いた。

 

「アオ、一緒に寝よ?」

 

そこから顔を出したのはユエだったが、僕は濡れた髪を掻き上げながら、彼女へ苦言を呈す。

 

「分かったから、扉開けないでユエ。伝えるなら扉の外でも良かったはずだよね? 何、抱かれたいの?」

「…っ!! アオのばーか!! 一緒に寝るだけだからねっ?!」

 

ユエはそう怒鳴り、扉を勢いよく閉める。

扉の内枠にガラスがあしらわれていて割れそうではあったが、そこはカヅキおばさんの技術。

たとえ銃弾を撃たれたとて、割れない強化ガラスになっているらしい。

 

というか、ユエの反応可愛過ぎでは?

可愛過ぎて飽和状態起こさない?

 

「あー…僕の嫁本当可愛い…」

「聞こえてるからっ!!」

 

扉の外にいたらしいユエが、僕の呟きに対して怒鳴ってくる。

部屋に戻ってると思ってたんだけど、まだそこにいたのか。

クックッと笑っていると、部屋に続く扉が閉められる音がする。

 

浴室から出て、体をタオルで拭いてから寝巻きに着替えた。

置いていた眼鏡をつけて部屋に戻れば、ユエが僕の枕を抱きしめ、顔を真っ赤にしている姿が目に入る。

 

「ん? どうかしたの?」

「いや、あの…」

 

返答がしどろもどろになっている彼女へ、僕は首を傾げた。

隣に座り、額に手を当てる。

 

「風邪でも引いた?」

「引いてない! …あの、一緒に寝よって、言い出したのは私だけど…その…初夜みたいだなって、思って…誰も、今いないし…」

 

誰もいないって言ったって、働いているメイドやら親衛隊や騎士団は城内にいるんだけど。

家族はいない、って意味なんだろうけどね。

 

「手は出さないからな」

「わかってるもん!」

 

そう言うが、ユエはその状態のまま動こうとしない。

僕は苦笑しつつ、彼女をベッドに押し倒した。

 

「ひゃっ?!」

「はいはい。そのまま寝落ちされても困るから。ユエ、もうちょっとこっち来て」

 

僕も横になり、ユエを抱きしめる。

掛け布団をかけ忘れていたなと思って布団に手を伸ばすと、僕から逃れて彼女が端に行こうとするので、肩を掴んで止めた。

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