my way of life   作:桜舞

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278話『涎垂らしながら寝て』

「何処行くの」

「や、あの、あの…っ!!」

 

言い出したのは君なのに、今更恥ずかしがらないで欲しい。

クックッとまた僕が笑うと、ユエがジト目でこちらを見た。

 

「…なんか、余裕そうだね? アオ」

「ただ寝るだけなんだろ? これが本当に初夜なら、僕だって緊張するよ」

 

彼女に腕枕をしつつ、後ろからユエを抱きしめ、その頭に頬擦りする。

本当に? と聞かれたので、本当と返した。

 

「何で君に嘘つく必要があるんだよ。あのね、ユエ。君は凄く魅力的な女性なんだ……我慢してるだけなんだよ。君を抱いて良いなら、もう滅茶苦茶にして良いなら…やってるんだ」

 

彼女の首筋にキスを落とす。

ピクリと、ユエの肩が跳ねた。

 

「やっ、アオ…」

「…もう寝ようか、ユエ。これ以上は手を出さないけど…初夜の時は覚悟しててね」

 

眼鏡をサイドテーブルに置き、彼女をキツく抱きしめ目を閉じる。

ユエの匂いで、すぐに意識が飛んだ。

 

次に目を開けると朝で、目の前には規則正しい寝息をたてるユエの寝顔がある。

少し口を開けて、涎が垂れていた。

 

あんまりにも間抜けな顔に、僕はユエの頭から腕をゆっくりと引き抜き、起き上がってベッドから降りる。

そのまま、声を出さず肩を震わせて笑った。

 

ユエの寝顔、間近で見たの初めてだけど…無防備すぎる。

いや、寝てるんだから当たり前なんだけど。

それでも涎垂らしながら寝てんの可愛くない?

 

「ん……アオ?」

 

僕が隣からいなくなったからか、ユエが目を擦りながら起き上がったようだ。

僕と違って視力が良いユエは、僕の様子がおかしい事に、怪訝そうな表情を浮かべている事だろう。

 

「何笑ってるの、アオ?」

「……いや? 別に。おはよう、ユエ。今日もいい天気だよ」

 

話を逸らしつつ、サイドテーブルに置いた眼鏡を取って顔にかける。

しかし、そんな戦法は彼女には通じなかったようだ。

 

「アオ?」

「あの、離してもらえないですかねユエさん。服伸びるんで…」

 

僕の服を掴み、ジト目でこちらを見てくるユエに対し、僕は彼女から目を逸らした。

そんな僕の様子に、ユエの目がさらに険しくなる。

 

「何かやましい事してたの? 私が寝てる間に、メイドさんとイチャついてたとか」

「するか馬鹿!! やましい事するんなら、君に対してやるっつーの!!」

 

じゃあ何で目を逸らすんだ、と問い詰められ、僕は先程思った事を素直にユエへ吐いた。

涎の辺りで、彼女は自分の服の袖で口元を拭っていたが。

 

「……恥ずかしい…」

 

顔を手で覆って蹲ってしまったユエをフォローしようとして、僕は彼女に声をかけた。

 

「シャナよりマシだよ。あれ、寝相最悪だから。涎は垂らし放題だし、寝相悪すぎて僕蹴られた事あるし」

「姉弟と恋人は違うじゃん…っ!! あとそれいつの話…?!」

 

初等部、と答えると、小さい頃じゃんと言われる。

 

いやまぁ、その通りなんだけど。

多分今も変わってない気がするんだよな、シャナの奴。

 

将来ツルギ大変そうだなぁ…寝室分けた方が良いって、帰ってきたら言ってみようかな。

 

「涎垂れてても、ユエは可愛いよ」

「それ何のフォローにもなってないぃ…っ!!」

 

そうだろうか?

どんなユエを見ても、可愛いとしか思わないんだけど。

 

僕はベッドへ腰掛け、長くなったユエの髪を弄る。

暫く髪を弄っていると、ユエの方からクゥ…と微かにお腹の音が聞こえた。

起きてから時間は経っているし、仕方ない事だろう。

 

「ユエ、朝ご飯にしない?」

「…恥ずかしくて顔上げられない…」

 

しょうがないと思った僕は、強行手段に出る事にした。

 

ベッドに乗って、ユエの脇から手を入れて抱き起こす。

コロンと仰向けになった彼女は、驚いた顔で僕を見た。

そのまま、ユエを横抱きにして持ち上げる。

 

「アオ?!」

 

急に持ち上げたからか、彼女は僕の首に腕を回して抱きついてきた。

そんなユエの頭に頬擦りする。

 

「僕もお腹空いたんだよ。別にここに運ばせても良いけど。ユエはどうしたい?」

「とりあえず降ろしてよぉ…っ!!」

 

やだ、と僕は彼女に微笑んで拒否の意を示した。

そんな僕を見たユエが、若干涙目になったのはご愛嬌だろうか。

 

◆◆◆

 

朝食を自室で食べ、今日も今日とて図書館で僕らは課題を消化する。

 

「アオ、ここわかんない」

「ん? どこ?」

 

彼女の横へ行き、問題を見てみた。

ユエが躓いている箇所を見ると、どうやら国語のようで。

筆記はちゃんと出来ているけれど、文章を引用しての記述とかの問題らしい。

 

まぁ、ユエは元々オーシア人だから、リューネのこういう系が苦手なんだろうな、とは思っていた。

話すのも、筆記で書くのも、もう自分のものにはしているけれど。

それでもたまに、ユエはリューネ生まれじゃないんだよな、と思う時がある。

別に、彼女が何処生まれでも関係はないが。

 

僕はユエが好きだし、愛している気持ちに変わりはないから。

彼女もそう思ってくれている事だろう。

 

「アオ?」

 

黙って問題を眺めている僕に、ユエが首を傾げる。

僕は顔を上げ、彼女に微笑んだ。

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