my way of life   作:桜舞

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280話『口説いてくんな!!』

「あれなんて言ったっけ…リューネとかオーシアのやつじゃないよな…」

 

二国でも、あんなの見た事ないし。

だからと言って、夕陽の知識の中にもない。

いや、夕陽はアホだったから、知らないだけかもしれないが。

 

「鹿おどし、って言うんだよアオ」

「ユエ」

 

声がする方を仰ぎ見ると、ユエが少し微笑みながら靴を脱いでいる所だった。

勉強道具を片手に持っているのを見るに、あの後僕を追いかけてきたのだろう。

 

「僕がいなくて不安になった?」

「そういうわけじゃないけど…アオがいないと分からない所がまた出てきたから、聞きにきただけ」

 

そう言いつつ、ユエは僕の隣に腰を下ろした。

彼女の様子に僕は苦笑する。

 

「秀才の雪那でも分からない事があるんだね?」

「揶揄わないでよ、アオ。それに、私は今雪那じゃなくてユエだもん。それとも、雪那になった方が良い? 夕陽君」

 

ユエの言葉に、僕は首を軽く横に振った。

 

「冗談。雪那の事も好きだったけど、今は君が好きだよユエ」

「私も。夕陽君の事好きだったけど…それ以上にアオが好き」

 

僕らは見つめ合い、どちらからともなくキスをする。

あまり深くするとユエからストップが入るので、触れるだけにしておいた。

 

唇を離し、お互いに笑い合う。

それから昼まで、枯山水の庭で勉強する事にした。

 

◆◆◆

 

流石に勉強だけじゃ体が鈍り過ぎるという事で、午後からは組み手をしようという話になり。

騎士団や親衛隊の演習に参加しても良かったが、彼らの鍛錬の邪魔をするのも何だかな、と思って、二人だけでやろうとユエと話して決めた。

 

可愛い服装から、動きやすいものに着替えてきたユエは、城の中にある鍛錬場で僕と組み手を始める。

僕は内燃機関を、ユエは外部出力で身体強化をした。

 

僕に蹴りを見舞ってきた彼女のそれが重くて、僕は少しだけ笑う。

 

「何笑ってるの、アオ」

「いや? 流石は僕のお嫁さんだな、と思って。本当、君は可愛いし美しいし、強いし。僕には勿体無いよ、ね!」

 

彼女の足を掴み、空中にぶん投げる。

それは予想済みだったのか、ユエは空中で体勢を整え、地面に着地した、のだが。

 

「組み手してる時に口説いてくんな!!」

 

僕に対して怒鳴ってきたその顔は、真っ赤に染まっていた。

本当の事なのにな、なんて僕は軽く首を捻る。

 

「え、アオ、無自覚…?」

 

そんな僕の様子を、ユエは唖然としながら見てきた。

いや、無自覚かそうじゃないかって聞かれたら…。

 

「意識してない時点で、無自覚かもしれないけど…本心しか口に出してないからなぁ…」

「そ、それでも組み手の時に言うものじゃないでしょ?!」

 

慌てふためきながら抗議してくるユエが可愛くて、僕はクックッと笑いながら肩を震わせた。

ムッとなった彼女は、僕に向かって拳を繰り出してくる。

それを避けながら、ユエを観察してて思った。

 

ツェリに匹敵するくらいの力量になってきてるな、ユエ。

ちょっと気を抜いたら当たりそう。

流石に僕も鍛えているからって、魔力が乗った拳に当たったら痛いどころじゃ済まないんだよな。

 

ひょいひょい避ける僕に痺れを切らしたのか、ユエの攻撃に属性魔法が載せられ始めた。

 

「ちょっと待てユエ?! 流石にそれはやりすぎ…っ!!」

「避けてばっかいるアオが悪いんでしょうが!!」

 

ユエ見てるの楽しくて、攻撃するの忘れてたなぁ。

じゃなくて。

 

「今シャナいないから、防御魔法張れない…っ!!」

「関係あるかぁっ!!」

 

炎以外の属性を載せた攻撃に、僕は防戦一方になる。

というか、魔法を放つのではなく纏わせるのなら、ユエにデバイスは必要なさそうだな。

 

そう思いつつ、僕は彼女の隙を見て腹に膝蹴りを叩き込んだ。

そこは想定していなかったのか、はたまた頭に血が登って防御するのを忘れていたのか。

どちらにしろクリーンヒットしたようで、ユエは腹を抱えて蹲ってしまう。

 

「いっ……たぁ……い…っ!!」

「大丈夫、ユエ? そんなに強く蹴ったかな…」

 

蹲ったままの彼女を見ながら尋ねる。

以前の僕なら、心配して彼女の傍に膝を付いたのだろうけど、今は組み手とはいえ戦闘中だ。

油断は出来ない。

 

「痛がってる彼女の傍に寄って来ないとか、アオ最低!!」

「組み手中じゃん…ほら、おばさんもよく言ってるだろ? 隙を見せた方の負けだって」

 

腹を抱えつつ、上体を起こした彼女は若干涙目で抗議してくる。

僕がそう言いつつ肩を竦めると、目付きが鋭くなった。

 

「本当に痛いんだけど?! 少しは手加減しても良いんじゃない?!」

「属性纏わせて攻撃してきた時点で、手加減も何もあったもんじゃないだろ。下手したら、倒れてたの僕だぞ?」

 

ユエの目線に合わせるために少し屈むと、素早く近寄られる。

そのまま掴みかかられそうになったので、巴投げの要領で彼女を吹っ飛ばした。

 

「うきゅっ?!」

「ほら、油断も隙もあったもんじゃない」

 

流石、立花の娘。

今掴み掛かられていたら、頭突きぐらいは喰らっていただろう。

危ない危ない。

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