my way of life   作:桜舞

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281話『ハニトラって何…?』

「う…うぇ…うぇぇぇぇんっ!! アオ酷いぃぃっ!!」

 

仰向けの状態でギャン泣きし始めてしまったユエに、僕は若干慌てる。

 

やっべ、マジ泣きさせたか?!

マズいマズいマズい…っ!!

 

シャナなら、ギャン泣きさせても放っておけば立ち直るけど、ユエはダメだ。

絶対根に持つし、何ならおばさんに言って婚約破棄してくる!!

それは絶対嫌だし困る!!

僕の伴侶はユエ以外ごめんだ!!

 

「ユ、ユエ、ごめん!! 僕が悪かった!!」

 

彼女を横抱きにし、謝る。

嗚咽を漏らしながら涙を流すユエに、物凄い罪悪感を抱いた。

だが。

 

「……隙有りっ!!」

 

顎に掌底を喰らい、脳が揺れて僕はユエを落とす。

そのまま、先程の彼女同様仰向けに倒れた。

 

こいつ…っ!!

嘘泣きしてやがったな?!

 

上手く受け身を取っていたようで、立ち上がったユエが僕に対して、ベーッと舌を出した。

 

「隙を見せた方が負けなんだったよね、アオ」

「あー……くっそ……っ!! てめ……ふざけんなよ…っ?!」

 

僕の怒りの視線に、ユエはプイッと顔を横へ向けてしまう。

だけど、彼女も怒っているようで

 

「私だってお腹蹴られて痛かったのに、アオ全く心配してくれないんだもん。最低、酷すぎ、冷徹過ぎる」

 

と、少し言葉に棘が含まれた。

 

「戦闘中だって言っただろうが…っ!! ……ハニトラかますなよ、ユエ……これおばさんに知られたら、シゴキ凄い事になるじゃん…」

 

やっと脳の揺れが治ったようで、僕は起き上がりながらため息をつく。

僕らの喧嘩を仲裁してくれる人達なんて、今城から全員いなくなっているものだから、拗れたら一月以上ユエと話さなくなるのは目に見えていた。

 

父様と母様が喧嘩した際には、キスして仲直りしていると聞いた事があるが、僕らもそれ実践するべきだろうか?

 

「知らないもん。ハニトラ…ハニトラって何…?」

 

僕が言った単語の中でわからないのがあったのか、ユエが首を傾げた。

それについて解説する。

 

「ハニートラップ。女性が泣いたり甘えたりして、男性を籠絡させながら情報や弱みを握る行為。さっきみたいに、泣き落としで油断させて暗殺とかね。あれを自覚なくやらないでよ…僕が君の涙に弱いの、知ってるくせに…」

 

更に深いため息をついて、僕は顔を覆って俯いた。

 

でも良かった、嘘泣きで。

ユエに本気で嫌われたら、僕マジで死ねるし。

もし婚約破棄って言われてたら、誰と婚姻結ぶ事になるんだろ、僕…。

まぁ、ユエ以外と結ぶのなら誰でも良いしどうでも良い。

だって、ユエ以外を愛するなんて絶対にないのだから。

 

「アオ、怒ってる…?」

 

ユエが恐る恐る僕に聞いてくる。

顔から手を外し、首を横に振った。

 

「油断した僕が悪い。でも本当、嘘泣きやめてユエ。次やったら僕、首掻き切るからね」

「絶対やらない!! やだ、アオが死んじゃうぅ…っ!!」

 

今度は本当に泣いているようで、僕に抱きつき涙を溢し始める。

そんな彼女の頭を撫で、今日で何回目かのため息をついたのだった。

 

◆◆◆

 

夕飯の時間になり、二人で食事を摂る。

泣き腫らした顔でご飯を食べるユエに、僕は苦笑した。

 

「ユエ、大丈夫?」

「…大丈夫…ごめんなさい」

 

先程の事を反省したのか、目を伏せ申し訳なさそうに彼女は謝ってくる。

反省してくれているならそれ以上怒るつもりはないし、責めるつもりもない。

 

そして、僕はふと思いついた事を彼女に提案した。

 

「ねぇ、ユエ。僕らなりの仲直りの方法思い付いたんだけど、言って良い?」

「仲直りの方法…?」

 

ユエが首を傾げる。

うん、と僕は頷いた。

 

「母様達はキスをして仲直りするって聞いたんだけど…僕らはハグで仲直りするの、どう?」

「アメリカの人みたいだなぁ。仲直りのハグかぁ…それも良いけど、私もキスが良いかな。喧嘩吹っかけた方が先にするの」

 

それ、お互い頭に血が昇って覚えてなかったら、どうするつもりなんだろうか。

 

僕はニヤリと笑って、彼女に言う。

 

「大体ユエが吹っかけてくるよね。君、僕に出来る?」

「……出来るもん」

 

頬を染め、ユエの目が泳ぎまくっていた。

キスをする時は、僕からの方が多い。

少し欲望に負けて、というのもあるが、ユエからの方は滅多にないと言っても過言ではない気がする。

 

「付き合ってから多分五回くらいだよね、君からしてきたの」

「なんで数えてんの?!」

 

滅多にないから、と答えると、彼女は食器を端に寄せテーブルに突っ伏した。

うん、恥ずかしいんだろうけど少し行儀悪いかな。

やらせたの僕の発言だろうけど。

 

「ユエ、今食事中」

「…ごめんなさい…」

 

食器を元の位置に戻し、黙々と食事をする。

食事を終えてユエと別れた後、僕は自室から何冊か本を持ち出し、また枯山水の庭に行く。

イフリートの月だからか雲一つない月明かりで、静かに読書をするのに向いていたのだ。

 

今日はユエ、一人で寝るって言っていたし。

訓練ないから本を読むのにも好都合だし。

流石に邪魔は入らないだろう。

 

庭に着き、縁側に本を置いて読書する。

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