my way of life   作:桜舞

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284話『ボディーガードみたいな』

「貴方のその髪の色はあたし譲りだし、貴方のその目の色はお父様譲りよ。貴方はちゃんと、あたし達の可愛い子供なのだから悩まないで、グンジョウ?」

 

それを聞いていたのか、シャナも王太子になんて絶対ならないと泣き喚いたりして…それからシャナは魔法が得意になり、僕は剣技が得意になったというだけの話である。

 

「あー…アオの精神世界に入った時に、ちょっとだけ…」

「あの時か…」

 

見られて困るような記憶はないはず、だけど。

大体、彼女と離れていたのは7年の間だし、その間何か恥ずかしい出来事があったわけではない。

多分、大丈夫、だと思いたい…!!

 

◆◆◆

 

その日の夜、シャナの友達が主催している仮面舞踏会の会場に到着する。

僕は先に車から降り、ユエヘ手を差し出した。

 

「アオ、先に降りないでよ。王太子なのに…」

 

チョーカー部分から、網目状のシースルー生地が胸元の生地部分とくっついたような、濃い紫色の肩が出ているワンピースドレスを着たユエが、非難の目を向けてくる。

足元のヒールもドレスと合わせた紫色の物で、ワンポイントでリボンが付いていた。

 

会場に向かっている時点で、僕とユエの髪と目の色は交換してあったので、目の前にいる彼女はいつもと雰囲気が違っている。

可愛いし、美しい。

いくら僕の髪と目の色だからと、本当僕には勿体無い女性だな、君は。

そして、ユエとリンクを繋いでいるので、眼鏡をかけないで済んでいた。

 

「婚約者をエスコートするのも、男の務めだろ?」

「……だからって、少しは自分の立場を考えて欲しい…かな」

 

ユエは少し頬を染め、僕の差し出した手に自分の手を重ねる。

そのまま車を降り、僕らは連れ立って会場の入り口へ行く。

ちなみに僕の服装は、黒いスーツに黒のシャツとスラックス、黒のネクタイと、全身黒コーデで、手袋も黒という徹底ぶりである。

なんでこれ? と選んだユエに聞いたら、

 

「え? 格好良いじゃん。お嬢様とボディーガードみたいな感じ」

 

と言ったので、まぁ、そのコンセプトで良いかと思った次第だ。

シャナから聞かされていた暗号? を言い、参加者である事を確認してもらう。

そして、中に入る前に仮面を選ぶよう言われた。

 

色んな色、そして多種多様の仮面があり、僕は少し悩む。

どれが良いかと物色していると、ユエから尋ねられた。

 

「どれが私に似合うと思う?」

「ん? んー…そうだなぁ…」

 

僕はピンクの造花付きの物を手に取り、彼女に渡す。

これ? と聞かれたので頷いた。

僕から渡された仮面を目元に装着して、ユエはこちらを見る。

 

「可愛いよ」

「あ、ありがとう…なら、私も貴方の選ぶね」

 

決めあぐねていたから、それは正直助かる。

ユエは仮面が納められてる箱から、白黒の仮面を取り出して僕に渡してきた。

それを付けると、彼女から格好良いと言われる。

 

受付をしてくれていた使用人が、本名はここでは言わない事、お互いあだ名で呼ぶ事と注意を受けた。

仮面舞踏会だからと言って、異性を漁るような事はせず楽しむように、と主人から招待客に伝えるよう仰せつかっていると、その使用人は言う。

そういう目的で来る連中もいるのだろう。

釘を刺しておかないと、大変な事になる…もしくはなった事があるのだろうなと推測出来た。

 

「んー…じゃあ、なんて呼ぼう…」

「私は貴方の事ブラウって呼ぼうかな。オーシアで蒼って意味なの」

 

ニコリと笑うユエに、僕は少し考えてから跪いて彼女の手を取る。

手の甲にキスを落としつつ、彼女を見上げ微笑んだ。

 

「なら、僕は月姫(つきひめ)で。君の名前、日本語で書いたら月だしね」

「……気障だなぁ…もう…」

 

頬を染め、ユエは目を逸らす。

腕を差し出すとそこに彼女は手を添え、僕らは会場に入った。

 

大きいホールの中には結構人がいて、皆歓談と立食を楽しんでいるようだ。

一応ダンスも出来るようで、複数人はホールで演奏している楽団の曲に合わせて踊っている。

 

僕らが入って来ても、誰も見向きもしなかったのは幸いだった。

 

「私、ここに来たの初めてかも…」

「そうだね。君、他の家に遊びに行く事しなかったしね」

 

僕はこの家へ、一回だけ来た事がある。

シャナの友達の、イヴェット・クックの家だ。

成程、彼女が主催者なのか。

 

「ア…ブラウ、見覚えあるの?」

 

アオと言いかけて、ユエは先程決めたあだ名で僕を呼ぶ。

ここには同級生も来ているだろうし、いくら髪の色と目の色を交換したからと言って、普段の呼び名で呼んだらすぐバレるだろう。

 

「まぁね。姉の友達の家だよここ。招待状受け取ってる時点で、そうなんだろうけど」

 

ユエを見た数人が、コソコソと内緒話を始めたのが目の端で確認出来た。

彼女もそれに気付いたようで、少し目を伏せる。

 

「月姫? どうかしたかい?」

 

問い掛けると彼女が手招きしたので、僕は顔を近づけた。

 

「あそこの人達、私の事王妃殿下かリーゼ姫殿下だと思ってるみたい。蒼い髪色の女性って、王妃殿下かリーゼ姫殿下しかいないから」

「あー…成程」

 

彼女が耳打ちしてきた内容に、僕は納得する。

 

オーシアでは蒼色の髪など別段珍しくも何ともないが、ここリューネでは違う。

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