my way of life   作:桜舞

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285話『客観的に見る彼女も美しい』

蒼色の髪は、王族の証でもあるのだ。

引いては、英雄である母様の子供だという事になる。

 

僕らが生まれて少ししてから、子供の髪を青色に染める風潮が流行ったらしいが、父様がそれで怒り狂って、やった親は厳罰に処したと、母様が呆れながら話してくれた事があった。

 

別に髪を染めるのは個人の勝手でしょう、と。

 

だが、父様は母様の尊厳が汚されたと、母様の言葉にも耳を貸さなかったようだ。

あの、母様大好き人間が。

それ以来、国では髪を染めても青にだけは絶対にしてはならない、と暗黙の了解が広がっていったらしい。

 

今でも旅行者以外でやった奴は、罰金刑に処しているようだった。

 

まぁ、その二人は今別荘に行っていて、王都にはいないんだけど。

 

「……下衆な想像してるなぁ。もし王妃殿下だったら若い燕侍らせているし、リーゼ姫殿下なら見た目を年上にして、更に自分の歳より上の男性にエスコートしてもらってる、ってさ」

「うわぁ…よく聞こえるもんだね、月姫。それに、よくそんな想像豊かに話せるな、あの連中。まぁ、王妃殿下やリーゼ姫殿下に直接会った事ない奴らばっかりなんだろうけど」

 

もし僕の隣にいるのが母様なら、その豊満な胸に皆目が行くだろうし、リーゼはこういう派手な場に行こうという思考自体無く、部屋に引きこもってゲームしてる方が好きな子である。

それに、リーゼはユエより胸はないし、彼女より軽い。

 

「ブラウ、あとで話しようか」

「思考読まないでもらって良いですかね、月姫」

 

ニコリと笑うユエの笑みが、少し引き攣っている。

多分、怒鳴り散らしたいのを我慢しているのだろう。

その証拠に、僕の手に添えられている手に力が込められていた。

 

「逆に、肉付きが悪いって意味に取ってくれないかな…」

「実の妹にそんな感想抱くの、最低」

 

だって、ちゃんと食べてるか心配になるくらい細いんだもの、リーゼ。

年相応なんだろうけど、リーゼくらいの歳の頃、シャナはもっと活発に動き回って、リーゼより健康的だったものだから。

あれと比較したら、そう言いたくもなるというか…。

 

「内向的な子なんでしょ? シャナ姫殿下とは違うよ」

「いや、そうなんだけどさ…」

 

人の目があるから、僕らはシャナ達の事を敬称で呼びながら話す。

それにリーゼは大人しい子だから、結構活発なルージェと合わな過ぎて、涙目になっている事が屡々(しばしば)だった。

やっぱり、ルージェに注意するべきだな、うん。

 

ユエに付いて立食をしていると、彼女がダンスに誘われる。

チラリと僕を見たので、ユエの耳元で囁いた。

 

「行っておいで、月姫。でも、変な事されそうになったら殴って良いからね」

「その時は相手の足を思い切りヒールで踏みつけてやるから、安心してブラウ」

 

行ってきます、と彼女は手を振り、知らない男にエスコートされていく。

僕はといえばお腹が空いていたので、一口大に切られたピザや、ソースが掛かったマカロニなどを、ホールの端の方でユエを眺めながら食べていた。

 

客観的に見る彼女も美しいな、なんて思っていた時。

女性達が僕に声をかけてくる。

 

「あの、お名前を伺っても宜しいですか?」

「ブラウです」

 

声で分かりそうなものだが、見た目が僕と一致しないからか、女性達は僕がグンジョウだとわからないようだった。

 

「あの、私とダンスを踊っていただけませんか?」

「次は私と!」

「その次は私とお願いします!」

 

うわ、入れ食い状態だな、これ。

こんな真っ黒コーデの奴、怪しんで近寄らないのが普通じゃないのか?

まぁ仮面舞踏会の醍醐味は、お互い素性が知れないから気安く話しかけられる、という事だろう。

 

異性を漁るなと、入り口で彼女達も注意を受けただろうしね。

 

「ご飯食べてからでも良いですかね?」

「「「勿論!!」」」

 

めっちゃハモるじゃん。

ここにシンクがいたら爆笑してるんだろうな。

三つ子か! って。

三つ子なのは僕達だけど。

 

皿に乗っていたものを食べ終え、僕は一人目の女性をエスコートしてダンスホールに向かう。

ワルツを踊っていると、女性がうっとりした顔をして僕を見つめていた。

 

「ブラウさん…この後少し抜け出しません?」

「申し訳ありません、レディ。私は姫の付き添いなもので。姫の許可無しに、何処かへ行く事は禁じられているのです」

 

ニコリと笑うと、残念だとため息をつかれる。

 

付き添いはユエの方で、本来の招待客はシャナなんだけどな。

二人目三人目とダンスを踊ってあげたが、皆同じ事を言うので同じように断った。

 

多分ユエの方も同じだったのだろう。

少し疲れた表情を浮かべ、僕の隣に来た。

 

「…しつこい人ばっかり…注意なんてものともしないじゃん…」

「お疲れ様、月姫。水でも飲むかい?」

 

グラスを差し出すと、彼女はそれを受け取り一気に飲み干す。

どれだけ疲れてたの、君…。

 

「もう帰る?」

「あそこのスイーツ食べてから帰る。ブラウは甘いの苦手でしょ?」

 

ユエが指差した方向を見ると、確かに僕が苦手そうなやつばっかりで、思わず顔を顰めてしまう。




今年は、なっちゃんの方のお話、
そして群青のお話を読んでいただき
ありがとうございました。

なっちゃんの方の連載は終わりましたが、
群青の方の話はまだ続きます。

最後までお付き合いいただければ幸いです。

良いお年を。
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