my way of life   作:桜舞

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286話『最高神』

ほらね、と彼女は苦笑して、満足したら戻ってくると宣言し行ってしまった。

 

「手持ち無沙汰になったのなら、一曲どう?」

 

その声に振り向くと、少し小柄な女性が僕に声をかけたようだった。

今の僕みたいな黒髪に茶色の目、黒いドレスに青い仮面をつけている。

 

「そうですね。姫が戻る間だけで宜しいなら」

「良いよ。エスコートお願い出来る?」

 

女性の手を取り、ダンスホールへエスコートした。

ワルツのリズムで踊っていたのだが、僕は少し驚く。

 

踊りやすい…ユエと踊る時より、ずっと。

 

僕のステップに合わせて自身の重心を移動してくれているようで、少し踏み間違えても立て直せるくらいだった。

 

「レディ、失礼ですがお名前は?」

「人に物を聞く時はまず自分から答えろと、君の先生は教えなかったのかい?」

 

ニヤリ、と女性は笑う。

これは失礼を、と僕は前置きをして名を名乗った。

 

「ブラウと申します、レディ」

「ブラウ、ね。いい偽名じゃないか、グンジョウくん?」

 

名前を言い当てられ、僕は驚く。

女性を見ていて気付くのが遅れたが、周りから音が消えていた。

 

僕は思わず女性から手を離して、後ろに飛び退る。

女性は面白そうに、クスクス笑いながらその仮面を外した。

 

あどけない少女のように見えて、しかし雰囲気は僕よりも年上な感じがして、とても不気味だ。

 

「君もなっちゃんと同じ感想を抱くんだねぇ。まぁ、なっちゃんも好きだけど、君の事も大好きだよグンジョウくん。あたしの手のひらで踊ってくれる、イケメンだからねぇ」

 

思っている事が全て筒抜けで、更に不気味さと恐怖を抱く。

女性はやれやれと肩を竦め、片手を胸に当てもう片手でスカートをつまみ上げ、少し腰を落としながら僕に微笑んできた。

 

「別に君を不愉快にさせたいわけではなかったんだけど、ごめんねぇ。君に名乗らせたのだから、あたしも名乗ろう。なっちゃんから話を聞いているだろうが、最高神というやつさ」

「なんで、最高神がここに…それに、なっちゃんって…母様の事か?」

 

その通り、と最高神はニヤリと笑う。

 

「だってシャルロットの前はナツキでしょう? だからなっちゃんって呼んでるのさ。ここに来たのはそうだなぁ…ただのアクセントだよ。マンネリしている話に、ほんのスパイスを。料理だって、味付けをしなければただの素材の味じゃないか。だからあたしが来ただけ。ま、面白ければあたしはそれでいいのだけど」

「言ってる意味がわからない」

 

だろうね、と最高神は笑うのをやめない。

本当に楽しそうに笑っている。

母様が言っていた通り、邪神の類なのかこの神は。

 

「そう言われると傷つくけどね。あたしは、神として君達を愛しているよ。人間と違って、君達はあたしの思うように動いてくれるのだから」

「何を言って…」

 

神の思うように動く?

なら、僕の意思は何なんだ?

ユエが好きだと、愛しているという気持ちも操られているというのか?

 

少し気分が悪くなり、その場に膝を付いた。

途端、ゴンッ!! と、とても痛そうな音が聞こえ、僕は顔を上げる。

最高神の隣に男性が現れて、拳を握りしめていた。

 

最高神は頭を抱え、涙目になりながら男性を見上げている。

 

「いったーいっ!! いきなり何すんの?!」

「うっせぇ馬鹿!! 物語に干渉すんじゃねぇよ!! あー、悪いなグンジョウ。後でこいつには言い聞かせ…ても無駄かもしんないから、こっち来れないよう拘束しとくから安心してくれ。お前、グンジョウがナツキの次にお気に入りだからって、ここまで入り込むなよ」

 

男性は最高神を縛り上げ肩に担いだ。

簀巻きにされた最高神は、大人しく男性に従っている。

 

「あの、貴方は…」

「こいつの旦那。まぁ、グンジョウ…俺が言うのも何だが、頑張れよ。こいつとのダンスは無かった事にしてやるから」

 

男性…最高神の旦那さんだから男神って事かな?

確か母様が、ヴェスタ神より上の神がいる、しかも二人組らしいとか何とか言ってた気がする。

 

男神は僕の肩を軽く叩き、その場から消えた。

 

「ブラウ? どうかした?」

 

その声にハッとなり、目の前にユエが戻ってきたのを知覚する。

不思議そうな顔をしている彼女を見て、僕は安堵のため息をついた。

そして、彼女の口の端にクリームがついているのが見え、僕はポケットからティッシュを出して彼女の口を拭いてあげる。

 

「んっ、何?」

「クリームついてた。これが甘いのじゃなかったら舐めとるんだけど」

 

それを聞いたユエの顔が真っ赤に染まり、僕の腕を軽く叩いてきた。

痛かったけど…現実だと実感出来たので、僕はまたため息をつく。

 

「ブラウ? なんでそんなため息ついてるの?」

「あぁ、いや…ちょっと、白昼夢見てたみたいで…月姫、もう帰ろう。少し疲れちゃった…」

 

僕の言葉に彼女は頷き、僕らは会場を後にした。

駐車場に待機させていた車に乗り込み、城へと帰る。

途中寝落ちしてしまったようで、城に着くまでユエの膝を枕にして眠っていた。

着いて暫く経ってから、揺さぶられて起こされる。




ハッピーニューイヤー
明けましておめでとうございます

今年も群青共々よろしくお願い致します

あと新連載始めました
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