my way of life   作:桜舞

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287話『貴方、またなの…』

「アオ。疲れてるところ悪いんだけど、起きれる? ごめんね、シャナちゃんみたいにアオを担いで持っていけないの」

「…彼女に担がれる彼氏って…構図自体面白いよね…」

 

姉より図体がでかい弟が担がれているのも、面白いけど。

 

僕は名残惜しいと思いながらも、彼女から離れる。

目の前がぼやけていて、ユエがリンクを切ったのかと気付いた。

まぁ、ずっと僕とリンクを繋いだままだと彼女の負担になるから、別にそれは良いんだけど。

 

「…ユエ、ごめん。眼鏡どこ…」

「ここ。アオ、凄い疲れてるね? 大丈夫? 部屋まで付き添うよ」

 

ユエから眼鏡を手渡され、僕はそれをかけて彼女に微笑んだ。

 

「悪いけど、お願い出来るかな。途中で力尽きそうなんだよね」

「あ、うん…」

 

ユエに付き添われ、僕は部屋に向かう。

ベッドに横たわった瞬間、意識が飛んだ。

 

◆◆◆

 

夏季休暇半ばあたりで、シャナ達が別荘から帰ってきた。

ただいまと言いながら、姉は僕に抱き付く。

 

「お帰り、みんな。シャナ、ツルギが微妙そうな顔してるから離れろ。あと、向こうで課題終わらせてきたよな?」

 

僕やユエは数日前に終わらせたので、あとは何をするにしても自由ではあるんだけど…僕の問いに、姉はビクリと肩を揺らした。

 

「シャナ、お前まさか…」

「…あー…ははは…」

 

僕は呆れた目でシンクとツルギを見る。

なんでやらせてないんだと、二人に問うた。

 

「んなの自己責任じゃん。ちなみに、俺はコツコツやってたから、後もうちょっとで終わるし」

「俺も…シャナがやってるものだとばかり…すみません、殿下…」

 

僕はため息をついて、姉の課題を手伝おうと図書室に向かおうとし、妹の悲鳴が聞こえてそちらに目を向ける。

 

「いやぁーっ!! お兄様ぁっ!! 助けてくださいぃっ!!」

「リーゼ?!」

 

涙目になって走ってくるリーゼの後ろから、ルージェが虫籠を持ちながら、同じように駆けてきていた。

近くにいたシンクがリーゼを抱き上げて、ルージェから引き離す。

 

「ルージェ、何でここに…」

「テスタロッサで採れた虫、リーゼに見せようと思って持ってきた。ほら、リーゼ。このカブト格好いいだろ?」

 

ルージェの問いに、リーゼはそちらを見ずに首をブンブンと横に振っていた。

母様譲りの蒼髪が、妹の動作に合わせて揺れる。

ポンポンとリーゼをあやすように、シンクが背中を軽く叩いてあげていた。

 

「ルージェ…お祖母様と母様に、それやめろって怒られたの忘れたの?」

「それにリーゼちゃん、虫嫌いだよね? ただのイジメだよ、これ」

 

え、と驚いた表情するルージェの手を取って、僕はみんなから引き離していく。

充分に離れたと思った僕は、ルージェの目線に合わせて屈んだ。

 

「ルージェ、自分が好きなものが相手も好きだと思うのは、間違っているよ。虫が嫌いな人だっているし、僕は本が好きだけど、世の中には活字が嫌いだっていう人もいる。自分の好きを相手に押し付けるのは違う。それに君、リーゼの事好きなんだろ?」

 

そう言うと、ルージェは少し顔を俯かせてコクリと頷く。

僕は少し微笑を浮かべ、言い聞かせるように言った。

 

「君のその行為は、リーゼにとっては逆効果だ。自分ではなく、相手の好きなものに目を向けてごらん? でも取り敢えず…リーゼには、ちゃんと謝った方が良いね。君の事、多分嫌いになってるはずだから」

 

チラリと皆の方を見る。

リーゼが涙目になりながら、こちらを見ていた。

シンクの服を掴み、怯えた目を向けている。

もしルージェが先程と同じ事をした暁には、泣き叫ぶんだろうなと想像が出来た。

 

「ルージェ、誰と来たんだい?」

「父様と母様。義姉様が別荘から帰ってきたから、会いに来たって」

 

虫籠どっかに隠して持ってきてたんだろうな…。

後でお祖母様にバレたら説教されるよ、君…。

 

「ちょっと、今リーゼの叫ぶ声聞こえたんだけど?!」

 

母様がいつもより慌てた様子で、お祖母様とカヅキおばさんを伴い軽く走ってくる。

普段の母様なら廊下を走るなんて事しないんだけど、リーゼの声で心配になったらしい。

 

僕らの様子とルージェの手にある虫籠を見て、母様はため息をついた。

 

「ルージェ…貴方、またなの…」

「申し訳ありません、お嬢様。愚息がご迷惑を…。ルージェ、荷物検査した時には無かったものが何故ここにあるのです。収納魔法を習得していたのは知っていたので、その中の物も全て出すよう伝えたはずですね? 私達を謀ったというのなら、テスタロッサ領に帰った後、宿題を倍にしますよ」

 

お祖母様の圧にルージェは俯きながら、はい、とか細い声で答える。

そんな二人の横を通り過ぎ、母様はリーゼを抱き抱えているシンクの所へ行った。

 

「リーゼ、大丈夫?」

「お母様ぁっ!!」

 

シンクからリーゼを渡された母様は、妹の頭を撫でながら苦笑する。

エグエグ泣くリーゼを見て、おばさんも呆れた目をルージェに向ける。

 

「ガキだな…グンジョウやシンクを見習え、ルージェ」

「「本当それ」」

 

ユエとユタカが、おばさんの言葉に賛同した。

みんなが帰ってきて賑やかになったな、なんて窓の外を見ながら、僕は思考した。

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