my way of life   作:桜舞

291 / 408
291話『姫殿下の金切り声』

彼女が努力してくれているのも、それこそ血が滲むような思いをしていたのも知っている。

お祖母様から合格点が貰えたと、妃教育が終了したとこの間ユエは嬉しそうに笑っていた。

 

それでも努力は怠らないよう、お祖母様から釘を刺されたと苦笑していたが。

 

前にアオイさん、後ろにツェリ、僕らは真ん中という構図でオーシアの城内を歩いて行く。

大きな扉の前まで案内され、ここでユエとツェリは待つようアオイさんから言われた。

 

僕はアオイさんと共に扉を潜り、オーシア国女王陛下に謁見する。

 

「久しいな、グンジョウ王太子殿下。此度、ナズナ陛下は国から離れられぬ故、お主を寄越したと聞いている」

「お久しぶりでございます、ツェーレスタイン女王陛下。我が国でスタンピードが起こり、父であるナズナではなく私が参上致しました非礼、お詫び申し上げます」

 

僕はそう言い、女王陛下に頭を下げた。

父様とは対等であろうが、僕は王太子である。

隣国の王に無礼を働いてはならない。

 

「良い、面を上げよ。スタンピードの厄介さは、我が国でも承知している。むしろ、此度は欠席でも構わぬとナズナ陛下へ申し上げたのだが、世継ぎである王太子殿下の後学の為に、是非ともと仰っていてな」

「……それは、何と言いますか……申し訳ありません…」

 

だから無礼を働いても許せよ、とでも言いたかったのか父様?

隣国の女王陛下に?

冷や汗しか出てこないんだけど?!

対峙してる僕の身にもなってくんないかな?!

 

「良い。しかし男児の成長は早いものだな、要」

「そうですね、陛下。前に殿下方が訪問した際は、私の背より少し大きいくらいでしたのに。今は少し見上げないとお顔を拝見できない程で」

 

クスクスとアオイさんが笑う。

二人とも僕より年上だから、子供扱いされててどうにも居た堪れない。

 

とりあえず、僕らの身の保証と安全は要家が一任してくれる事。

会議は明日あり、今日と同じように車で送迎してくれる事などの説明を受け、僕とアオイさんは女王陛下の前から辞した。

 

◆◆◆

 

帰りの車内で、ユエにもその説明をする。

付いてくるかの問いに、彼女は頷いた。

ホテルに到着し僕とユエが車から降りると、アオイさんがニコリと笑いながら言う。

 

「君達用にワンフロア貸切りにしてあるから、お部屋は好きな組み合わせで泊まるといいよ」

「あ、はい。お気遣いありがとうございます」

 

ベルナールの所で泊まった時と同じ…いや、あの時はリビングは共用だったから、完璧に部屋が別ではなかったけど。

他のメンバーがどんな振り分けでやったか分からない分、帰るのが怖い。

しかもワンフロアという事は、どれくらいの規模の人数がオーシアに行くか、アオイさんへ事前に連絡をとっていたという事だ。

父様、そこ僕にも話して貰えませんでしたでしょうか…。

 

それじゃあ、とアオイさんとツェリを乗せ、車が発進する。

それを見送り、僕とユエはホテルの中に入った。

 

「おー、お帰り」

 

入り口横に設置されている簡易のカフェスペースで、シンクがこちらの新聞を読みながら僕らを待っていたらしい。

傍には数名の親衛隊がいて、僕らに会釈してくる。

シンクが軽く手を挙げて声をかけてきてくれたので、僕らはそちらへ行く。

 

「ただいま。何か異変とかなかったか?」

「いんや、全然。シャナの課題終わんねぇと、観光も出来ねぇし。お前が手伝ってもあの量って、やばくね?」

 

シャナが持ってきた課題の量を見て、シンクも引いたのだろうな。

まぁ、赤点ギリギリだったので、渡された課題プラスでおばさんが追加したのだろうが。

 

「あと数日で何とかしようとしてたんだよ。猶予が出来て良かったけど…。流石に高等部三年にもなってあの頭だと…後々苦労するって、おばさんも思ったんだろうね。手伝わされるこっちの身にもなって欲しかったけど」

 

僕がそう言うと、シンクが苦笑いを浮かべる。

シャナは? と問うと、

 

「今ツルギが、付きっきりで課題手伝ってる。あ、部屋の組み合わせベルナールの時と同じだから、よろ」

「……あぁ、そう」

 

そこは寮の部屋と同じで良かったんじゃないかな…。

その話し合いに、僕とユエが参加出来なかったから仕方ないとは言え。

 

僕らをここで待っていたのも鍵を渡す為だったようで、シンクは僕の手に鍵を握らせてきた。

 

「俺らのフロアは一番上。結構でかいだろ、ここのホテル? スイートルームみたいな部屋が三部屋と、後は普通の客室が数部屋って構図になってるっぽい。俺らみたいな賓客と従者用の部屋なんだろうなって、一応親衛隊と危険がないか見て回った時に持った感想」

「お疲れ」

 

シンク達と共にエレベーターに乗り込み、最上階に到着する。

エレベーター横と、非常階段の所に親衛隊が立っているのが見え、僕は彼女らに声をかけた。

 

「みんな、ご苦労様。誰も来てはいないと思うけど、異変はあったかい?」

「いえ…あの…シャナ姫殿下の金切り声だけは、聞こえましたが…」

 

エレベーター横に立っていた親衛隊の一人が、そう報告してくる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。