my way of life   作:桜舞

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292話『名残惜しい』

ツルギに教えてもらっててそんな声あげるなよ、シャナ…。

しかも部屋の外に聞こえるぐらいって…。

 

「いつもの事だから気にしないで。君達も、休める時には休んでくれ」

「「「「はっ!!」」」」

 

親衛隊は僕らに敬礼してくる。

 

「お前らの部屋ここな」

 

左右と真っ直ぐに伸びた廊下だったが、シンクは廊下を真っ直ぐ進んだ。

広い円形のホールに扉が三つあり、そのうちの一つを弟は指差す。

 

「お前とシャナは?」

「俺は左、シャナは右の部屋にいるよ。お前は真ん中な。中も見たけど、ほぼ構図は一緒。エレベーターホールからここまでは一本道だから、あそこで警戒してもらえれば、不審者は入って来れないだろ。ビルの24階くらいの高さにこのフロアはある。外から飛行魔法でも使わない限りは無理って話だが、アンチマジックフィールドが外に張られているって、ここのホテルマンが説明してくれた。半径1キロだってよ。要家の技術凄えわ」

 

そう説明するシンクの目が少しだけ輝いていた。

将来研究職に就くと宣言しているだけある。

こういう技術、お前好きだもんな。

 

「まぁ、僕らの身の安全は保証されているって事だろ? 中からも外からも侵入は無理だって事だし。親衛隊も精鋭を連れてきているから、そう簡単にやられないだろうしね」

 

ここにいる親衛隊の皆は、カヅキおばさんの教練を受けた者ばかりだ。

並の侵入者では太刀打ち出来ないだろう。

 

「んじゃ、俺はシャナの様子見てくるわ。さっきの話からしたら死んでそうだし」

「よろしく。僕も少し休んだら参戦するよ」

 

おう、とシンクは笑い、僕らは拳を合わせる。

そんな僕らを、ユエは微笑ましく見ていたのだろう。

シンクがシャナの部屋に入って行った後、クスリと笑った。

 

「ユエ? どうかした?」

「ん? ううん、何でもない。早くお部屋入ろ?」

 

少し彼女の様子が気にはなったけれど、僕も早く休みたかったので鍵を回して扉を開ける。

中に入ると二人部屋にしてはとても広く、とりあえず目についたソファーに腰を下ろした。

 

「はぁー…」

 

背もたれに頭を乗せ、僕は天を仰ぐ。

 

女王陛下への謁見、緊張した…。

父様、不躾なお願いしないでくれないかな…。

 

というか、不参加で良かったならそれで良いじゃないか。

別に会議に参加するのが嫌というわけではないし、むしろ通らなければならない道ではあるのだから、良いんだけど。

 

このまま少し寝たいくらいだが、僕が外出している間シャナがどれくらい終わらせられたか、それが問題だったので、あと数分したら姉の部屋に向かうとしよう。

 

「……ユエ?」

 

足音はするから部屋の中にはいるんだけど、無言でパタパタと歩き回っている彼女に声をかける。

 

「何、アオ?」

「いや、君何してんの?」

 

ソファーから身を起こし、振り向く。

ちょうどクローゼットを開けていたようで、ユエはキョトンと僕を見ていた。

 

「え? 何が何処にあるかの確認をしてただけなんだけど…五月蝿かった?」

「逆。静かすぎて何してんのかと思ったんだよ。何か気になるものでもあった?」

 

そう問うと、彼女はうーん、と口元に指を当て少し上を向き、思い出しているようだった。

 

「大きいお風呂があって、ジャグジー付きっぽい。ダイニングキッチンもついてるから、ここでお料理出来そう。部屋はダブルベッドが置いてて、数部屋あったから…多分、家族用で想定されてるね、この部屋。あとは、クローゼットも大きいしハンガーもいっぱいかかってるから、持ってきた着替えとか全部かけられそう」

「よく短時間でそこまで見れたね、君…」

 

むしろ、見てないとこあるの? というくらいなんだけど。

 

僕はユエを手招きで呼ぶ。

彼女が素直にこちらに来たので、座っている横を軽く叩いた。

僕の意図がわかったのか、ユエはクスッと笑って僕の横に座る。

僕は横になり、彼女に膝枕してもらいつつ甘え始めた。

 

「アオってば…最近特に甘えん坊になってきてない?」

「そんな僕は嫌いかい? ユエ」

 

彼女を見上げながら言うと、フルフルとユエは首を横に振る。

 

「ううん。可愛いなぁ、って思って。いつも格好良いアオが、私に甘えてくれるの凄く嬉しい。大好き、アオ」

「僕も好きだよ、ユエ」

 

彼女の母性というのか、とても安心出来て心地良い。

頭を撫でられてそのまま寝そうだったので、僕は名残惜しいと思いながらも起き上がる。

 

「あれ、もう良いの?」

「心地良すぎて寝そうだから…コーヒーないかな…」

 

本当、うちの姉の面倒さえなければ、ユエに頭を撫でられつつ寝れたものを。

備え付けの棚にコーヒーあるよ、と彼女は言い、インスタントだったが入れてくれる。

入れる前と後に、そのコーヒーを凝視していたが。

 

「ユエ?」

「ん? あ、ごめん。はい、どうぞ」

 

何も入れていないコーヒーを渡され、それを飲む。

少し酸味があるが、気にならない程度なので美味しく頂いた。

そして彼女に問う。

 

「なんでコーヒー凝視してたの、君」

「城もだけど、アオに毒盛ろうとする馬鹿がいるから、警戒してるだけ。本当時代錯誤だよね、毒盛るって。まぁ、真正面から来ても太刀打ち出来ないからだろうけどさ」

 

今年のあの日も、確かにチョコが贈られて来てたけど…あの中に去年同様入れた奴いるんだろうなぁ…。

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