my way of life   作:桜舞

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293話『苦しい思いをさせて』

「そんなに警戒しなくても…」

「アオ、毒って結構キツイんだよ? 呼吸出来なくて苦しくなったり、全身痛くて高熱が出たり、血だって…」

 

ユエがそこまで言った瞬間、僕はコーヒーカップをテーブルに置き、彼女の正面に行って肩を掴んだ。

 

「ユエ、なんでそんな事知ってるの」

「え? 妃教育の時に、テスタロッサ夫人から慣らされた。鑑定のスキルもその時に習得したの。アオの妃になるのだから、味を覚えておいた方が良いって。あ、ちゃんと解毒の魔法は覚えてるから、そんなに心配しないで」

 

ニコリと笑い、彼女は肩に置かれた僕の手に、自分の手を重ねる。

僕はそんな彼女を見ていられなくて、掻き抱くように抱きしめた。

 

「ん、アオ、苦しいよ」

「…ごめん、ユエ。僕の為に…苦しい思いさせて、ごめん…っ!!」

 

いずれ王となる僕の妃というだけで、彼女に痛く、苦しい思いをさせてしまっていたなんて。

本当に、文字通り血も吐かせてしまっていただろう。

毒を飲んだ時、死ぬかもしれないと恐怖を抱いた彼女を思うと、涙が出てきた。

 

僕に泣く権利なんて、ないけれど。

 

だが、僕の腕の中で彼女はクスクスと笑う。

どうして笑うのだろうと、僕はユエから少し身を離した。

 

「アオ、泣かないで。私ね、確かに死んじゃうかもって怖かったよ。でも、こうも思ったの。これで死ななかったら、アオを守れる。アオに敵意を持つ奴らを、殲滅出来るって。そう思ったら、嬉しくて」

 

ユエは僕の頬に手を添え、妖艶に笑う。

流石立花の娘。

自分が大切だと思う者の為には、命すら捧げても良いという信念を持っている。

 

だけど、僕は。

 

「ユエ、命を軽んずるのは許さないからな」

 

多分、彼女に向ける目は厳しいものになっているだろう。

僕がそう言うと、ユエは困ったような顔になった。

 

「だから、夫人の特訓にも耐えたんだよアオ。今はね、毒を喰らっても耐性付いてるから簡単に倒れたりしないよ。私は、アオより先に死ぬつもりはない。出来れば一緒に逝きたいんだもの。ね、アオ」

 

泣かないで。

彼女は僕の首に腕を回し、囁いた。

涙で、ユエの姿がボヤける。

僕は彼女の肩に顔を埋め、静かに涙を流した。

 

◆◆◆

 

泣き止んだ僕へ、温めたタオルをユエは目にかけてくれる。

泣いた後こうしたら目が腫れないんだよ、って言っていた。

暫くそうしてから、僕はユエと一緒に部屋を出る。

 

ユエもと言ったけれど、食事とかの確認をしてくると親衛隊の所に行ってしまったので、僕は仕方なく一人でシャナの部屋の扉を開けた。

 

「グンジョウ…姉ちゃん、どうやって生きて来れたんだ?」

 

僕の姿を認めたシンクが、開口一番にそう言う。

一体何事、と思ったけれど、半分以上課題が終わっている状態で机に突っ伏しているシャナを見、僕は呆れた目を姉に向けた。

 

「シャナ、寝てる暇ないよ。本当なら、シャナは同行するはずじゃなかったんだから。同行しても良いって、おばさんが許可出したから来れたの、わかってる? 普通に終わらないって判断されたからなんだよ? 猶予はあと数日。観光したいなら早く終わらせようよ」

「……無理、死ぬ……助けてグンジョウ……」

 

おーおー、参ってやがる。

シャナが助けを求めてくるのは稀なので、僕は部屋に備え付けのメニュー表を手に取り見つつ、ツルギに指示を出した。

 

「ツルギ、ここからここまでの甘いもの全部頼め。後、ミルクティーとカフェオレ。砂糖付けられるなら、多めに…えーと、100グラムくらいで良い。それ全部この部屋に運び入れてもらえ」

「え……」

 

僕の指示に、ツルギがドン引きする。

そんな大量の甘味、シャナに食わせてどうするんだという顔だ。

だが僕は、シャナとは17年姉弟をしている。

こういう状態のシャナにどうすれば良いかなんて、分かりきっているのだ。

 

「頭が回り切っていない奴に、何を入れれば良いかなんて明白だろ? 僕はごめん被るけど、シャナは甘味が好物だ。適度に甘いもの与えて、課題終わらせろ。シンク、悪いけど後頼んだ。僕、あの甘味見たら吐く自信しかない。大丈夫、シャナは甘いもの食べた後には元の状態に戻るから」

 

僕はそう言い、部屋を出る。

滞在時間数分。

ユエは、と思って辺りを見渡すとまだ親衛隊と話しているようだった。

 

「ユエ」

「あれ、アオ? 早かったね? シャナちゃんは?」

 

声をかけると彼女は振り向き、不思議そうな顔をする。

僕は肩を竦めつつ、ユエの方に歩いて行く。

 

「死んでたから、ブーストかけるようにツルギに言伝して出てきた。流石に、甘味と一緒の空間にはいたくないし」

「本当甘いの苦手だね、アオ……あ、すみません。助かります」

 

エレベーターから上がってきた親衛隊の1人が、ユエにバスケットを渡していた。

それを受け取り、彼女は礼を言う。

 

「ユエ、それ何?」

「食材。今日は各自で取ろうって、シンクが言ってたってユタカから聞いた。ほら、シンクって星読みの力が少しだけあるでしょ? 何か嫌な予感したんじゃないかな」

 

さっき会ったけど、そんな事一言も言ってなかったんだが。

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