本当かよ、とも思ったが、ユエの手料理が食べられるなら黙ってようと思った。
まぁ、僕がこんな事考えてるの、ユエにはお見通しなんだろうけど。
僕は彼女と一緒に部屋へ戻る。
調理を開始したユエの背後に行き、彼女を抱きしめた。
「アオ? 危ないよ?」
包丁を持っていたユエは軽く振り向き、不思議そうに僕を見る。
だけど僕は彼女の肩に顎を置き、腕に力を込めた。
「別に怪我しても大丈夫。君が僕の為に食事を作ってくれるって、なんか新婚って感じしてさ。もー…ユエ可愛い、好き、愛してる」
僕がそう言うとユエはまな板に包丁を置き、手で顔を覆ってしまう。
耳まで真っ赤になっているので、照れまくっているのだろう。
「…まだ結婚してないのに…アオの馬鹿…! ご飯作れなくなっちゃう…っ!!」
「照れてる君も可愛いよ…っと、これ以上邪魔するのもいけないね。ご飯楽しみにしてるから。僕向こうでテレビでも見てるね」
ユエの首筋にキスを落とし、僕は彼女から手を離した。
そのままソファーの場所まで行き、腰を下ろす。
テレビをつけ、オーシアのニュース番組をぼーっと眺めた。
言語勉強してて良かった。
何言ってるか分かるし。
多分アオイさん、僕がオーシア語分からなかったらリューネ語に切り替えてくれたんだろうな。
あと、陛下への通訳もしてくれたかも。
…あれ、ツェリはいつの間にオーシア語勉強してたんだろ。
ニュース番組を見つつ思っていると、良い匂いがしてくる。
僕はユエに尋ねた。
「何作ってんの?」
「だし巻き卵と、豆腐とわかめのお味噌汁と、焼き魚。あとは今、鍋でご飯も炊いてるよ。他に何か食べたいのある?」
充分、と彼女に伝え、またぼーっとテレビを眺める。
ユエに名前を呼ばれ振り向くと、テーブルに先程言っていたメニューが並んでいた。
ソファーから立ち上がり、僕は椅子を引いて座る。
ユエも向かいに座って、いただきますと声を揃えて言い、ご飯を食べ始めた。
「…美味…っ! ユエ、また腕上げたんじゃない?」
ユエが作ってくれたご飯を食べつつ、僕は彼女を褒める。
焼き魚は絶妙な焼き加減だし、だし巻き卵も出汁が効いてて美味しい。
お味噌汁も美味しいし、ご飯の炊き具合も良い。
何より、このメニューは前世の僕が好きだったものだ。
オーシアでも、和風の調味料って手に入るんだー、なんて考えが頭の隅の方に追いやられるくらい、とても美味しい。
「ママに仕込まれたの。アオの口に入るものを自作出来なくてどうする、って。ママもテスタロッサ夫人に仕込まれたらしいよ? 王妃様がいつ命を狙われて殺されるか分からないから、王妃様が食べる物は全て貴女が作りなさいって。前世の話だけど」
「あー…成程。でもユエ? 君に負担が行くようなら、無理しなくて良いんだよ?」
してないよ、と彼女は微笑む。
ユエが作ってくれた食事を絶賛しつつ終え、洗い物もするという彼女をソファーに座らせて、僕が洗い物をする。
シャナと生活している中、これは僕の担当なわけで。
作らせた挙句、片付けもさせるとかただのクズでしかないとは、姉の持論である。
僕もそれには同意見なので、ユエにはゆっくりしててもらうとしよう。
「そう言えば…シャナ達食事どうしたんだろ…」
食器を洗いつつ、僕はポツリと呟いた。
「ユタカが纏めて作るって話してたよ。シャナちゃん、課題片付けるのに精神使ってご飯どころじゃないだろうからって」
本当うちの姉が面倒かけてごめん、ユタカ。
今度お詫びに、またシナモンクッキー作って渡してあげようかな。
洗い物を片付け、僕はユエの隣に座る。
僕の肩に彼女は頭を乗せ、尋ねてきた。
「お風呂一緒に入る?」
「入りません」
ちっ、と隣から舌打ちが聞こえる。
僕は呆れた目をユエに向けた。
「あと半年ちょっとなんだから我慢しろよ。それに、僕の理性が切れて君を襲ったって仮定するとだね? 君、高等部卒業して直ぐ子供産む事になるんだよ? それで良いの?」
「そんなに早くは出来ないよ」
甘い、甘過ぎる。
ユエはわかってない。
リューネ王族の男子が、どういう生き物か。
僕はため息をつき、彼女に懇々と説明してあげる。
「ユエ、良いかい? 母様は、結婚して一ヶ月で僕らを身籠ってるんだ。なんでかわかる? 毎晩毎晩、父様が母様を抱き潰していたからだよ。リーゼと僕らの年が五歳離れているのも、周りのゴタゴタでそういう事が出来なかったからだ。じゃなかったら、確実に年子か離れても二年か三年だったろうね。良い? 僕はその血を受け継いでいる。一回で済むわけないだろ。君が気絶しようが抱く自信しかないんだよ…もう…煽らないでってば…」
ユエの方を見ると顔を真っ赤にして俯いていた。
煽ってくるくせに、そう言われたら赤面して黙るんだから。
「本当、君の悪いクセだよユエ。良い子で初夜を待ってなよ。泣いたって離してやらないからさ」
彼女の頭を撫でる。
バッとユエは立ち上がり、お風呂入ってくると早足で部屋に置いてあった荷物を取り、そのまま風呂場と思われる場所に入っていった。