my way of life   作:桜舞

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295話『テンション上がって』

あまりの早さに、僕は腹を抱えて爆笑する。

しかし、危なかった。

あのままユエがまた煽ってきたら、押し倒していたに違いなかったから。

 

「マジで…僕の奥さん可愛い…っ! ぶふ…っ!! はははっ!!」

 

先程のユエの様子がツボに入って笑い転げていたら、風呂から上がってきたユエに頭を殴られてしまった。

 

照れ隠しだとしても、痛いんだけどなぁ…。

ユエが本気で殴ってきたら、痛いだけじゃ済まないのは分かっているが。

 

ユエと交代で風呂に入って上がってきた僕に対し、別の部屋で寝る、と宣言した彼女は、本当に別の部屋へ行ってしまった。

僕はユエの部屋になった扉越しに、彼女に声をかける。

 

「ユエ、一人で寝れる? 泣かない? 大丈夫? 寂しくなったら僕の所に来てもいいからね?」

「大丈夫だってば!! ……多分」

 

自信なさげだな、おい。

これ、確実に僕の所に来るフラグじゃないか?

別に良いけど。

 

おやすみ、と彼女に言い、僕はユエの真反対の部屋に入った。

部屋の電気を消し、テーブルランプを付けつつベッドに潜り込む。

収納空間から本を取り出し、開いて読み始めた。

 

せっかくオーシアに来たのだから、オーシア関連の本でも読もうと思って持ってきてたのだ。

まぁ、明日会議があるので、少ししてから寝るけれど。

 

パラ…パラ…と紙を捲る音だけが部屋にしていたが、キィ…と微かに扉が開かれる音がし、僕は顔を上げる。

ほんの少し開いた扉の隙間から、ユエがこちらを見ていた。

さながらホラーである。

シャナがここにいたら悲鳴をあげていた事だろう。

 

僕はそんな姉にホラー映画を見せられてきたので、耐性は付いている。

本を閉じ、ユエに微笑みかけた。

 

「どうしたの、ユエ? 寂しくなった?」

「……アオ、怒ってない?」

 

唐突にどうしたのだろうか。

大体、僕が怒ったらどうなるかなんて、彼女は理解していると思っていたのだけど。

 

「怒ってないよ。おいで、ユエ。もうそろそろ寝ようと思ってたんだ。添い寝してくれる?」

 

ユエは扉を開いて部屋に入ってくる。

ちゃんと扉を閉めて、僕の隣に潜り込んできた。

テーブルランプを消し、彼女に腕枕をする。

 

「なんで僕が怒ってると思ったの、君」

「いっつも同じ事やる私に、呆れたかなって…怒ったかなって、思って…」

 

暗いし眼鏡も外したからユエの表情がわからないが、僕は彼女を抱き寄せた。

 

「同じ事やるっていうならシャナもだから。あの姉と17年姉弟をしてるんだよ? あれで慣れたよ、もう……良い、ユエ? 君が何をやっても、僕は許すから。浮気も不倫も……まぁ、されたら僕に男としての甲斐性がなかったんだな、って落ち込むけど…」

「誰がアオ以外の男なんか見るか!! アオより格好良い人も、可愛い人も、私を異性として愛してくれる人もいないんだから!!」

 

ユエは僕の服を握り締め、声を荒げる。

わかったからと、僕は彼女の口を自分の口で塞いだ。

 

「ユエ、今は夜だから。そんな大声出さないで。君の気持ちは分かってるから、ね?」

「アオ…」

 

彼女は僕の胸に顔を埋め、甘えてくる。

ユエの頭を撫でつつ、僕は眠くなってきて目を閉じた。

そのまま、意識を手放してしまったらしい。

 

目を開けたら、もう朝だった。

 

「うわ…寝た気がしねぇ…」

 

さながら時間がワープしたような感覚だ。

 

隣にはもうユエはいなくて、何処に行ったのだろうと起き上がる。

サイドテーブルに置いてあった眼鏡を手に取り、顔にかけた。

 

ベッドから出て部屋の扉を開ける。

 

「アオ、おはよう」

 

髪を緩く横に流し、黒のシャツと緑のジャンパースカートを着たユエが、微笑みながら挨拶してきた。

僕も彼女に微笑みかけながら、おはようと返す。

 

「今日も可愛いね、ユエ」

「朝から口説かないでよ。朝食、シャナちゃんの所で取るって話になったみたいだよ」

 

一体いつの間に、と思ったが、アプリのグループメッセに載ってると言われ、僕は携帯を取りに部屋に戻る。

携帯を立ち上げ、メッセを見た。

確かにユエの言う通りの事が書いてあり、昨日で課題も全部終了したと書いてあったので、あとで姉を褒めてやる事にしよう。

 

着替えてユエと一緒にシャナの部屋に行くと、既にシンクとユタカが椅子に座っていた。

 

「よ、おはー」

「おはよう、ユエ、グンちゃん」

 

二人に挨拶をしようとしたら、テーブルに料理が置かれ始める。

あんまりにも大量なものだから、僕はそれらを運んできたツルギに聞いた。

 

「朝からこの量何」

「シャナが課題終わったテンションから…その…」

 

あの馬鹿姉。

テンション上がって何人前作るつもりだ。

 

「止めてこい、ツルギ。これ夕飯分まであるぞ。課題が終わって楽しくなってるのはわかるけど、セーブしろって言え」

 

テーブルの前のダイニングキッチンに、シャナはいない。

一体何処で作ってんだあいつ、と思ったら、空間歪めて人型になったルシィと異空間で作ってるらしいと、料理をまた運んできたツルギが言う。

 

「止めてこい!!」

 

語気が荒くなった僕へツルギは何回も頷き、シャナを止める為に異空間の中に入っていった。




夏マジックすごいっすね
終わんない…終わんないぜ…
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