my way of life   作:桜舞

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297話『白馬の王子様』

口説くな、と頭を叩かれたが。

 

ユエに渡されたスーツを着て、彼女と数名の親衛隊と共にエレベーターに乗り、階下へ降りる。

 

「シャナ達は?」

「私達が会議に行ってる間、観光するって。ユタカがはしゃいでたよ。乗馬体験出来る所があって、シンクに白馬の王子様ごっこしてもらうんだって」

 

羨ましい、そうポツリと呟く彼女に、僕は耳打ちした。

 

「リューネに帰ったら、一緒に乗る? 一応嗜みとして乗れはするけど。僕専用の馬もいるし」

「え、聞いた事ない…」

 

そりゃ言ってませんもん。

まぁ、僕アウトドアよりインドア派だから、そんなに外には出ないけどさ。

長期休みの日とかに、様子見に行ったりはしてるんだよね。

白馬ではないし、青毛と呼ばれてる品種の馬らしい。

僕の馬。

 

結構人懐っこい子で、あまり来れない僕を見ても顔を寄せてくれて、とても可愛い。

たまに乗っても、嫌がらずに乗せてくれる良い子だ。

 

ちなみに、父様のは白い馬である。

政務の合間に体が凝るからと、母様と散歩がてら遠乗りしていたりするらしい。

なんで白なんだと話をした事があるが、前に乗っていた馬が亡くなり、新しく馬に乗ろうと思っていたら母様が、

 

「そういえば、世間一般で白馬の王子様という概念があるのですって。白馬かぁ…あたし、栗毛とか芦毛とかは見た事あるけど、白いのは無いのよね」

 

と言ったからのようだ。

本当、母様至上主義なんだよな父様…。

 

「乗りたい。私、乗馬経験ないの」

 

ユエが目を輝かせ、僕を見上げる。

そんな彼女に僕は微笑んだ。

 

「まぁ、女性は乗る必要性ないしね。大体は男性がリードするから。それに、今の時代馬で移動するってのは滅多にないし。貴族とか王族の男性の教養ってやつかな。あ…馬乗れるのか? シンクの奴」

 

乗れなくても、乗馬体験で教えてもらえるだろうから、頑張れとしか思わないけど。

 

エレベーターが階下に着くと、入り口に留めてあったリムジンの前にツェリがいた。

僕らが彼女へ近付くと、ツェリは敬礼する。

 

「おはようございます。グンジョウ王太子殿下、ユエ様。お迎えに上がりました」

「おはよう、ツェリ。宜しく頼む」

 

はい、と彼女はリムジンの扉を開けて、頭を下げた。

僕らが乗り込むと、最後にツェリがリムジンに乗り込んだ。

その直後、発進する。

 

暫く無言でいたが、ユエが彼女に声をかけた。

 

「ツェツィーリエ様、こちらでお友達は出来ましたか?」

「え…あ、はい。良くして頂いている方が何名か…ですけど…」

 

なんでそんな質問をしてくるんだ、とツェリは困惑しているようだ。

ユエはそれを聞き、安堵の表情を浮かべた。

 

「良かった。ツェリちゃんがこっちで楽しく過ごせてるのなら」

「…ユエちゃん……うん…楽しい、よ。こんな私が楽しんでは、本来はいけないんだろうけど…」

 

そんな事ない、とユエはツェリの側に行き、彼女の手を握る。

 

「楽しんで良いんだよ、ツェリちゃん。国外追放になっただけで、ツェリちゃんの罪は償われてるんだから。アオが王位についたら、戻って来れる可能性だってあるんだよ?」

 

ニコリと笑うユエに、僕は思った。

 

それ、君が許せばの話じゃないのか?

恋敵って立場だろうに、ツェリは。

まぁ、僕は何も言わないけど。

ちゃんとツェリを振ってるわけだし。

彼女がリューネに戻りたいと言えば、戻そうとは思うけれど。

 

「…ありがとう、ユエちゃん。でも、お館様の用事でリューネへ行く以外は、戻らないよ。こっちの生活、楽しいの。この間、ケーネ君に稽古つけてたら彼ムキになっちゃって…ドラゴンの姿になったから、その姿のケーネ君の腕、折っちゃったんだよね……やり過ぎちゃった」

 

苦笑しながら言うツェリの言葉に、僕とユエはギョッとする。

 

あの姿のケーネ君の腕を折っただぁ?!

どれだけの膂力持ってんの君?!

え、じゃあ、あの時のツェリ本気出してなかったって事?

うわ、怖っ!!

 

若干引き攣り笑いを浮かべていた僕だったが、その様子に気付いたツェリが若干慌て始めた。

 

「ちっ、違うのっ! こっちに来てから、体内の魔力の運用方法とか、出力の仕方とか、リューネとは違ってたから、それを覚えていったら、こんな事に…っ!! あ、あの時は、本当に、本気でやってて…っ!!」

「いやぁ……ツェリが今、本気で僕を殺そうと思ったら出来るんだなぁ…」

 

しみじみしながら言うと、しないよぉっ!! と、ツェリは叫ぶ。

 

ユエも引き攣り笑いを浮かべていたので、ブンブンとツェリは首を横に振る。

 

「し、しないっ!! しないからね、ユエちゃん?!」

「うん…ツェリちゃんがアオを諦めてくれてて良かっ……諦めて、くれてるよね…? ねぇ、ツェリちゃん…? 諦めてる、よね…?」

 

若干彼女から必死さが伺えるが、ツェリはコクコクと首を縦に振った。

あれだけ僕に執着していたツェリだったが、やはり面と向かって振ったからか、今はちゃんと気持ちの整理がついているようだ。

 

まぁ、まだ好きだって言われても困るんだけど。

前に言った通り、僕の愛はユエにしかあげられないんだから。

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