オーシア城の中に入り、リムジンが止まる。
僕とユエはリムジンから降りて、城に続く扉の前で待っていたアオイさんと共に入城した。
僕ら専用となっている控室に通された後、暫く経ってから兵が僕を呼びに来る。
「じゃあ、行ってくるねユエ」
「うん、いってらっしゃいアオ」
ユエは部屋付きのメイドが入れてくれた紅茶を飲みつつ僕へ微笑み、見送ってくれた。
兵について行き、重厚な扉の前まで案内される。
扉の前にいた兵が、両開きの扉を開けた。
オーシアの各領主、ベルカの教皇、そしてツェーレスタイン女王陛下が部屋の中にいる。
僕は一歩中に入り、頭を下げた。
「お待たせして大変申し訳ありません。リューネ国、ナズナ・エキザカム・ブリリアントが一子、グンジョウ・デルフィニウム・ブリリアント、参りました」
「良い。そこへ腰を落ち着けよ、グンジョウ王太子殿下」
女王陛下が差した席に座る。
両隣はアオイさんと、ベルカの教皇で僕は若干肩身が狭いと感じた。
「では、議題だが…」
各国の代表と国の領主を集めの話し合いは様々なもので、技術革新や環境問題、経済や貿易など。
僕も意見を求められたので、若輩者の意見で恐縮ですがと前置きをし、議題への意見を述べさせてもらった。
大体三時間くらいで一回お開きになり、昼休憩を挟む事になったので、僕は控え室に下がらせてもらう事にする。
「ただいま…」
「お帰りなさい、アオ。疲れてるね? 大丈夫?」
控え室の扉を開けて中に入ると、ユエがソファーから立ち上がってこちらに来た。
なので彼女を抱きしめつつ、僕は深いため息をついてしまう。
「疲れた…本当に疲れた…また午後からも会議あるんだよ…? 不参加で良かったなら、僕来る意味あったか?」
「はいはい、お疲れ様。帰ったら甘やかすから、あと少し頑張ってアオ」
ぽんぽんと僕の背中を軽く叩き、ユエは苦笑した。
僕のあやし方、シャナにでも教わったのか?
「今甘やかせよ…」
「お昼ご飯食べたらね。ほら、親衛隊の人達が並べてくれてるから食べよ? 会議に遅れたら大変でしょ?」
彼女の言う通りなので、僕は食卓につく。
ユエは少し料理を凝視し、大丈夫と言った。
流石にオーシアの城内で毒殺を図る馬鹿はいないとは思いたかったが、彼女が警戒しているのだから大人しく従うとしよう。
食事を終え、少しの間ユエに甘えた後、僕は午後の会議に参加する為部屋を後にする。
その会議は更に時間が延び、終わったのは外が暗くなってからだった。
取り敢えず、リューネとは引き続きベルカもオーシアも和睦を結んでくれるとの事なので、こちらとしては一安心かなとは思う。
本当、肩の荷が降りたよ…。
ユエと共にホテルへ帰ろうとしていたら、親睦を深める為のパーティーに女王陛下から誘われた。
一回ホテルに帰ってからと返事をしようとした所、ユエが僕に微笑みかけながら言う。
「殿下、準備はこちらでしておりますので」
彼女の言葉に僕は表情を変えず、微笑みを返す。
女王陛下に出席する旨を伝え、僕らは一旦控え室に戻った。
「いつの間に」
扉を閉め、先に部屋へ入ったユエの方を振り返る。
彼女は苦笑いしながら、
「いやぁ…シンク様々だよね…精度上がってきてるんじゃないのかな…。アオが会議に行った午後に、シンク達に付いてってる親衛隊の一人がこっちに尋ねてきてさ。私とアオの正装持ってきたんだよね。なんでって聞いたら、シンクが持ってけって言うからだって。私達のそういう荷物はメイド達が預かってくれてるから、そこから出してもらったって言ってた」
と言った。
私服や私物は自分達で持ってきてはいるが、正装やスーツなどの管理はメイド達の領分なので任せてあったのだ。
成程、シンクが持って来させたのか。
「リューネに一回帰ったら、おばさんに言って精度測ってもらったら良いんじゃないか、あいつ?」
それはそう思うと、ユエも頷いた。
僕が先に着替え、一旦親衛隊と共に外へ出る。
十数分してからメイドに入っても良いと言われたので、部屋の中へ入った。
光に当たると生地に縫われたスパンコールが輝く、蒼色のドレスを身に纏ったユエがそこにいた。
髪も緩く巻いて、横に流している。
ドレープというのだろうか?
ドレス部分が波を打つような感じの装飾で、僕は思わず自分の顔を覆った。
「アオ? あの、似合わないかな?」
「ううん…綺麗過ぎて…僕の奥さん美しい…!」
僕の様子に若干不安になったのだろうユエが声をかけてくるが、僕はその言葉を否定する。
いつも通りの僕だったので、ユエは呆れたようだった。
「それ王太子用のやつだよね? 私の旦那様も格好良いよ」
顔から手を外し彼女の方を見る。
ニヤリと笑ったユエに、僕も笑う。
「やっと僕の口説きに慣れてきたの? ユエ」
「慣れるものと慣れないものがあるよ……って、寄らないで何する気?!」
ニコニコ笑いながらユエに近付くと、その分彼女は離れる。
なんでそんなに警戒する必要があるのか。