my way of life   作:桜舞

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299話『君酔ってない?』

「何もしないよ。エスコートさせてくれない? それとも君一人で会場に行く?」

「……エスコートお願いします」

 

ユエが僕の腕に手を絡めてきたので、彼女につい出来心で、耳元へ囁いてしまった。

 

「本当綺麗で、とても可愛いよ。君は何を着ても美しい。そんな君の夫になれる僕は幸せ者だね」

「っ!! だからっ!! 口説かないでって言ってるでしょ?!」

 

顔を真っ赤にして怒鳴ってくるユエが可愛くて、僕はクックッと笑う。

彼女はムスッとして、僕から顔を背けた。

 

「悪かったよ、ユエ。機嫌直してくれない?」

「やだ。アオ意地悪だもん」

 

可愛いからこそいじめたくなるんだけど、これじゃルージェの二の舞か。

僕は彼女の手に自分の手を添え、謝る。

 

「ごめん、ユエ。僕が悪かった。着替えてしまった後だけど、このままお帰り? 君に不愉快な思いをさせてしまった僕と一緒に出たくはないだろう? パーティーには僕一人で出るから」

 

そう言うと、ユエがムッとした表情のまま、僕を睨みつつ言った。

 

「…アオ、私が怒ると毎回そう言うよね。別に、そのまま連れ回せば良いのに…あのね、アオ。貴方は優しすぎる。私がムッとしてても怒ってても、この子はこういう子なんだ、仕方ないんだって思ってよ。気を遣わなくて良いの。僕の婚約者は短気な所が欠点なんですって、周りに触れ回れば良いんだよ」

「いや、怒らせたの僕なのに…」

 

それに、そんな欠点も含めて僕はユエの事を愛している。

だが、彼女の欠点を周りに触れ回るなんて事、どうして出来ようか。

そんな彼女の魅力に、他の男性が気付いたらどうするんだ。

 

「…アオ? こんな短気な女、いくら顔が良くても普通の男性はごめんだと思うよ? 何が導火線になって爆発するかわからないのに。それを面白がって、可愛いと思うのはアオだけだと思う」

「思考を読むなっての。あと普通の感覚してなくて悪かったな。短気だろうが何だろうが、それを含めて君は可愛いんだから仕方ないだろ。あと、僕がおかしくなって狂ったとしても、君は僕を愛してくれる?」

 

当たり前だと、ユエは返してくれる。

僕はそれに対して、彼女へ微笑んだ。

 

同じ気持ちを持ってて、嬉しくなったから。

 

◆◆◆

 

親睦を深めるパーティーには、オーシアの勇者召喚で呼ばれた沖田青葉がいた。

まぁ、次代の女王である姫もいるからその護衛なのだろう。

あまり近付きたくはなかったが、女王陛下の近くに立っているものだから、あまり視界に入れないようにしようと思った。

 

「ツェーレスタイン女王陛下。ご招待頂き、誠に有難うございます。こちら、私の婚約者で立花月と申します。ユエ、ご挨拶を」

「お初にお目にかかります、女王陛下。立花夏月が一子、立花月と申します」

 

カヅキおばさんの名前を聞いて、女王陛下は少し苦笑いをする。

何故? と表情を変えず疑問に思うが、女王陛下が口を開く前に、勇者が僕に話しかけてきた。

 

「やぁ、グンジョウ殿下。シャルロット王妃殿下はお元気でしょうか? 寂しくお過ごしになってはいませんか?」

「勇者アオバ……えぇ。相も変わらず、王妃殿下は陛下と仲睦まじく過ごしておりますよ。寂しいなんてとんでもない。あまりの仲睦まじさに、思わず目を背けてしまうくらいなのですから」

 

本当、僕とか他の兄弟姉妹がいるにも関わらず、所構わずイチャつきだすの、どうにかならないだろうか。

両親がイチャつきだしたらその場から去る、というのが僕らの暗黙の了解になっている。

 

そうですか、と少し彼はしょんぼりしていた。

母様が寂しく過ごしているとなったら、父様の魔の手から救い出そう、とでも考えていたんだろうか?

ベルナール卿もだったが、ちゃんと相手の様子を見てから発言しろと思う。

 

なんであの母様が、父様と仲が悪いだの寂しく過ごしてるだのと思うのだろうか。

むしろ逆だよ、逆。

お互いを想いあって、いつも一緒に行動しているというのに。

あれを比翼連理の鳥と形容するのだろうな。

 

女王陛下の前から辞させてもらい、僕らはオーシアの各領主に挨拶して回る。

皆ユエの事を知っていたようで、大きくなったな、とか、ユタカは元気かと聞いてきた。

流石ユエ、というか、カヅキおばさんの故郷である。

 

「ユエ、女王陛下には会った事なかったの?」

 

領主達への挨拶回りを終えて、僕はこっそり彼女に尋ねた。

ウェイターからジュースをもらった彼女はそれを少し煽り、ふわっと笑う。

 

「会った事ないよ。だって、ママに連れられて行ったのって領主だけの会議の時だし、その時の私とユタカ、幼かったもん。それに甘えっ子でねぇ…パパ嫌、ママが良いって泣いちゃったんだぁ」

「…ちょっと待てユエ。君酔ってない?」

 

へ? と返す彼女の頬が軽く赤くなっていた。

ユエの持っているグラスに顔を近づけ、匂いを嗅ぐ。

アルコール特有の香りがして、僕は呆れた目を彼女に向けた。

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