my way of life   作:桜舞

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30話『自惚れてもいい?』

魔力痕とは、相手との同意の元に付けることが出来る魔力の痕である。

普段は見えないが、魔力感知が高い人は見えてしまうらしい。

嫉妬深い恋人や夫婦が、相手は自分の物だという証として用いられる事がある、なんて聞いてはいたが。

 

え、無意識で付けた?

嘘でしょ?

 

ユエの方を見ると、顔を逸らされた。

それに少しショックを受ける。

 

ユエ、もしかして嫌だった?

僕からされるの。

うわ、誰か僕を埋めて…!

 

自己嫌悪に陥り、僕はその場に蹲った。

 

「グンちゃん?! ど、どうしたの? もしかして、私がキスしたの嫌だった?」

「……嫌だけど、それ以上にショックな事あったから…ちょっと、放っておいて…」

 

ユタカに護衛の件を伝えなきゃいけないんだけど、ユエから顔を逸らされた事の方が重要だ。

嫌われてはいないけど、好かれてもいないような気がする。

 

僕は深呼吸を繰り返し、呼吸を整えた後立ち上がった。

 

「グ、グンちゃん…?」

「シャナには、ツルギという男が護衛につく事になった。ユタカ、君はこれから僕の護衛になる。あまり羽目を外しすぎないように…」

 

そう言う僕に、ユタカは抱きついてくる。

だから、そういう事するなって言おうと思ったのに。

 

「やったーっ!! ユエ、これからは抜け駆け禁止なんだから! わかった?!」

「だから抜け駆けも何も、アオちゃん次第だって言ったじゃん。私達がアオちゃんに恋していた所で、決めるのはアオちゃんなんだから。あとユタカ、アオちゃんが私達以外の人と恋に落ちても、応援するって約束してくれない? 私、アオちゃんが幸せなら自分の幸せはどうでもいいの」

 

冷ややかな目で、ユエはユタカを見ながら言った。

目が少し、何かを堪えるように揺れてはいたが。

 

見てられない。

そんな目をさせたいわけじゃない。

振られても構うもんか。

僕は、ユエが好きなんだから。

 

「ユタカ、離せ。ユエに話がある」

 

僕の低い声に肩を揺らしたユタカは、僕から離れる。

ユエの方に手を差し出すと、近寄ってきた彼女が恐る恐る僕の手を取った。

その手を握り、彼女を引き寄せる。

そしてその耳元へ小声で

 

「ユタカも知らない場所に行きたい、二人だけで」

 

と言った。

ユエは少しだけ頷いて、僕と共に転移する。

 

そこは洞窟のようだったが潮の匂いがするため、どこかの海の近くなのだろうと推測できた。

 

「で、アオちゃん。話って?」

「あのさ、ここ本当にユタカ来ないよね? ちょっと真剣な話するんだけど」

 

彼女に尋ねると、頷く。

 

「トリスタンの領地の一角にあるけど、ここの洞窟の事は私しか知らない。ママも知らないと思う」

「そっか」

 

僕はユエに向き直り、聞いた。

 

「ユエは、僕の事を好き?」

「好きだよ」

 

そんな無表情で言われても…。

言葉が信憑性を伴わないんだけど…。

 

「…僕がここで死ぬって言ったら、君はどうする?」

「……馬鹿な事言わないでくれない? アオちゃん、死にたいの?」

 

ユエの無表情が揺らいだ。

少し怒っているような、悲しそうな、複雑そうな顔だ。

 

「別に。死にたいわけじゃない。でも、ユエはどう思うんだろうと思ってね。ここで僕が死んだら。悲しんでくれるか、もしくは僕を忘れて別の男と婚姻を結ぶのか…」

 

そう言った瞬間、ユエから平手打ちされた。

初めて彼女から殴られたので、僕は驚いて彼女を見つめる。

 

「っ!! 馬鹿言わないでよっ!! なんで私がずっと我慢してたと思ってるの?! アオちゃんが一番幸せになれる人と結婚して欲しいから、ユタカの事だって牽制してたっていうのに!! 私が一番アオちゃんの事好きだよ!! 貴方が死ねっていうなら、今すぐ死ぬよ!! 一緒に死んで欲しいというなら、一緒に逝くの!! その覚悟くらい、あるのに…」

 

言いながら、ユエは座り込んでしまった。

嗚咽混じりの声で、彼女は言葉を紡ぐ。

涙が、岩肌にポタポタと落ちていった。

 

「どうして、そんな意地悪な事を言うの…? 私は、貴方に幸せになって欲しいだけなの…。死んでなんてほしくないのに…。ずっと、貴方だけなのに…どうして…っ!!」

「ユエ」

 

彼女を抱きしめる。

涙が僕の服を濡らしていくが、気にしない。

 

「自惚れてもいい? 君は僕の事を好きなんだって。僕もね、朝自覚したばかりなんだ。ユエ、好きだよ。愛してる。君以外と幸せになるイメージが持てないんだ。僕と将来を歩んでくれないかな。死が二人を分つまで」

 

ユエが僕の服を掴む。

そしてポツリと呟くように僕へ言った。

 

「私、かなり面倒くさいと思う。アオちゃんが呆れてしまうくらい。妃教育だろうが何だろうがするけど、それでも何処かで、やっぱりやめようってなると思うよ」

「あのさ、君との付き合い何年だと思ってるの? 君の性格もわかってるよ。いや、お祖母様の所に行った後から読めなくなったけど。それでも、変わらないし、他の男に君を渡すなんて冗談じゃない。僕は君のものだし、君は僕のものだ。ねぇ、ユエ。愛してるんだ、誰よりも」

 

彼女の顔を上げさせ、キスをする。




予定よりだいぶ早く、二人をくっつけてしまった…
だって、ユエが前書いた話より暴走してくれなくなったんだもの…
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