「あら、他国の王太子殿下だと申し上げたでは有りませんか。リューネでは有名な、ナズナ陛下とシャルロット王妃殿下のご子息ですもの。それに、こちらでも有名な立花博士のご教授も受けていると、ユエから聞かされてますし。貴方方が、ユエを忘れられないとか惚けた事を仰るから、その婚約者である殿下と決闘なさっては? と進言しただけです。それに対して是と答えたのは貴方方ですわ。少し調べればわかる事ですし、私悪く有りませんわ」
情報収集を怠ったのはそちらだと言わんばかりの言い分に、男性はキレ散らかしていたが、僕の袈裟斬りを喰らい、地面に倒れ伏す。
あと数名となった所で、僕は彼らに聞いた。
「まだやりますか? それとも、降参しますか?」
「グンジョウ優しいー。思い上がった奴らは叩き伏せてしまえって、カヅキおばさん言ってたよ?」
シャナがおばさんの名前を出した瞬間、男性達は震え上がる。
おばさん、こっちで何やったんですか…?
それに昨日の女王陛下の様子も気になるんだよな。
アオイさんに尋ねてみるべきかなぁ。
なんて思考に耽っていたのだが、その隙を見てか男性達が僕に突撃してきた。
まぁ、そんな事は作戦の内だが。
僕は、魔武器であるブランシュとノワールを投げつけ、操る。
足やら腕やらをスパンと一刀両断された男性達は、痛くてその場でのたうちまわった。
うん、わかるよ。
痛いよね、足とか腕とか飛ばされたら。
僕はもう慣れたけど。
「はい、終了です。皆さん惨敗ですね。ユエを奪うなら殿下を倒さなければなりませんけど、無理だってお分かりになられましたか?」
防死の結界が解かれる気配がする。
僕は金髪が揺れる所まで行って、眼鏡を返してもらい、顔にかけた。
そしてユエへ弁明する。
「ユエあのね? 君が醜いとかの話をしてるわけじゃなくてね?」
「うん、シンクから説明された。美人は三日で飽きて、ブスは三日で慣れる。容姿の美醜は恋人選びにおいて些細な問題で、中身を見て選ぶべきだって意味なんだよね?」
そうそう、と僕は頷いた。
シャナは確かに美人の分類には入る。
だがそれを隣で17年見てきた身としては、もはや見慣れた顔としか思わないわけで。
美人なのは認めるけどね、くらいの認識だ。
「アオ、私は?」
「君? 最初は鬱陶しかったけど、今はとても可愛い僕の恋人で婚約者。いずれ妻になってもらって、一緒に死ぬつもりの運命の人」
言い切ると、ユエが少し照れたようで顔を俯かせた。
あー、可愛い。
抱きしめたい。
人前でやると怒るから出来ないけど。
そう思っていると、ユエが俯きながら腕を広げてくる。
耳まで真っ赤になっている所を見るに、恥ずかしいけど抱きしめても良い、と言う許可を出してくれたのだろう。
僕は彼女を抱きしめ、頭に頬擦りする。
「可愛い。大好きだよ、ユエ」
「ん…私も…」
ユエは僕を抱きしめ返し、胸へ顔を埋めてきた。
本当可愛いなぁ、僕の恋人は。
動作の一つ一つが愛らしい。
そういえばと、ふと気になった事を彼女に尋ねた。
「ユエ、二日酔いとか大丈夫かい?」
「ん? うん。頭痛くなってないよ。私、お酒強いというか…抜けるの早いの。というか、それ今聞く?」
ユエは僕を見上げつつ、ちょっと眉を寄せていた。
それに対して謝罪する。
「ごめんね。これが頭の中占めてて、君の体調まで気を回せなかった。僕、酒飲んだ事ないから…どうなるかわかんないんだよね。父様と母様は酒強いらしいんだけど、飲んでる姿あんまり見た事ないから本当かどうか怪しいし…」
むしろ彼女の前で醜態晒したらどうしよう、という懸念まである。
飲まないという選択肢もあるにはあるが…。
「ちゃんと介抱はするよ?」
「おかしくなったら本当ごめん…」
そんな僕らのイチャつきぶりに、ソーニャ嬢はまたクスクス笑うのだった。
◆◆◆
そんな感じで日々は過ぎて行き、僕らがリューネに帰る日になった。
航空艦に乗り込み、帰国までの間ラウンジでユエとお茶をする。
あの後ソーニャ嬢から、ユエが幼等部に入ってから初等部までの間の話を聞けたのは、良かったのだが。
「ユエに告白する奴ら、多すぎじゃないか…?」
「それ言うならユタカもだよ。私だけじゃないし」
ラウンジでお茶を飲みつつ、僕はガクリと肩を落とした。
彼女に想いを告げてきた連中の容姿やら何やらを聞いてたのだが、僕は段々落ち込んでくる。
本当、こんな僕で良いのだろうか彼女は?
中には、僕以上のスペックを持っている男性もいたというのに。
確かに彼女達は美少女だから、付き合いたいという欲求は理解出来るけども。
「んー…アオに振られたのが私だったら、そいつらの誰かとは付き合って結婚してたかもだけど。でも、私もユタカも、今とても幸せなの。好きな人に愛されてるって、素敵な事なんだよアオ?」
テーブルに肘をつき、ユエはニヤリと笑う。
「君に選んでもらえて光栄だよ、ユエ」
「それは私も。貴方と一緒に歩めるなら、辛く険しい道でも余裕な顔して歩いてみせる。アオの事が世界で一番大好きな女の覚悟、ナメないでよね?」
彼女の言い分に、僕も笑った。
ナメてないよ、と返事をしながら。