my way of life   作:桜舞

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307話『まじキツかったんだって!』

「アオ。貴方が何かする前に、私が相手をボッコボコにするから安心してね。大丈夫、正当防衛の範囲内でやるから」

「…もう諦めたから言わないけどさ。君に何もされたくないんだよ。君、自分が可愛いの自覚してる?」

 

僕がそう言うと、前の席にいたシンクがやれやれと肩を竦め、隣の席にいたユタカとイチャつき出した。

 

ちなみに今、航空艦の中には僕らだけしかいない。

母様が、嫌な予感がするから貸切にするよう、おばさんに言ったからだった。

なら、王族専用艦を出せば良いだろうにとは思うが、そっちは父様が公務で使うらしい。

 

散らばれば良いのに固まって話すあたり、僕の姉弟は本当兄弟想いだ。

嫌な思いをするであろう僕を、気にかけてくれているのだから。

 

その内、ローレンツ領の空港に到着する。

僕らが空港内に降り立つと、見たくない顔が僕らを出迎えた。

 

「話には聞いていましたけど、うちの領に何の用ですかねグンジョウ殿下?」

「ザック・ヘリオドール・ローレンツ…」

 

僕らがこの時間、この場所に来るとよく分かったものだ。

学園の寮でぬくぬく過ごしてくれてたら、良かったのに。

 

ゲンナリしている僕を無視し、彼はローシェンナ色の髪を掻き上げ、女性陣に笑いかける。

その瞬間、ブワァとキツイ香水の匂いがして、僕は眉を寄せた。

 

「やぁやぁ、シャナ姫殿下にユエ嬢とユタカ嬢じゃないか。我が領にようこそ。そんな冴えない奴らから離れて、私と共に行こうじゃないか。今の時期、我が領では」

「その口を閉じろ、ザック・ヘリオドール・ローレンツ。私達はお前ではなく、お前の家に用があって来た。それに、お前に無駄口を許した覚えはない」

 

シャナが一歩前に出て、ザックを威圧する。

確かあの時も、シャナが僕を庇うように前に出て、威圧したんだったか。

 

「…姉の影に隠れて傍観するなんて、みっともないですねグンジョウ殿下」

「ローレンツ子息、それ以上は殿下への不敬罪に当たります。姫殿下が口を閉じろと言ったのです。大人しく従う事をお勧めします、が…これ以上何かを言うつもりなら、王家守護役の立花夏月の娘として、実力行使も有り得ますよ」

 

ユエも僕の前に出て、ザックを睨みつける。

いや、彼の言う通りなんだけど、僕が何か言えば更に煩くなるのは目に見えてるから、黙ってるだけだ。

 

「ぐっ…!」

 

ユエの方を見つつ、ザックは悔しそうな顔をする。

そして彼は僕を睨みつけた。

 

対して僕は、馬鹿にしたような笑みを浮かべてザックを挑発してやる。

まぁ、睨みがキツくなっただけだけど。

 

「…ふん! ……迎えの車を待たせてますので…」

「結構。王族に不敬を働く貴様と同席させるなど、兄君や姉君が許しても、弟である俺が許さん。お前はゆるりと家に帰って来るがいい」

 

シンクはそう言い、指を鳴らす。

瞬間、目の前の景色が変わり、ローレンツ家の門の前に僕らはいた。

 

「シンク大丈夫か? 空港からここまで、結構な距離のはずなんだけど…」

 

僕は背後にいた弟を気遣う。

だがシンクは、思い切り顔を顰めて言った。

 

「いや、だってさ。あいつの体臭まじキツかったんだって! シャナが咄嗟に防いでくれてたけど、あれ吐くレベルだっつの! あれと同じ空間にいるくらいなら、多少魔力削った方がマシ!!」

「確かに…色んな匂いが混ざって、眩暈を覚える程でしたね…。ムスクとシベットと…ケトンとシダーウッド…くらいしか分からなかったです」

 

むしろ、そこ嗅ぎ分けられる君が凄いよツルギ…。

香水の種類なんだろうけど、そんな詳しい方じゃないから言われても分からない。

そこも、要家の技術というやつだろうか?

 

取り敢えず、門番に中へ入れてもらうよう言う。

僕らが来る事は事前に通達済みだからか、素直に通してくれた。

 

「これはこれは、グンジョウ王太子殿下ご一行様ではありませんか! おや? 息子を迎えに寄越したはずなんですがねぇ?」

 

髭を整えたほっそりした身なりの男性が、僕らを睨め付けるように見る。

僕らが子供だからと下に見ている、というわけではない。

この男、ラウリ・オブシディアン・ローレンツは、僕だけでなく王族に対して良い感情を持ってはいないのだ。

 

まぁ大方、父様の代になって甘い汁を吸えなくなったからだろうけども。

 

別に、父様が圧政を敷いた、という事はなく。

ただ、法の改正や見直し、各領の視察に加え、民からの話を聞き、領主から提出されたものと見比べて判断を下しただけだ。

 

そのせいで贅沢が出来なくなったと、そちらの方面で恨まれているのだ王家は。

領民に圧政を敷く事の方が間違っているのに、気付かない馬鹿も多い。

その筆頭がこの男だと、父様は毎度陳情書というか、前の体制に戻すべきだという意見書を見て、頭が痛そうにしながら教えてくれた。

 

「早めにこちらへ伺いたかったものですから。これから捜索しますが、邪魔だけはしないよう申し付けておきますね、ローレンツ卿」

 

僕が微笑みながら言うと、面白くなさそうにローレンツ卿はふん、と鼻を鳴らす。

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