本当親子共々そっくりだな。
せめてもう少し、建前というものを取り繕ってくれないだろうか。
いい大人なのだから。
僕は表情を変えず、では、と少しだけ会釈してからその場を皆と共に去る
捜索の組み分けの話し合いで、恋人同士で行動しようという事になった。
ザックが帰ってきてユエへ変に絡まれるのも嫌だったし、シンクもツルギも、自分の恋人に絡まれるのを良しとしなかった為である。
とりあえず、僕とユエは寝室方面を捜索する事にした。
「ローレンツにある魔王の遺物って何だろうね?」
「さぁ…? でも碌なもんじゃないとは思うけど」
ユエと一緒にザックの寝室内をくまなく探してはいるが、何もない。
まぁ、あったら困るんだけど。
引き出しを思い切り締める音がし、僕はそちらを振り返った。
そこにはユエがいたが、彼女は肩を震わせている。
一体何があったのかと思った僕は、ユエの傍に歩み寄った。
「どうしたの、ユエ?」
「ア、アオぉ…っ!!」
若干涙目の彼女に少し驚き、宥める為にユエを横抱きで抱え上げる。
もう一度どうしたのか尋ねると、彼女は僕の首に腕を回して抱きついてきた。
「つ、机の中、気持ち悪いのあったぁ…っ!! やだぁっ!! 怖いぃっ!!」
机? と首を傾げた僕は、ユエを抱えたまま片手で引き出しを開ける。
そこには、ユエの隠し撮りの写真がたくさん入っていた。
ついでに、アレも。
僕はユエを床に降ろし、少しだけ離れてもらった後、脚力強化を施した足でその机を粉砕する。
粉砕しただけでは気に食わず、炎魔法で消し炭にもしてやった。
「あ、やべ。証拠撮っとけば良かった…」
というか、なんでアレあったんだ?
何かの呪いか?
何にせよ、次ユエをそんな目で見ようものなら殺すぞ、ザック。
「あんなの撮らなくていい!! 王妃様の気持ちわかった…好きな人にされるならともかく、別に知り合いでも何でもない奴からされるの本当に最悪!! しかもアレ置いてあるって…やだキモい!! アオがするならともかく!!」
キモいキモいと言いながら、ユエは僕に抱きついてくる。
そんな彼女の頭を撫でつつ、苦笑いを浮かべた。
「…あの、流石に男の僕でも引いてるんだけど。盗撮はないなって……一応、買って置いてはあるけど…」
「は?! なんで持ってんの?! 誰かと使うつもりだったわけ?!」
引き出しにあったアレを見て、最後の方は小声で言ったつもりだったが、ユエにはバッチリ聞こえていたようだ。
瞬間的に胸ぐらを掴まれ、睨まれる。
「お前以外いるかよ!! 理性切れて襲っても流石に…っ!!」
それを聞いたユエは顔を真っ赤にし、僕から手を離して顔を覆い俯いてしまった。
僕も若干気まずくなって、顔を背けてしまう。
「あの…私の事考えてくれて…嬉しい、です…」
「あー…うん…」
考えないわけないだろうに。
ユエを抱きたいのは本心だし、もし理性が切れて彼女に無体を働く事になったとしても、使わないなんて選択肢はない。
むしろ、ユエに無体を働いた事後、僕は腹を掻っ捌いて詫びるしか道はないのだが。
一応保険として買ってあるだけで、使われる事がない事を切に祈る。
◆◆◆
寝室方面には何もなかったので、僕とユエはシンクとユタカがいるであろう娯楽室方面に向かう為、玄関ホールまで引き返した。
しかし、その時ちょうどザックが帰ってきたようで、鉢合わせしてしまう。
「おや、グンジョウ殿下にユエ嬢ではないですか。よくも私を置いていってくれましたね?」
「……っ!!」
ユエはザックを見た瞬間、先程の事を思い出して気持ち悪くなったのか、口元を手で押さえて彼から顔を背けた。
匂いがキツかったのもあるだろう。
ザックは彼女の様子を見て、嫌な笑いを浮かべる。
「ユエ嬢? どうかされましたか? ご気分が悪いようでしたら、客室に案内しましょうか?」
彼がユエの方に一歩近づいた瞬間、僕は彼女を自分の背に隠した。
「それ以上私の婚約者に近付くな、ローレンツ子息。先程貴様の部屋を捜索させてもらったが…あれは何だ? 私の婚約者に思慕を抱くのは勝手だが、ベルナールの件を耳にしていないとは言わせんぞ。二の舞になりたくないのなら、自重する事を覚えろ」
ベルナールの件、と聞いた途端、ザックは歩みを止めた。
魔王関連を除けば、グレゴワール・セレンディバイト・ベルナールが処刑された理由は、王妃殿下である母様へ不敬を働いたからである。
再三、王家からやめるよう忠告されていたにも関わらず、それでも母様へ執着していたから処刑されたのだと、国民には通達してあった。
そして、いつもの僕は彼に対して言い返さず、傍観するだけに留めている。
火に油を注いだ所で、煩さが倍増するだけだから。
僕が何かを言う前にシャナや、ユエが言い返してくれているという所もある。
しかし今ばかりは、僕は彼に対して物を言う。
「殿下。なら、ご婚約者様であるユエ嬢がそうなっているのは放置なさるのですか? 別に私に下心はございませんとも。ただ客室に案内するだけですよ」
僕を馬鹿にしたような顔をしながら、ザックはまた一歩こちらに来ようと歩を進める。