my way of life   作:桜舞

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309話『ごめん、アオ』

「聞こえなかったか、ローレンツ子息。近付くなと私は言ったな? それに、もう一度言う。お前の部屋を捜索した、その意味が理解出来ないか? 証拠は押さえてある。言い逃れしようとしても無駄だからな」

 

ぐっ、と悔しそうな顔をしながら、ザックはまた止まった。

玄関ホールの騒ぎを聞きつけてか、捜索が終わったのか。

娯楽室方面からシンクとユタカが現れた。

 

「ユエ!」

 

自分の妹の様子がおかしい事に気付き、ユタカが駆け寄ってくる。

 

「ユタカ…」

「大丈夫、大丈夫だよユエ。ユエの事は、グンちゃんが守ってくれるからね」

 

ユタカはユエを抱きしめ頭を撫でた。

そんな二人を隠すように、シンクが僕の隣に来る。

 

「何事、これ?」

「後で僕の記憶でも読んでくれ…ローレンツ子息。私からの憐れみだ。証拠は押さえさせてもらったが、物品は処分して置いてやった。感謝すると良い」

 

それを聞いた瞬間、ザックは自分の寝室方面に駆け出して行った。

次に文句言ってきたら殺そう、と僕は内心誓う。

 

シンクは僕の肩に手を置き、記憶を読んだようで物凄く顔を顰めた。

 

「…ユエ…グンジョウに思いっきり甘えた方が良いわ、これ…流石に俺も気持ち悪い。てか、よく耐えたなグンジョウ。俺同じ事されたら、問答無用であいつ焼き殺してるわ…」

「殺したい気持ちは大いにあるよ。でもね、シンク。もっとボロを出してもらわないと、殺せないじゃないか」

 

学園の中とはいえ、僕に対して馬鹿にしたような態度は取るし。

僕の婚約者のユエに対しては、盗撮だの何だのやらかしてるし。

あともう一つ何かやらかしてくれないと、処罰出来ないだろうに。

 

ニィ…と笑顔を浮かべると、シンクが引き攣り笑いをする。

 

「俺、お前敵に回したくねぇわ…何その顔…怖…っ!」

「何言ってんだよ。お前は僕の弟だろ。なんで弟を害さなきゃいけないんだ。馬鹿な事言ってんじゃねぇよ」

 

軽く胸辺りを小突いてやりながら、呆れた顔を向けた。

そして僕は後ろを振り向き、ユタカに抱きしめられているユエへ微笑む。

 

「ユエ、おいで」

 

彼女はユタカから離れて駆け寄ってくると、僕の腕の中に収まってくる。

 

「アオ、アオ…っ!!」

「うん。ホテルへ帰ろうか、ユエ。シンク、悪い。あと任せて良いか?」

 

彼女の頭を撫でつつ、僕は弟へ尋ねた。

任せとけとシンクは拳を挙げてきたので、僕もそれへ自分の手を挙げて合わせる。

 

〈シャナ、悪い。先にホテルに帰る。魔力くれない?〉

〈え? 何があった…からそう言うんだよね。わかった。事情は帰ってから教えてね〉

 

シャナに念話を繋いで、魔力を貰えないか尋ねた。

姉は理由をその場で問い質す事もせず、僕へリンクを繋ぎ魔力を渡してくれる。

 

本当、こういう優しい所あるから、姉としてシャナが好きなんだよ僕。

 

シャナから貰った魔力で、僕はユエを連れてホテルへ転移する。

取っていたスイートルームの鍵をもらい、最上階までエレベーターで登った。

部屋に入った途端、ユエが泣き出してしまったが。

 

「泣かないで、ユエ。ここなら安全だから。僕も傍にいるよ。大丈夫、絶対に君を守るから」

「っ、ごめん、アオ…っ…あんなので、動揺するって…っ…わっ、私…っ!」

 

いや、動揺するなと言うのは、土台無理な話だろう。

僕でも逆の立場なら衝撃を覚えるものだし、女性であるユエには、恐怖以外の何物でもない。

しかも相手はあのザックだ。

嫌悪感のある相手からというのも、なかなか応えるものだろう。

 

僕は彼女を横抱きで抱え上げ、ベッドルームに連れて行く。

そのまま、ユエをベッドに降ろした。

 

「アオ…」

「離れないよ、ユエ。君を一人にはしない。シンク達が帰ってくるまで、このままでいるから」

 

彼女の傍に座り、頭を片手で抱きしめる。

ユエは僕に身を寄せ、泣き疲れて眠るまで僕の服を握りしめていた。

 

「ただいまー。グンジョー? ユエちゃーん?」

 

部屋の扉が開く音がして、次いでシャナが僕らを呼ぶ声が聞こえる。

僕は携帯を操作し、シャナにメッセを飛ばした。

時計を見れば午後6時。

まぁまぁ良い時間である。

 

「…ユエちゃん、寝ちゃったんだ。大丈夫そ?」

「精神的ショックが大きかったみたい。ごめん、シャナ。ユタカ呼んで。一人にさせると怖がるだろうから」

 

オッケー、と返事したシャナは、すぐにユタカを呼びに行った。

一分もしない内にユタカが部屋に来て、僕と位置を交換する。

 

「ごめんね、グンちゃん。ユエ、生まれてこの方こういうものに触れてこなかったから、少し純粋なんだよね。ママの蔵書でそういう知識はあったけど。実物見るの初めてだったんだろうね」

 

ベッドの縁に腰掛け、ユタカはユエの頭を撫でながら苦笑していた。

流石、精神年齢高い組。

話はシンクから聞いていたのだろうが、ユエみたく動揺はしてないようだった。

 

彼女をユタカに任せ、僕は他のメンバーがいるであろうリビングへ行く。

とりあえず、あの時にあった事をメンバーに話すと、シャナがニヤリと笑った。

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