唇を離し、囁くようにユエへ愛の言葉を紡ぐ。
「今までの僕の態度が悪かった。確かに鬱陶しいと思っていたよ、君達姉妹を。でも、今は君を愛してしまっているし、信じてもらえない事も充分承知している。だから、態度と言葉で何回でも愛を伝えるよ。ユエ、好きだ」
何回も唇を重ねる。
お互い息があがってきた所で、ユエからストップが入った。
少し名残惜しげに、僕は彼女の口の端にキスを落とす。
「わ、わかった…わかったから…も、やだ…」
「帰ったら、母様達にユエと婚約したい事を伝えるけど、良いよね?」
顔を赤く染めて、ユエは頷いた。
離れ難くて、僕は彼女を抱きしめる。
「アオちゃ…もう、外暗い…」
「そのちゃん付けも、二人きりの時はやめてくれる? ねぇ、ユエ。僕達、もう恋人同士だよね?」
確かに外が暗くなって、この洞窟内の光量も減ってしまったが、彼女の顔はまだ認識できる。
体を離し、拗ねたようにユエへ尋ねた。
少し頬を染めて、彼女は目を背けた。
「ア、アオ、が、気まぐれを起こさなければ、そう…」
「ユエ。気まぐれじゃなくて本気だから。うーん…過去に戻れるなら、ユエにだけは優しくしとけって言えるのに…」
ため息をついて、彼女の胸に顔を埋める。
驚いたユエは固まってしまっていたが、気にしない。
ユエの心も体も、僕のものだから僕の好きにしていい…はず。
嫌がられたらやめるけど。
「帰りたくないなぁ…。ユエとずっとこうしていたい…」
「ふふ…っ。変わらないなぁ、アオは…」
懐かしいものを見る目で、ユエはクスクス笑いながら僕の頭を撫でてくれる。
こんなに甘えた態度、シャナ以外にしたことないんだけど。
途端、僕の携帯が鳴り響いた。
無視していたかったけれど、もうこの時間も終わりかとかけてきた人の名前を見る。
「げ、カヅキおばさん…」
長時間娘を拘束するんじゃない、とお叱りの電話だろう。
僕はユエを見る。
「ごめん、怒られてくる…」
「なら私が出るから、貸して」
ユエが手を差し出してきたので、僕は素直に渡した。
通話のボタンを押したユエは、携帯を耳に当てる。
「はい、もしもーし…うっるさ! ユタカ、ママの携帯奪ってかけてきたの? 何のよ………うん、アオちゃんと一緒にいるけど。え? …知らない…だからっ! うるっさいって! 言ってんの! 言葉通じてる?!」
電話口で姉妹喧嘩を始めてしまったみたいで、おばさんじゃない事に少し安堵した。
「ユエ、ユタカなんだって?」
ユエの肩に手を置いて、小声で尋ねる。
彼女は電話を保留にしたようで、盛大にため息をついた。
「アオと一緒にいるのか、抜け駆けなんてずるい、私だってアオの事が好きなのにって、延々。大声で。耳バカになりそう」
「ユタカには悪い事したなぁ…」
そう言うと、暗い中だというのにユエの眼光が鋭くなった気がする。
「アオは優しいから、他の女の子にも優しいもんね。別に良いけど」
「…嫉妬してくれてる? ごめん、ユエには悪いけど嬉しい」
彼女を後ろから抱きしめ、首筋にキスを落とした。
ビクリと、ユエの肩が跳ねる。
「やっ…アオ…っ!」
「別にこれ以上はしないよ。自分で稼げていないのに、君と子供ができる行為をするわけないだろ。そこまで不誠実じゃない。君の負担にしかならない事だし」
抱きしめる力を強めた。
ユエは少しホッとしたようで、通話を再開する。
「……ママ……うん、わかった。ごめんなさい。アオちゃんと一緒にお城に行きます……うん。じゃあ」
今度はカヅキおばさんが出たようで、僕は冷や汗が出てきた。
通話を切ったユエに僕は聞く。
「あの、出頭命令きた…?」
「うん。帰ろっか、アオ」
画面の光越しだが、ユエは苦笑しているようだった。
◆◆◆
城に帰り、呆れた様子のシャナとその後ろに付き従っているツルギにある一室へ案内される。
そして今僕は、父様、母様、カヅキおばさん、ユーリおじさんの四人に、見下ろされながら正座させらていた。
「グンジョウ君、流石に遅くまでうちの娘と一緒にいるのは、どうかと思うよ?」
「はい、すみません…」
幸せな時間から一転、双方の両親からの説教が待っているとは。
それに、ユエとあそこにいたのは少しの時間だと思っていたのだけど、10時間もいたらしい。
流石にユーリおじさんも怒るよね、これ。
「でも珍しいわね、グンジョウがここまで連絡してこないなんて。結構根は真面目な子なのに」
「ユエとよろしくしてたんだろ。ちゃんと避妊したか?」
カヅキおばさんの言葉に、僕は顔を上げて叫ぶように言った。
「やってないし、ユエの事は大事にします!! 婚姻するまで、そういう事はしないと誓います! だがら…ユエと婚約させてください、お願いします!!」
僕は四人に頭を下げる。
「俺はいいと思うが。どう思う? シャル?」
「そうね、ユエちゃん妃教育耐えられると思う?」
「耐えられなかったら、そこまでだろう。グンジョウにはツェリを当てがえばいい。師匠からのお墨付きももらっているからな」